映画「海街Diary」(2015)を見た。
監督・脚本は是枝裕和。4姉妹を演じた綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの4人が主演。第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品。キャッチフレーズは「家族を捨てた父が、のこしてくれた家族。」
第39回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品。
”是枝ワールド”で、地味な作品ながら、4人の姉妹が家族として絆を深めていく様子がじわじわと迫ってくる。事件も出来事も起こるわけでもないが、淡々とした流れの中で、いきいきとした個人ひとりひとりの性格や考え方などが浮き彫りにされる。
カメラが、鎌倉・江ノ島の風景を見事に映し出している。
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鎌倉に暮らす香田幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳(夏帆)の3姉妹のもとに、15年前に家を捨てて出て行った父の訃報が届いた。葬儀に出席するために赴いた山形で、3人は腹違いの妹・すず(広瀬すず)と出会う。
すでに母も亡くなっていて、一人ぼっちになってしまったすず。
それでも葬儀の場では背筋を伸ばし、毅然と立ち振る舞っていた。
父の再々婚相手はずっと泣きっぱなしだというのに、すずは涙ひとつ見せない。
幸はそんな子供らしくないすずの振る舞いを見て、自分と似た何かを感じ取ったかのようだ。
「父の看病をずっとあなたがしてくれたんでしょう?ありがとう。父も喜んでると思う。」とすずに感謝し、励ます幸。看護師である幸は、再々婚相手の度量を推し量って、すずにそう声をかけたのだ。
それを聞いて、堰(せき)が切れたように泣き出すすず。
すずのそんな姿を見て、3姉妹も初めて父親を懐かしみ、涙を流す。
3女の千佳は幼かったため、父親の記憶はほとんどない。
父親と長く暮らしたすずに、「いつか父の事を話してくださいね」と千佳がすずに話す。すずは、「父は魚釣りが好きで連れて行ってもらった」と話すのだった。
同じ姉妹でも性格は様々。
しっかりものの長女・幸(綾瀬はるか)は、両親が出て行ったあと、妹たちを親代わりにみてきたのだ。病院内に付き合っていた男がいたが、アメリカに行くというので別れ、「ターミナル・ケア」(終末期の医療・看護)に力を注いでいくという。
次女の佳乃(長澤まさみ)は、信用金庫で窓口業務から営業に回って仕事をしているが、どちらかといえば自由奔放。男運がないのか、現在付き合っている男も、借金取りに追われている様子で、別れてしまう。
こうした4人をカメラは、まるで「東京物語」のようにじっくりと腰を落ち着けて捉えている。両親を失い、孤独になると思っていたすずだったが、まわりからは「あなたのお父さん、お母さんがうらやましい」という。「なんでですか」とすずがいうと、「あなたのような宝物を残せたんだから」だった。「宝物じゃないですよ」というすずだが、なんだか元気が沸いてくるように感じたようだ。
4人揃って、江ノ島の砂浜を歩くところで映画は終わるが、それぞれに希望や明日が開かれていることを感じていたようだ。
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是枝ファミリーとも言えるような常連の出演者が多い。
綾瀬はるかは、一時天然ぶりなども言われたが、この映画に関しては、堂々としていて、往年の大女優が30歳前後に演じていた佇まいと匹敵するような落ち着きがあった。長澤まさみは、足も長くスラっとしてスタイルが良く、ややもするとそこばかりが強調されるきらいがあるが、役柄としては、姉の幸の堅実さとは違って、活発な印象があり、綾瀬はるかとはそれほど年齢差はないと思うが、姉妹役としてはよかった。
主な出演者:
香田幸(三姉妹の長女) - 綾瀬はるか
香田佳乃(三姉妹の次女) - 長澤まさみ
香田千佳(三姉妹の三女) - 夏帆
浅野すず(三姉妹の異母妹) - 広瀬すず
佐々木都(三姉妹の母) - 大竹しのぶ
椎名和也(医師、幸の恋人) - 堤真一
二ノ宮さち子(海猫食堂の店主) - 風吹ジュン
福田仙一(山猫亭の店主) - リリー・フランキー
菊池史代(大船のおばちゃん) - 樹木希林
坂下美海(佳乃の上司) - 加瀬亮
井上泰之(湘南オクトパスの監督) - 鈴木亮平
浜田三蔵(千佳の恋人) - 池田貴史
藤井朋章(佳乃の恋人) - 坂口健太郎
高野日出子(看護師長) - キムラ緑子
浅野陽子(すずの義母) - 中村優子
飯田敏男(陽子の叔父) - 清水一彰
看護師 - 野村麻純
緒方将志(湘南オクトパスの選手) - 関ファイト
金子美帆(湘南オクトパスの選手) - 三上紗弥
緒方ミドリ(海猫食堂の店員) - 原扶貴子
得納好美(佳乃の先輩) - きむらゆき
山根志乃(看護師) - 安宅陽子
紺野(零細工場の社長) - 小倉一郎
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