「8月の家族たち」(原題:August: Osage County、2013)を見た。
この映画を見ていると、家族仲良く、というのは難しいものなのか、考えさせられる(笑)。日本では、昔から、兄弟は他人の始まり、ということわざもあるが。親戚づきあいというのも徐々に薄れていくのが現実ではある。
トレイシー・レッツによるピューリッツァー賞&トニー賞W受賞の傑作舞台を、メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ユアン・マクレガーをはじめ実力派豪華キャストの競演で映画化した群像コメディ・ドラマ。単なるコメディというよりもブラック・コメディといえそうだ。
父親の突然の失踪をきっかけに、オクラホマの実家で久々に顔を揃えた母親と三姉妹が、互いに衝突しながら繰り広げる激しいバトルともいえる愛憎劇が描かれる。監督はデビュー作「カンパニー・メン」で高い評価を受けた俊英ジョン・ウェルズ。
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8月のある暑い日のオクラホマ州オサージ郡の片田舎。
父親が失踪したとの知らせに、滅多に顔を合わせない三姉妹がオクラホマの実家に集まってくる。
長女のバーバラ(ジュリア・ロバーツ)は反抗期の娘(アビゲイル・ブレスリン)に手を焼き、夫との関係にも問題を抱えていた。実は別居中。
自由奔放な三女カレン(ジュリエット・ルイス)は怪しげな婚約者を同伴してやってくる。ひとり地元に残る次女アイビー(ジュリアンヌ・ニコルソン)は、何事も不器用で、地元に残り両親の面倒を見ているが、いまだに独身のまま。
そんな娘たちを迎えた母バイオレット(メリル・ストリープ)はガンで闘病中ながら、相変わらずの歯に衣着せぬ毒舌ぶりで、いつしか家族の間に不穏な空気が漂い始める。
それぞれの家庭、夢、恋、そして自分自身、守るべきものがバラバラな家族たちが、激しく本音をぶつけあう中、数々の“隠しごと”が暴かれていくのだった。
映画の冒頭から、 悪態をつきまくるバイオレット(メリル・ストリープ)の罵倒のすごさは、狂ったような迫力。初めから、娘たちやその伴侶に対して、敵対心を持ったような話しぶりだ。全員がそろって、食卓に着いてからがすさまじいハイライトシーンとなる。
ドロドロの人間関係の中にもキラリと光る家族愛が垣間見えるところで、やや救われるが、家族、兄弟といっても、疎遠になっている場合に、なかなか互いを理解することができない現実は、この映画ほど激しくはないにしても、一般的にありそうだ。
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メリル・ストリープは、実年齢よりも老けたメイクで、病的な雰囲気がにじみ出ていた。髪は白髪で薄くなっているが、葬式などでは、ウイッグ(カツラ)で出席、風格を示す。薬漬けの生活で、長女のバーバラ(ジュリア・ロバーツ)から、家の薬をすべてはく奪されてしまう。メリルとジュリアの激論を交わすシーンは、どちらも譲らずの見せ場だった。ジュリア・ロバーツも、気性の激しい役で、美貌はかなぐり捨てて、疲れ切った長女を演じていた。
メリル・ストリープは、どんな役柄でも、やや演劇調でオーバーなセリフと演技だが、その存在感は圧倒的だ。あるときは、一国の首相”鉄の女”だったり、ファッション誌の”鬼の編集長”だったり、修道院の”院長”だったり、七変化で、それぞれの役柄をものにしているのが驚きだ。
バーバラの夫ビルを演じているのがユアン・マクレガーとは気づかなかった。
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元が舞台ということで、場面は家の中が中心。
言葉の応酬、バトルがメインで、舞台を見ているような印象だ。
映画の中で、女優の名前などが出てきて面白い。
たとえば、バイオレットが化粧をしていない娘に向かって「化粧しなくてもきれいなのはエリザベス・テイラーくらいよ」と言ったり、バイオレットの義妹は「ソフィア・ローレンは、歳がいっても美しい」など。
バーバラの娘が、急いで家に帰ってきてテレビを見ていたのが「オペラ座の怪人」だったが、母バーバラが、それを見て「急用というのは、そんなクソオペラ座の怪人だったのか」と怒ると、「1925年版のリストア版(修復版)よ」とやり返すのだ。
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