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映画「でっちあげ~殺人教師と呼ばれた男」(三池崇史監督、2025)を見る。

映画「でっちあげ~殺人教師と呼ばれた男」(三池崇史監督、2025)を見る(MOVIXさいたま)。一瞬も目が離せない内容の濃い社会派ドラマだった。法廷シーン、メディアの暴走、教育現場の構図、個人への心理的圧迫などが胸を抉る。
でっちあげ」のタイトルが「あっ」といわせるような場面で効果的に登場するが、それまでの数分の冒頭シーンから引き込まれた。

土砂降りの雨の中、夜遅く教師が家庭訪問でマンションを訪れる。美しい母親が礼儀正しく迎え入れ、教師にコーヒーを出す。2人はその家の息子である男子児童について話す。教師によると、児童はクラスで問題を起こしているらしい。

母親との会話で、教師は児童が外国にルーツがあったと知り、問題行動が「純粋な日本人」でなかったゆえだと納得する。ここから教師は差別的な発言を続け、攻撃的に、いやそれどころか凶暴になっていく。母親は不安になり、緊張が高まる。

この母親・氷室律子(柴咲コウ)が、裁判で原告の証言台に立ち「氷室律子の証言」と出るところから、この映画が、それぞれの立場で、事件の見方が変わるのだなと知ることになる。

冒頭で小学校教師・薮下(綾野剛)が、受け持つクラスの児童、氷室拓翔(たくと/三浦綺羅)に対し暴言を浴びせ、手を上げたと両親から告発されるシーンを見せられ、両親は息子がケガを負い、PTSDを発症したと主張するのだった。

ここまで見るとこの教師はトンでもない暴力教師ということになる。それが観客のわれわれに刷り込まれる。

そして、「小学校教師・薮下誠一の証言」が続く。律子の見方をA面とすれば、薮下はB面で、話が全く異なるのだ。「羅生門」スタイルの証言の食い違いで、真実は一体…という展開となっていく。 

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モンスターペアレントの存在、学校の校長などはPTAや教育委員会などの顔色をうかがう対応に終始、事なかれ主義、週刊誌・新聞報道、マスコミ、SNSをうのみにする一般大衆などさまざまなひずみが描かれる。

拓翔の母・律子(柴咲コウ)は週刊誌記者の鳴海(亀梨和也)に接触する。記者は「これは特ダネになる」と見るや薮下を執拗に追い詰めていく。

こうして事件が報じられると「何が起きたのか」「誰が悪いのか」について世間は一方的に決めつけてしまう習性があるようだ。目撃情報もなく、一方的な主張と状況証拠(耳のけがはあるものの原因は別)などから判断してしまう。

学校は学校で校長は保身のため、保護者説明会でとりあえず認めて謝罪して乗り切ろうと画策する。

一方、律子は、薮下と面談したときに、祖父がアメリカ人であるという。そして自身は小学生をアメリカ・マサチューセッツ州ボストンで過ごしたというのだ。

これらについて、裁判の時に薮下が律子に問いただすと、言っていないという返事。

拓翔と同じクラスの子供の母親・山添は、薮下からの電話で、律子の同級生の言葉として、律子は○○だった、と告げる(この○○は観客には聞こえずだったが、これが裁判で大きく作用したようだ)。(○○は想像するに被害妄想癖か虚言癖か)。

律子を演じる柴咲コウが無表情で、鉄仮面のような毒母を演じている。やや気弱な教師・薮下とモンスターペアレント・律子との戦いともいえる。 

薮下を弁護する弁護士がようやく見つかったが、この湯上谷弁護士を演じる小林薫がすばらしい。やや負け戦のような弁護を引き受けるが、この原告側の主張には、具体性やリアリティがないというのが引き受けた理由。

湯上谷弁護士は薮下に何度も念を押す。「裁判は戦争だ」と。

裁判の結果は…?

