映画「ユリゴコロ」(2017)は、公開当時、ポスターを見てシリアスで暗そうなホラーミステリーのような印象で見逃していた。最近のプライム配信映画で超おすすめとあったので見た。かなりの衝撃作だった。吉高由里子がこれまでのイメージを覆す殺人鬼で娼婦を体当たりで演じていた!
時代の異なる過去と現在の2つのストーリーが同時に描かれていくが、やがて結びつくという定番ではあるが、驚きの展開が待っていた…という極上ともいえるサスペンス映画だった。松坂桃李と松山ケンイチが直接絡むシーンはないが自然体で味わい深かった。
原作は沼田まほかるの「ユリゴコロ」で第14回大藪春彦賞を受賞。ほかには映画化された「彼女がその名を知らない鳥たち」などがある。
監督は「ニライカナイからの手紙」「おと・な・り」「君に届け」などの熊澤尚人。
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(こんな話)
亮介(松坂桃李)は婚約者の千絵(清野菜名)とともに高原のレストランを経営しているが、ある日、千絵が謎の失踪を遂げ、さらに父洋介(貴山侑哉)が末期ガンであることが発覚する。
そんな折、亮介は父の押入れから「ユリゴコロ」と書かれた1冊のノートを見つける。そこには創作なのか現実なのか、殺人者・美紗子(吉高由里子)の半生が綴られていた。
【ノート「ユリゴコロ」の内容】
美紗子には幼少期から心の拠り所というべき「ユリゴコロ」が欠けていて、他人との関わりを避け一人遊びをする少女だった。ある日友達を池に突き落として溺死させたとき、初めて喜びに近い感情を抱いた。
中学生のときには、帽子を側溝に落として拾おうとしている少年と、その側溝蓋を持ち上げている若者がいて、美紗子は手伝うふりをして蓋を押し下げ、少年を殺してしまう。
その後も、精神を病んだ女友達のリストカットを手伝って殺したり、ナンパの若者を階段から突き落としたりと、人を殺すことが心の拠り所になってしまう。
専門学校を卒業した美紗子(吉高由里子)は就職するがうまくいかず、生活のため売春を始め、そこで洋介(松山ケンイチ)に出会い親しくなる。
しかし洋介から「過去に子どもを殺した罪を負っている」と告白され、彼は性的不能だった。かつて側溝の蓋を落として少年を死に至らしめた青年こそ洋介だった。
そんな折、美紗子が誰の子とも分からない妊娠をし、二人はその子を育てる決心をして結婚する。
しばらくは三人の幸せな生活が続いた。しかし警察から疑いをかけられ、罪の意識に悩むようになった美紗子は自殺未遂を起こし「ユリゴコロ」で全てを知った洋介は自分の手で死なせることが最善と、ダムに連れて行くが耐えられず、美紗子を解放し別れたのだった。
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<ネタバレあり>
「ユリゴコロ」を読んだ亮介は、父の目を盗んで続きを読むために実家に通いだす。そんな亮介の元に千絵の友人で細谷(木村多江)と名乗る女性が訪ねてきて、捜査の結果、千絵(清野菜名)は暴力団に関わっていたことが判明する。
そして亮介は美紗子の子が自分であると確信した。一刻も早く千絵を見つけたい亮介は、捜査を続ける細谷から都内の暴力団オフィスに監禁されていることを知り、包丁を持ってオフィスに向かうが、着いたとき既に暴力団員は全員殺されていて、無事に千絵を救出する。
現場にオナモミの実が落ちていたことから、全ての疑念が確信に変わる。逃亡のため整形したが、細谷こそ亮介の母の美紗子だった。
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美紗子と洋介の再会というのは運命というべきか宿命というべきか、その後の人生を大きく変えていく。人を殺めることでしか自分の生きる世界とつながっていけないという告白が強烈。
<キャスト>
美紗子:吉高由里子
亮介:松坂桃李
洋介:松山ケンイチ
亮介の父:貴山侑哉
みつ子:佐津川愛美
千絵:清野菜名
美紗子(中学生):清原果耶
細谷:木村多江
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熊澤尚人監督の主な作品。
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