「パリ、テキサス」（原題: Paris, Texas,「テキサス州パリス」の意）をようやく見た（アマプラ）。昨年話題になった「PERFECT DAYS」のヴィム・ヴェンダース監督が一躍有名になった作品。
テキサスとパリ？とタイトルが不思議だったが、アメリカ・テキサス州にパリスという場所があった。
映画を見始めて小一時間くらいは、話しが淡々と進み、やや面白みに欠け、しかもあのナスターシャ・キンスキーが全く出てこないので、どうしたのかと思ったが、中盤、ナスキンが登場してからは、がらりと一変し、別の映画のように引き込まれる映画となった。
荒野に突然現れた髭面の男(ハリー・ディーン・スタントン）。4年間疾走していた彼は一人息子を別れた妻(ナスターシャ・キンスキー)に届けようとするというロードムービー。
とはいえ、父子の心温まる映画と思いきや、父親は自分勝手な男で共感できない。現実逃避のように思える。
息子が3歳の時になぜか理由もわからず家を飛び出して子供がかわいそうだ。それでも子供がしっかりしているのには驚くが…。メンヘラ男の生きざまを描いたと思えばいいのかもしれない。夫婦の組み合わせも”美女と野獣”のよう。
・・・
髭ぼうぼうの男がテキサスの砂漠で水を求めてさまよっていたが、ガソリンスタンドの売店で、氷を口にすると気を失ってしまう。
ロサンゼルスで働く弟のウォルト（ディーン・ストックウェル）に1本の電話が入る。4年前に失踪し、死んだと思っていた兄トラヴィス（ハリー・ディーン・スタントン）らしき男が、行き倒れて入院しているという。ウォルトは兄を迎えに、テキサスへと向かった。
ウォルトがトラヴィスに何を聞いても口を開かず、すぐに逃げ出そうとする。しかも、飛行機での移動を拒否。途切れ途切れに記憶を取り戻すトラヴィスは、通信販売で買ったという土地の写真を弟に見せる。
それは「パリ、テキサス」（テキサス州のパリ）という辺鄙な場所。かつて兄弟の両親が初めて愛を交わしトラヴィスが生を受けた地だという。
目を離すと逃げ出そうとするトラヴィスに手を焼きながら、レンタカーで妻とトラヴィスの息子が待つカリフォルニア州ロサンゼルスへと向かう。
ロスで待っていたのは、ウォルトの妻アン（オーロール・クレマン）と、トラヴィスの息子で間もなく8歳になるハンター。
トラヴィスの失踪後に、その妻ジェーン（ナスターシャ・キンスキー）が、ハンターをウォルト邸の前に置き去りにしたのだ。それ以降ハンターは、ウォルトとアンを両親として育った。
トラヴィスを実の父親と知りながらも、なかなか心を開かないハンター。しかしウォルトとアンが5年前、幸せだった頃のトラヴィス一家を訪れた際に撮った8mmフィルムのホームムービーの映写を機に、2人の距離が縮まる。
ある日、ウォルトの妻で義理の妹・アンから、ヒューストンにいるジェーンからハンター宛に月に一度、決まって送金があることを教えられる。金額は500ドルの時もあれば50ドル、5ドルと様々。ジェーンが金を振り込んでいる銀行は、テキサス州のヒューストンにあるという。
トラヴィスはフォードの中古車を買い、ハンターとともにヒューストンへ向かう。ハンターも「ママに会いたい」という思いが募っていた。
同地でジェーンと再会したトラヴィスは、放浪の旅に出た理由をジェーンに告白する。再び心が通じた二人。
しかし、トラヴィスは再び家族3人で暮らすことはもはや叶わないことを語り、ジェーンに息子を託して再び放浪の旅に出る。
・・・
80年代のアメリカで、今でいう風俗店の一種のテレクラ（「覗き部屋」）というのがあったようで、トラヴィスがジェーンと再会するのがテレクラ。
客に成りすましたトラヴィスはマジックミラー越しにジェーンの姿が見えるが、ジェーンの方からは客が見えない。電話越しに問いかける客に、彼女が応えるというシステムだ。
トラヴィスは、ジェーンに相対して会話をする。その中でトラヴィスは、自らの気持ちにも対峙し、やがて思いの丈を語ることになる。そしてジェーンも、客が失踪した自分の夫だと、気付くのだった。このあたりのやり取りは最大の見どころ。
運転中の車のフロントガラスから、果てしなく地平線まで伸びる一本道と地平線に広がる陽の光が見える場面も印象的だ。
息子のハンターが、二人の父親にそれぞれ「おやすみ、パパ」と2回言う（笑）。7歳だがしっかりしている。車で移動中に運転するとトラヴィスと荷台でトランシーバーで交信するシーンなどはいい。
＜主な登場人物＞
■ハリー・ディーン・スタントン：トラヴィス・ヘンダースン…4年間も放浪した挙句、テキサス州の砂漠で気絶し、弟が迎えに来る。ジェーンの夫。
■ディーン・ストックウェル：ウォルト・ヘンダースン…トラヴィスの弟。アンの夫。
■オーロール・クレマン：アン・ヘンダースン…ウォルトの妻。
■ナスターシャ・キンスキー : ジェーン・ヘンダースン…トラヴィスの夫。
■ハンター・カーソン：ハンター・ヘンダースン…トラヴィス、ジェーンの息子。
■サム・ベリー：ガソリンスタンドの男
■ベルンハルト・ヴィッキ：国境近くのドイツ人のウルマー医師
■クラッシー・モビリー：カーレンタル職員
■ジョン・ルーリー：スレイター(のぞき部屋の黒服)
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