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<span itemprop="headline">映画「チチを撮りに」(日本映画、2012)</span>


チチを撮りに(英題:Capturing Dad、日本映画、2012)を見た。
昨年「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016)で話題になった監督・中野量太の長編デビュー作。2000年から短編は撮っていたが「チチを撮りに」で長編に初挑戦。映画は、国内のみならず外国でも評価を得た。
湯を沸かすほどの熱い愛」を見ていなかったらおそらく見なかった作品。
「湯を沸かす~」と同様、両親が別れた後の子供たちと残された母親のパワーといった点では共通項が多い。中野監督は「湯を沸かす~」は”重い喜劇”とどこかで語っていたようだが「チチを撮りに」は”軽い喜劇”かもしれない。
17歳と20歳の娘を演じる二人が有名女優でないところが瑞々しい。          母親役が渡辺真起子、叔父役が滝藤賢一という演技派が固めているので、75分の短い映画だが、引き締まっている。
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小さい頃他に女を作り出ていった父親に会いに行く姉妹の話。その父が末期癌で長くはないと知らされた母親が姉妹を送り出す。行きすがらに父親が亡くなってしまが、小さい頃別れた父親に会いにいった姉妹の複雑な気持ちを丁寧に描いてい
タイトルの「チチ」がカタカナになっているのは、ダブルミー二ングで、父親と同時に母性の意味を含んでいるため。姉妹が自転車に相乗りしているときに、妹が姉の胸に触ったときと、土手で、母を囲んで両隣に座った娘二人が、母の胸を触ったときにそれぞれ”チチ(乳房)に触らないで”というユーモアのある言葉が出てくる(笑)。
簡単なあらすじ:
昼キャバに勤めるなどのフリーターの姉・葉月柳英里紗と女子高生の妹・呼春(こはる、松原菜野花は、父親が14年前に女を作って出て行ってしまって以来、母の佐和渡辺真起子と3人で暮らしていた。
ある日、佐和から「お父さんがもうすぐ死ぬから会いに行って、ついでにその顔を写真に撮ってきてほしい」と頼まれた姉妹は、困惑しながらも、ほとんど記憶に残っていない父親に会いたい気持ちもあり、電車を乗り継ぎ父親のいる田舎町へやってくる。

2人はそこで、異母兄弟の少年西森千尋小林海人や叔父西森徹二滝藤賢一に出迎えられるが、すでに父は他界しており、さらに思いがけない人生の修羅場に遭遇する。
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                  「私の代わりに行ってね。」
母子家庭で育った葉月と呼春姉妹。父の記憶もほぼ無い二人に母が頼んだのは、もうすぐ死ぬ父の写真を撮って来るという“おつかい”だった。その目的は、写真を見て「ザマーみろって、笑ってやる」ことだったのだが、意外な結末が待っていた。
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映画の導入部から、引き込まれる。脚本のすばらしさが、この映画でも際立っている。余計な説明的な言葉はなく、映像で伏線をいくつか魚を釣るときのようにエサをばらまいておき、それらがあとでつながってくる。
水道の蛇口のアップ。炊飯器の釜に研いだ後の米が入っている。それを見る40歳くらいの女性の後ろ姿。
川沿いでパンを食べる女子高生。魚にパンの切れ端を投げて、それに食いつく魚を見てニンマリ。食べた後は、横になって寝そべる。のどかな雰囲気が漂う。

                 「来週、水曜日は20%引きだから」
昼キャバの看板。若い娘と中年男が店から出てくる。若いキュートな20歳前後の娘が男に、来週はいついつならいるから、来られたらきてとさりげなく催促。男は飴玉を取り出し娘の口に入れる。女が、その飴の種類を当てる。他愛ないやり取り。「バイバイ。じゃあまた」。
そんな高校生とアルバイト・キャバ嬢の携帯に母親からメッセージが入る。「大事な話がある。6時に集合」という内容だった。
ここで、「チチを撮りに」のタイトルが入る。
姉妹は、何ごとかと思って、時間に家で母を待つ。「実は父親が違うとか」「再婚か?」など思いを巡らすが、そんな中、母親が寿司の持ち帰りを買って帰ってきた。果たして、その重要な話とは・・・。
料理をしながら、ついでに言うように「お父さん死ぬんだって」という。「3日前に徹二さんから電話があった。徹二さんというのはお父さんの弟」だった。
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湯を沸かすほどの熱い愛で世界中から高い評価を受けた中野量太監督の劇場長編処女作。SKIP国際Dシネマ映画祭2012にて、監督賞・SKIPシティアワードをW受賞し、全14賞を受賞。第63回ベルリン国際映画祭ではジェネレーション部門で正式招待された。
主な出演:
東村葉月(呼春の姉):柳英里紗
東村呼春(葉月の妹):松原菜野花
東村佐和(呼春・葉月の母):渡辺真起子
西森徹二(呼春・葉月の叔父):滝藤賢一
西森正高(呼春・葉月の父):二階堂智
西森千尋(呼春・葉月の異母兄弟):小林海人
西森都子(徹二の妻):今村有希

監督・脚本:中野量太
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小ネタや、様々なエピソードがおもしろい。
寿司の出前で、マグロばかり食べる妹。姉は「かっぱ巻きを食べるのを見たことがない。かっぱも食べろ」と妹に言うが、お構いなし。姉は、キャバ嬢の仕事からか、タバコも吸う。亡くなった父親は「セブンスター」を吸っていたが、娘もセブンスターで、マグロが大好物だった、というオチもある。
「米」を届けに来るオッサンがいるが、そのオッサンを家に入れまいと玄関で格闘する母親のシーンが圧巻(笑)。過去に一度は関係を持った男らしいが、「もう来ないで」というものの、電話が鳴って、電話に出ようとすると、足をつかんで離さない男。後ろからズ○○を引きずりおろそうとするシーンがすごい。まさに”コメ(=米)ディ”。半ケツは免れたが危なかった。


                               「遺産が目当てで来たんでしょ?」
葬式での修羅場も「ある・ある」で現実味がある。音信不通だったのに、急に娘が現われ叔母は「遺産目当てだろう」と初めから決めつけていたのだ。「そんな遺産はいらない」と啖呵を切る娘(姉)。「遺産放棄」の念書まで書かされる。あとで、母親に「遺産なんかいらない、と啖呵を切ったよ」とメールを送ると、「さすが、わが娘」と安心する母親。

        「気持ちはわかるが、火葬の最後のお別れまでいてくれないか。」
葬式から、娘の姉が持ち帰ったものとは・・・。かつて一度だけ万引きをしたことがあり母から強く怒られたのだが、「人生で二度目の万引きをした」というその「もの」とは・・・。母親が「それ、もらっていい?」と聞くや否や、それをなんと川に投げてしまう。
「ああ、スッキリした」と母親。
母親役の渡辺真紀子は、「愛のむきだし」「ヒミズ」などの個性派女優。
その長女役の柳英里紗は「シン・ゴジラ」にも出演しているが、328人のキャストの一人で気が付かなかったが、出演作品には「天然コケッコー」「グーグーだって猫である」「星守る犬」などがある。

「湯を沸かすほどの熱い愛」の監督、長編第1作から、なかなかやるな!(笑)。

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