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映画「斬る」(1968)を見る。岡本喜八監督、仲代達矢主演の痛快娯楽時代劇。

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斬る」(1968)を見る。原案は山本周五郎の「砦山の十七日」。監督は「日本のいちばん長い日」の岡本喜八。主演は仲代達矢

黒澤明の「用心棒」を彷彿とさせる痛快娯楽時代劇だが、仲代達矢高橋悦史によるユーモラスな掛け合いが魅力。「七人の侍」の菊千代(三船敏郎)を思わせるような百姓出身の田畑半次郎(高橋悦史)の親しみのあるキャラクターがいい。悪徳家老の鮎沢(神山繁)もはまり役だ。

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江戸末期の天保四年(1833年)。空っ風が砂塵を巻き上げる上州・小此木藩に二人の男がふらりと現われた。ひとりはやくざの源太(仲代達矢)。実は二年前に、役目の上から親友を斬り、武士を棄てた男、兵頭弥源太だ。

もうひとりは、田畑半次郎(高橋悦史)。実は百姓に厭気がさし、田畑を売って武士になろうとしている男である。

二人が姿を現わしてから間もなく、野々宮の宿場で城代家老・溝口佐仲(香川良介)が青年武士七名に斬られた。小此木藩は溝口の圧制下、住民たちの不満が絶えず、つい最近、やくざまで加った一撲を鎮圧したばかりだった。

しかし、血気盛んな青年武士たちにとって、腐敗政治は許せるものではなかった。そして、権勢を誇った溝口も、ついに倒されたのだった。

しかし、ひそかに機会を狙っていた次席家老・鮎沢(神山繁)は、私闘と見せかけて七人を斬り、藩政をわが物にしようと討手(うって)をさしむけたのだ。

青年たちはやむなく国境の砦山にこもり、期待と不安を抱いて江戸にいる藩主の裁決を待った。

鮎沢はそれに対し、腕の立つ狼人を募り、砦山に向かわせた。半次郎は、武士にとり立てるという鮎沢の誘いに応じた。しかし、源太は藩政改革を志す青年たちの味方になり、二人は敵味方に分れて戦うことになった。

一方、砦山に篭った青年たちも、その一人笈川中村敦夫)の許嫁・千乃(星由里子)が来たことから、美貌の彼女を間に対立する雰囲気が生まれてきた。

また討手の狼人たちも、鮎沢に見殺しにされる状態になったため、藩士と戦いを交える有様だった。

この戦いで、狼人たちの組長・十郎太(岸田森)が死んだ。こうした情勢から、半次郎もようやく鮎沢の狡猾な政略を見抜いて怒った。

それは鮎沢の命令を受けている藩士たちも同じ気持で、彼らはついに青年たちを討つことは出来なかった。その頃、源太は鮎沢を斬っていた。藩政改革の騒動は終った。源太、そして武士になる志を捨て“土の匂いのする”トミ(鈴木えみ)を連れ、それぞれこの地を去っていった。

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黒澤作品の仲代達矢は、ギラついた目つきで強面だが、岡本喜八作品では、”ゆるキャラ”で「はぁ」と言ったとぼけた味わいを出している。

登場する”七人の侍”たちも個性的で、血気盛んな個性が入り乱れ、群像劇としての面白さもある。映画の冒頭では、浪人2人が、それぞれ5日間も食べていない姿が描かれ、サムライから大きなおにぎりを手に入れる光景は、白い米の飯のありがたさという点で「七人の侍」にも匹敵する。

武家社会への岡本流の痛烈な皮肉を描いているのかもしれない。

【主な出演者】

仲代達矢:源太-兵頭弥源太
高橋悦史:田畑半次郎-半次
中村敦夫笈川哲太郎
久保明:竹井紋之助
久野征四郎:正高大次郎
中丸忠雄:庄田孫兵衛
橋本功:藤井功之助
浜田晃:西村伝蔵
地井武男 吉田弥平次
土屋嘉男:松尾新六
星由里子:千乃
岸田森:荒尾十郎太
今福正雄:道信和尚
香川良介:溝口佐仲
神山繁:鮎沢多宮
東野英治郎:森内兵庫
黒部進:鮎沢金三郎
天本英世:島田源太夫
田村奈巳:よう
鈴木えみ子:トミ
小川安三:喜助
久世龍:大森帯刀
鈴木治夫:番所の番頭
関田裕:鮎沢の家臣
伊吹新:重傷の狼人A
長谷川弘:重傷の浪人B
中山豊:狼人A
当銀長太郎:浪人B
大前亘:門番