映画「カラーパープル」(原題:The Color Purple、2023)を見る。1985年のS.スピルバーグ監督作品を元にブロードウエイミュージカルを映画化。20世紀初頭のジョージア州を舞台に過酷な毎日を生きるアフリカ系女性の物語。テーマは「黒人女性の連帯」「自尊の回復」「家族の再生」「赦しと愛」。肉体的・心理的虐待という重い現実に真正面から向き合い、歌と友情によって希望と自由を勝ち取る物語となっている。ラストシーンは圧巻。
1985年の映画版を監督したスティーヴン・スピルバーグや前作に出演したオプラ・ウィンフリー、前作で音楽を担当したクインシー・ジョーンズが製作している。
<あらすじ>
1909年、ジョージア州。少女セリーと妹ネティは、父親による性的虐待と貧困のなかで育つ。セリーは2人の子を産むが、その子どもたちは父親に強制的に奪われる。
父親はセリーを“ミスター”ことアルバート・ジョンソン(コールマン・ドミンゴ)に売り、彼女は婚姻と共に過酷な日常と虐待に耐えることになる。
一方、妹ネティは逃亡し、アフリカで宣教師活動を行い、手紙を通じてセリーと心を通わせ続ける。
セリー(ファンテイジア・バリーノ)は、ミスターの息子ハーポ(コーリー・ホーキンズ)の妻ソフィア(ダニエル・ブルックス)や自由奔放な歌手シュグ・エイブリー(タラジ・P・ヘンソン)と出会うことで、自分自身を取り戻し、内面の強さを見出す。
音楽と友情を通じて、セリーは自立への一歩を踏み出し、ついには自身の洋裁店を開くまでに成長する。
ある時、セリーは妹ネティ(ハリー・ベイリー)や失踪していた子どもたちとの再会を果たす。
ミスターは改心するなど変化をし、土地を売って彼女たちを呼び寄せる。セリーは過去を乗り越え、ミスターとも赦しと友情の関係を築く。
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本作はブロードウェイ版から楽曲を取り入れ、感情の叫びや解放を音楽を通じて表現。代表的なナンバーに「Hell No」や「I’m Here」、“Keep It Movin’”などがあり、作品に力強いエモーションを与えている。
ネティはセリーあてに手紙を何年も送り続けていたが、すべての手紙をアルバートが受け取って、セリーには渡さないというのもひどい話。アルバート役のコールマン・ドミンゴの非道ぶり、憎たらしさも印象に残る。
ある時、アルバートが酔い潰れた朝、郵便配達から手紙を受け取ったシュグは、セリー宛のネティの手紙を見つけた。アルバートがネティからの手紙を隠し続けていた事を知り、家探しして大量のネティの手紙を見つけるセリーとシュグ。
ネティは、セリーの生んだ赤ん坊たちを引き取った牧師夫妻と共にアフリカに伝道に赴いていた。セリーの子供たちの世話を焼いていると手紙で伝えるネティ。ネティが生きていることを喜ぶセリーたち。
1945年。アルバートの農園は害虫の被害で大打撃を受け、セリーはシュグの元で穏やかに暮らしていた。そんな時にセリーの父親が死に、実の父ではなかった事が判明した。
セリーの父親は母の最初の結婚相手で、母親名義だったジョージア州の家と店舗を相続するセリー。
ジョージア州の町に戻り、店舗で流行のパンツ(男女兼用の長ズボン)の店を開いて自立するセリー。
一方、農園もうまく行かず、孤独なアルバートは、改心してセリーとの復縁を望んでいた。
そんなアルバートに郵便配達がネティからの手紙を渡した。英国に村を焼かれ、帰国したいとセリーの助けを求めるネティ。アルバートは独断で入国管理局に赴き、農園の一部を売ってネティたちの帰国費用を作った。
改心した様子のアルバートを復活祭のガーデンパーティーに招待するセリー。一方のシュグは教会で父親と、ゴスペルを歌い、ようやく仲直りを果たした。
復活祭の当日、アルバートの計らいでパーティー会場に現れるネティ。セリーの生んだ子供のアダムとオリビアと、アダムの妻子まで紹介されて、セリーは幸せに浸った。
ラストで、円形に並んだテーブルで家族一同が歌うシーンは圧巻。すべての苦難を乗り越えて平和が訪れたのだった。
<キャスト>
■セリー・ハリス=ジョンソン:ファンテイジア・バリーノ
■シュグ・エイヴリー:タラジ・P・ヘンソン
■ソフィア:ダニエル・ブルックス
■アルバート・“ミスター”・ジョンソン:コールマン・ドミンゴ
■老年期のミスター:ルイス・ゴセット・ジュニア
■ハーポ:コーリー・ホーキンズ
■メアリー“スクィーク”:H.E.R.
■ネッティ:ハリー・ベイリー
■晩年のネッティ:シアラ
■ママ:アーンジャニュー・エリス
■グレイディ:ジョン・バティステ
■サミュエル・エイヴリー牧師:デヴィッド・アラン・グリア
■アルフォンソ:デオン・コール
■ミス・ミリー:エリザベス・マーヴェル
■助産師:ウーピー・ゴールドバーグ(カメオ出演)
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