「ミッドナイト・トラベラー」(原題:Midnight Traveler, 2019)を見た。
若手映画監督の発掘を目指す作品をコンペにより選出する「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」でみた。
アフガニスタンから亡命を試みた一家の話を監督自身がその体験を映画化した。2016年に国際亡命を申請したが、なかなか審査は降りず、受理されるまでに3年が費やされた。この映画は、EUを目指して過酷な難民キャンプを経て脱出しようとする家族をスマホ3台で記録していったドキュメンタリー映画。
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冒頭、全編を携帯電話3台で撮影したというテロップが出る。
ハサン・ファジリ監督は、アフガニスタンのテレビ局のために制作したドキュメンタリー「アフガニスタンの平和」(Peace in Afghanistan, 2015)がタリバンの不興を買い、出演者は暗殺され、監督自身も死の宣告を受けたという。
この映画は、タリバンから死を宣告されたファじり監督が、安住の地を求めて、流浪の旅を続ける姿をドキュメンタリーで描いている。妻と2人の子供の亡命する道中では、退屈な日々や、満足な食べ物もない中で、何日も野宿したり、キャンプに入り、ようやく人間らしい食事と平和を得て、苦しいこと、楽しいことなども含めて記録している。3台のスマホを使って撮影された。
カメラを回し続ける人が良さそうな監督が、家にやってきた女性に対して「毎日、綺麗になっているね」とお世辞のように言うと、妻が「ほかの女性を褒めるのはいい気がしないよ」とにこやかに言うところなど、世界は共通のようだ。
妻がマフラーの額から髪を出していると、夫の監督は「女は髪を見せるものではない」という考え。それに対して妻は「いや、今はそんな時代ではない」と夫の心の狭さを広げたのは私だとにこやかに笑う。難民生活の中で、そうした日常の笑顔が印象に残る。
トランジットゾーンといわれる区域。そこはまるで監獄のような収容施設。娘の顔に虫に刺されたのか、ぶつぶつができて赤く腫れてもも病院にも行けず、遊び相手もいないのでつまらない、という声は身に迫る。
難民が英国に押し寄せて社会問題になったというニュースがときどき流れるが、現状はなかなか理解できない。ただ父親(監督)も娘もスマホを持ち、娘はスマホで音楽に合わせて踊ったりと、避難生活の中でも、生きる希望を失わないところはいい。ただ故郷を脱出できても、これから安住できるかどうかは不透明であるということを伝えているようだ。
監督自身が観客に寄せたメッセージは以下のとおり。
前半は、退屈で、目を開けているのがきついくらい睡魔に襲われ眠かったが、後半は、しゃきっとさせられ、やや希望の光が見えているところで終わっていた。一般は1,000円で、前売り券を手にして駆けつけた人や、当日券を求めてきた人などを思うと、Pressで無料で見られたので文句は言えない。
また、厳しいい現実の生活を強いられている監督が作った作品に「つまらなかった」というのは簡単だが、タリバンに追われた難民の生活の一端を垣間見ることができたので映画の存在意義はあると思った。
その代わりに、記事をアップした「映像ミュージアム」を見学したのだった。それはそれで正解だった。