映画「事件記者」(日活、1959)を見る。視聴率40%を超えたこともあるNHKの同名の連続テレビドラマを映画化した第一弾。島田一男原作、西島大・山口純一郎・若林一郎が共同脚色により「拳銃0号」のコンビ山崎徳次郎が監督。シリーズ作品(日活版)として10作品が製作された。
警視庁内にある「桜田記者クラブ」に属する在京6社の新聞社の記者たちのスクープ合戦を軸に、新米記者が失敗しながらも成長する姿もユーモラスに描く。54分(モノクロ)とコンパクトで見やすい。続編ありきのエンディング。
<あらすじ>
舞台は警視庁詰めの新聞記者が所属する「警視庁桜田クラブ」。警視庁内の一角にある。特ダネを追う事件記者たちの根城だ。
各新聞社は簡単な仕切りで区切られていてソファと机があるといった簡素なものだった。そこに、在京6社の新聞社から腕利きの記者が各々派遣されている。
中でもベテランの相沢(永井智雄)、八田老人(大森義夫)、べーさんこと長谷部(原保美)、イナちゃんこと伊那(滝田裕介)、ヤマさんこと山崎(園井啓介)、ダンナこと浅野(綾川香)とチームワークの良さを誇っているのは東京日報だ。
東日の菅と中央日々の岩見の二人の新米記者がクラブに派遣されて来た日のことであった。品川駅で新宿のやくざ船十組の親分・船木(深見泰三)が何者かに狙撃された。
その時船木のカバンをチンピラの安(高田保)が奪って逃げたが、誰もこれに気づかなかった。
記者たちがさっそく動いた。重傷の船木は病院にかけつけた村田刑事部長(宮坂将嘉)にも真相を語らなかった。事件はやくざの縄張り争いのもつれとみられた。
日報の伊那は非番で婚約者のやす子(丘野美子)と喫茶店で会っていたが、出がけに見た男こそ船木のカバンをかかえた安だった。
船木は腹心の立花(深江章喜)と謀ってその夜、病院をぬけ出した。新宿の船十組と仇役の六方組の近辺にはベテラン記者たちが張り込み、警戒網もはられた。
その夜は無事過ぎた。翌日、鮫洲のアパートでチンピラの安が射ち殺された。前日、品川で船木を狙ったのは流れ者のやくざの藤本(宍戸錠)と殺し屋の小倉(野呂圭介)の二人組だった。
安の写真をみた伊那は驚いた。安がカバンを喫茶店の女の子に預けていたのを思い出すと、伊那は喫茶店に飛んだ。
カバンの中身は多量の麻薬だった。しかも持主は船木だった。船木を狙撃したのはこのカバンが目的だった。
果たして船木と安に射ち込まれた弾丸は同じものだった。これは日報の特ダネだった。その夜、船十組と六方組の対立は爆発寸前だった。
船木のなぐり込みを予期した六方組は殺気立った。その頃カバンをさがしあてた藤本と小倉が喫茶店に現れたが、待ち伏せた警察に捕えられた。
船十組も六方組も蜂起寸前に一網打尽に検挙された。船木を狙撃したのは六方組ではなかった。「やくざの縄張り争いの蔭に麻薬の秘密!」翌朝の東京日報は見事に他社を出しぬいたのだった。
電話が鳴り、記者たちが一斉に次のスクープを狙っていつものように動き出した。
【主な登場人物】
■相沢:永井智雄…東京日報社会部のキャップでベテランの記者。
■八田:大森義夫…東京日報社会部の中で、ハッタさん、八田老人と呼ばれる。
■長谷部:原保美…東京日報社会部の記者。愛称はべーさん。
■伊那:滝田裕介…東京日報社会部の記者。愛称はイナちゃん。やす子と婚約中。
■山崎:園井啓介…東京日報社会部の記者。愛称はヤマさん。
■浅野:綾川香…東京日報社会部の記者。浅野のダンナと呼ばれる。
■菅:沢本忠雄…東京日報社会部の新人記者。愛称はスガちゃん。
■西郷:清水将夫…東京日報社会部のデスク。
■浦瀬:高城淳一…中央日報のキャップ。ウラさん。
■桑原:相原巨典…中央日報の記者。
■岩見:山田吾一…中央日報の新人記者。愛称はガンさん。
■熊田:外野村晋…中央日報の記者。
■荒木:内田良平…新日本タイムスの記者。
■光子:森島富美子…桜田記者クラブの給仕。
■松本:久松晃
■捜査一課長:二本柳寛
■村田:宮坂将嘉…捜査一課部長刑事。愛称はムラチョウ。
■梅原:深水吉衛…捜査一課部長刑事。
■警視庁の受付:谷川玲子
■お近:相馬千恵子…小料理屋「ひさご」の女将。やす子の母。娘・やす子の結婚相手が記者というのが気に入らない。
■やす子:丘野美子…ファッションモデル。東京日報の記者・伊那と婚約中。お近の娘。
■藤本:宍戸錠…流れ者のヤクザ。船木の麻薬を狙うチンピラ。
■小倉:野呂圭介…藤本の仲間の殺し屋。
■安:高田保…品川駅にいる置引。
■船木十太郎:深見泰三…新宿のやくざ「船十組」組長。何者かに狙撃される。
■お貞:広岡三栄子…船木の妻。
■立見:深江章喜…船木の腹心。船十組の兄貴分。
■船十を匿う男:衣笠一夫
■花巻:伊丹慶治…六方組の組長。
■品川区立病院の院長:高野誠二郎
■ハルミ:水谷郷子…新橋の純喫茶「コルボウ」店員。
■麻雀屋「コロナ」の内儀=:鈴村益代
1950年代末の品川駅周辺などの風景や風俗が見られる。現在の品川駅は、山手線の中では1・2位を争うような巨大なターミナル駅に変貌を遂げ時代の変化を感じさせる。
映画はYouTubeで配信中。
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