「母の秘密」(2019、スペイン)をNetflixで見る。78分というのがコンパクトでいい。母の葬儀で顔を合わせた四姉妹は、母が隠していた驚くべき家族の秘密を知ることになる。四人は、出生にまつわる秘密の真実を探るため旅に乗り出すことになる。
・・・
映画は、母親の死の連絡を受ける4姉妹の状況から映し出される。ニューヨーク・マンハッタンの風景が現われ、ビルの一室で英語で会議が開かれている最中に、中心的な人物の女性のスマホに「母が亡くなった」というメッセージが届く。知らせを受けたのは長女のサラ(ブランカ・スアレス)だった。
次女のクラウディア(ベレン・クエスタ)は、プール付きの豪邸に住んでいるが、夫が家を出て離婚の危機にあることを家族には伝えておらず、メイドにも夫は旅行中として単独で実家に向かう。葬儀でも、夫は旅行中と言い訳をする。
三女のソフィア(アマイア・サラマンカ)は、同性のパートナーと暮らしていたが、連絡を受けて実家に向かう。ほかの姉妹はソフィアが同性愛者であることを知っているが、本人は認めようとしない。
性的に奔放な四女ルシア(マカレナ・ガルシア)は、名前も知らない、チャラ男2人とベッドにいるときに、母が亡くなった知らせを受ける。
スペインの実家では、残された父・ペドロは、奇妙な行動が目立ち、認知症気味だった。姉妹には、母が遺言としてビデオメッセージを残しているというので、それを観るため弁護士の元へ赴く。
ビデオでは、凛とした母が、隠していたことがあると告白する。「あなたたちの本当の父親はペドロではない」というのだ。そればかりか、姉妹全員の父親が異なるというから、姉妹たちは仰天する。そして、本当の父親を自分たちで探し出すことができたら遺産を分配するというものだった。
4姉妹は、衝撃の告白に冗談でしょと思いながらも、複雑な気持ちで、そこから本当の父親捜しを始めることになるのだが・・・。
ラフな格好で葬儀に出席する4姉妹
・・・
母親の指示で、可能性のある人物を次々に4人で訪問する。最初は絵を描く芸術家の男。次に修道院の神父。さらに、大企業のビルのスーツを着た男。4人のうち3人は父親が確定。最後の一人は、意外な人物だった(途中で想像はつくが・・・)。
ビデオ・メッセージには「第2弾」ともいうべき続きがあった。「このビデオを見ているということは、父親が見つかったってことよね。少なくとも3人は」と続く。
4人の娘たち一人一人に愛情深い言葉が続く。3女に対しては、世の中が甘くはないこと。4女に対しては、「あなたはもっともかわいい子」であることなどが語られて行く。4女の父は、葬儀に、亡くなった母の知り合い、関係者として出席していた。
・・・
父親探しという点では「マンマ・ミーア!」と似ていなくはない。DNA、母との交際時期などを手がかりに明らかになるが、性格も異なり疎遠がちだった姉妹の絆が深まったり、母親の愛情の深さなどが描かれる。
ビデオ映像を見る限り、母親は品があり、様々な職種の男と関係を持った「尻軽女」(劇中、一部で使われた言葉)にはみえないが(笑)。しかも、相手が食えない画家であったり、大会社の清掃員だったり・・・。次女クラウディアの父親が清掃員とわかったときに、クラウディアが言いだせなかったのを、サラが「私が娘のクラウディアです」とその場で告げたのだ。
しかし、当のクラウディアは、あとから清掃員の父親を訪ねて謝罪し「父が清掃員でよかった」とハグするシーンは感動的。清掃員の父も、娘が来るというので、初めて4人と会うときには、スーツを着て、会社が自分のものと威厳を示すように偽っていたのだから。
かつてのサラの恋人アレハンドロは、サラに「あきらめて、すべてを忘れて遠くに引っ越しをする」と告げたが、アレハンドロの引っ越しの当日に、サラはいてもたってもいられずに、アレハンドロのもとに走って駆けつける。
結末はハッピーエンドということに。
主な登場人物:
アレハンドロという恋人がいたが、別れてニューヨークに行き、ファッション企業で働くエグゼクティブとなる。母が亡くなった連絡を受けて、スペインに帰国する。葬儀で、アレハンドロと再会する。
4姉妹の中で唯一既婚者だが、夫が家を出て離婚危機にあることを姉妹には秘密にして母の葬儀に出席。
■三女:ソフィア(アマイア・サラマンカ)
唯一の同性愛者。パートナーが葬儀に付き添いたいというが、親族には秘密にしておきたいので、ひとりで参列。
■四女:ルシア(マカレナ・ガルシア)
自由奔放な性格。
■アレハンドロ(マキシ・イグレシアス)
5年前までサラの恋人だった。サラの母親の死をどこからか知って、葬儀に参加。サラに未練があるようだが、サラはいまさらなぜと思った。
■その他:
フアン・ディエゴ
ホアキン・クリメント
カルロス・バルデム
エミリオ・グティエレス・カバ
ティト・バルベルデ
テレサ・ラバル
ロッシ・デ・パルマ
マリア・パレデス
(追加)遺品の競売のシーンか。「Tバック」があったが、娘たちは「あれも母のもの?」「70歳で履く人はいないのでは」「ソフィア・ローレンとママ」といった会話(笑)。