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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「紳士協定」(1947、日本公開1987)グレゴリー・ペック主演。</span>



紳士協定」(原題:Gentleman's Agreement、1947)を見た。
1947年度アカデミー賞作品賞、監督賞、助演女優賞セレステ・ホルムを受賞。監督は後に「波止場」「エデンの東」などを残したエリア・カザン

ユダヤ人問題(世界各地に散在するユダヤへの差別や迫害によって引き起された政治的・社会的問題)を正面から取り上げた最初の映画とされている。日本での公開は、製作から40年後の1987年である。日本では、テーマにあまり関心がないからか。見応えがあった。

反ユダヤ主義に対して果敢な挑戦を行なうジャーナリストには、グレゴリー・ペックが扮している。製作はダリル・F・ザナック、原作はローラ・Z・ホブスン、脚本はモス・ハート、撮影はアーサー・ミラー、音楽はアルフレッド・ニューマンが担当。

出演はグレゴリー・ペックのほか、ドロシー・マクガイアジョン・ガーフィールドセレステ・ホルムなど。一人のジャーナリストが、アメリカの反ユダヤ主義を調査するため、自らユダヤ人と偽って取材をする。ユダヤ人の立場になって初めて分かる様々な差別。出版社自体にも存在する偏見と闘いながら、真の正義を追求していく姿を感動的に描いている。




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妻に先立たれ、幼い息子トミー(ディーン・ストックウェル)と老いた母(アン・リヴェール)との暮らしが続く人気ライターのフィリップ、通称フィル(グレゴリー・ペック)は、週刊スミスの編集長ミニフィ(アルバート・デカー)の招きでカリフォルニアからニューヨークに移り、早速反ユダヤ主義の記事を依頼された。

この記事の発案者は、ミニフィの姪キャシー(ドロシー・マグワイア)で、フィルは彼女に心を動かされる。ともかく今回の仕事は厄介だった。幼馴染みでユダヤ人のデヴィッド(ジョン・ガーフィールド)に相談しようかとさえ悩んだ末、フィルは自分自身でユダヤ人になり切ることにする。

社の幹部との昼食会で、ユダヤ人だと名乗ったため、噂はあっと言う間に広まった。真実を知っているのは、母、トミー、ミニフィ、キャシーだけだ。フィルの秘書も実はユダヤ人だが、それが知れると雇ってもらえなかったとフィルに告白する。

フィルがユダヤ人と知ると、人々は急によそよそしくなる。そんなおり、社の同僚のアン(セレステ・ホルム)のパーティに出席し、フィルはキャシーに求婚する。そしてキャシーはフィルを姉ジェーン(ジェーン・ワイアット)に紹介するため、コネチカットの家を訪れたりしていると、デヴィッドが帰国。

彼をユダヤ人だからと罵ったり、フィル達のハネムーン先のホテルがユダヤ人を理由にキャンセルしたりと、現実にこの問題は大変根深かった。

このことがこじれ、フィルとキャシーの間にも溝ができた。そしてようやくフィルの記事「私は8週間ユダヤ人だった」が発表された。内容の素晴らしさが評価されると共に、実はユダヤ人でなかったとフィルに対する見方も変わる。

差別や偏見に目をそむけていたキャシーは、デヴィッドに悩みを打ち明け、彼の助言でフィルとやり直しを決意。デヴィッドもコネチカットの山荘をかりて人生をやり直す決心をした(MovieWalker)。



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これこそ映画というような深みのある映画だった。
表面上は「反ユダヤ反対」と唱えている”善良な人々”は、年に2、3度くらい「半ユダヤ反対」というくらいで、行動を起こすわけでもなく、ユダヤ人を笑うジョークなどを言われても、それを聞き流して怒らない人たちであり、実は傍観者で、無関心であることを痛烈に批判している。

”善良な人々”の中にいるキャシーですら、「ユダヤ人でなかったことを喜んでいる」という考えが根底にあった。フィルが、ユダヤ人になりきったために、息子が友達から”汚いユダヤ小僧”と仲間はずれにされるのだ。泣いて帰ってきた息子にフィルが「違うといったのか」というと「いわなかった」という。フィルは「違うといえば、ユダヤ人が悪いということを認めることになる」というのだった。

アパートの郵便受けに本名のグリーンとユダヤ人の名前のグリーンバーグという名前を貼ったところ、家主から取りはずせと言われたり,予約したホテルをユダヤ人と知った段階で満室だと断られたりするのだった。友人のユダヤ人にしてみれば、「数週間で、ガラリとまわりの態度が変わるから、もともとのユダヤ人が受けている問題の何倍も多く同時に感じるからだろう」だった。

キャッシーもいったんは、フィルと別れるつもりだったが、フィルの親友のデヴィッドに相談。デヴィッドが、キャッシーを目覚めさせるようなことを言ったのが印象に残る。
男が、結婚相手のパートナーに求めるのは、妻でもなければ、子供の母親でもなく、荒波をともに乗り切っていける相棒だ」だった。

フィルの友達のデヴィッドは、兵隊の時に同じユダヤ人の兵士が亡くなった時に同じ軍隊の仲間から「ユダ公を運ぼう」と言われていたという。

ユダヤ人と名乗っただけで、180度態度が変わってしまう人々、偏見の強さ。
見ごたえのある映画だった。グレゴリー・ペックが若く、アメリカの良心といえるような正義感にあふれた役柄を演じている。

出版社は、「反ユダヤ」を批判する立場を示す記事を掲載したかったのだが、「私は8週間ユダヤ人だった」の原稿を見た出版社の人たちは「これはダイナマイト(記事)だ」と喜ぶのだが、記事を執筆したフィルがユダヤ人とわかった当初とは、ガラリと一変した態度というのも皮肉かも知れない。

映画のタイトルの紳士協定というのは、暗黙の了解といった意味だが、善良なクリスチャンのアメリカ人社会から見て、ユダヤ人問題は騒ぎ立てないという了解といった意味で、ややマイナスのイメージで使われているようだ。

もう一度見直したい映画ではある。

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