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<ストーリー>
2003年、小学校教諭・薮下誠一(綾野剛)は、保護者・氷室律子(柴咲コウ)に児童・氷室拓翔への体罰で告発された。体罰とはものの言いようで、その内容は聞くに耐えない虐めだった。

これを嗅ぎつけた週刊春報の記者・鳴海三千彦(亀梨和也)が"実名報道"に踏み切る。過激な言葉で飾られた記事は、瞬く間に世の中を震撼させ、薮下はマスコミの標的となった。

誹謗中傷、裏切り、半年間の停職、壊れていく日常。次から次へと底なしの絶望が薮下をすり潰していく。

一方、律子を擁護する声は多く、驚くべきことに「550人もの大弁護団」が結成され、前代未聞の民事訴訟へと発展する。

誰もが律子側の勝利を切望し、確信していたのだが、法廷で薮下の口から語られたのは「すべて事実無根の"でっちあげ"」だという完全否認だった。

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<一部ネタバレ注意>

映画の冒頭にこの映画は事実に基づくとある。事件発覚は2003年で、薮下誠一が「死に方教えてやろうか」と教え子を脅したとされ、氷室律子が告発。「体罰」を超える虐待として認定される。

鳴海記者が実名報道を強行。「殺人教師」と称され、社会的リンチ停職へと追い込まれる。民事裁判では、550人規模の弁護団が結成され、社会的注目は律子有利に傾くが初公判で、薮下は驚きの全面否認を行う。

裁判で原告の主張は棄却される。薮下は、弁護人・湯上谷に「喜んでいいんでしょうか」というと「ひとまずは」と弁護人。

というのも、教育委員会による半年間の休職処分について、その取り消しなどが解決するには10年の歳月がかかったのだ。

今年の邦画は「国宝」で決まりと思ったが「でっちあげ」も、エンタメ要素は一切排し、三池崇史監督にしてはバイオレンスもなく、マスコミによりつくられたイメージの怖さなどを抉り出していて超絶面白かった。

本当は「ミッション・インポッシブル」を見ようと思ったら、時間帯が大幅に夕方にずれていたので、「午前中派」にとっては、消去法であまり期待せずに見たら、これが見ごたえがあった!!!

主演の綾野剛は、今年の賞レースでは「国宝」の吉沢亮と主演男優賞を争うことになりそうな名演技を見せている。光石研、安藤玉枝など名バイプレーヤーも豪華。

原作:福田ますみ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫刊)

<主な登場人物>
■薮下誠一:綾野剛…小学校教諭。教え子の氷室拓翔に執拗かつ凄惨な虐めを行ったとして、拓翔の母親の律子に告発される。児童への体罰疑惑を“殺人教師”とマスコミに罵られ、告発を全面否認し“でっちあげ”だと主張する。

■氷室律子:柴咲コウ…拓翔(たくと)の母親。拓翔が薮下に虐められていることに気づき、メディアと世論を味方につけて薮下を訴える。550人もの弁護団を組織。

■鳴海三千彦(なるみ みちひこ): 亀梨和也…週刊春報の記者。週刊春報の記者。薮下の事件を実名報道し、世論に大きな影響を与える。

■薮下希美:木村文乃…薮下の妻。夫を献身的に支援。


■大和紀夫(おおわ ゆきお):北村一輝…律子側の弁護士。550人もの大弁護団を率いて裁判に臨む。

■湯上谷(ゆがみや) 年雄:小林薫…薮下の弁護人。


■氷室拓翔(たくと):三浦綺羅…律子と拓馬の息子。薮下が体罰を行ったとされる児童。
■氷室拓馬:迫田孝也…律子の夫で、拓翔の父親。薮下を「暴力教師」と激しく非難する。
■段田重春:光石研…小学校・校長。自らの保身に走る。
■都築敏明:大倉孝二…薮下の勤める小学校の教頭。校長の段田に従順な態度を取る。
■前村義文:小澤征悦…大学病院の精神科教授。拓翔の診断を担当する。
箱崎祥子:美村里江精神科医。前村とともに拓翔の診断を担当する。
■藤野公代:峯村リエ教育委員会の教育長。
■堂前:髙嶋政宏…週刊春報の編集長。鳴海の上司で薮下の実名報道を許諾。
■山添夏美:安藤玉恵…拓翔のクラスメイト・山添純也の母親。
■戸川:東野絢香…薮下の同僚。都築からの指示で授業中の薮下を監視する。
■橋本:飯田基祐…裁判長。

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