fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「スパイの妻<劇場版>」(2020)を見る。

f:id:fpd:20220303194333j:plain

スパイの妻<劇場版>」(2020)を見る(見るのが少々遅れた感あり)。2020年6月に、NHKBS8Kで放送されたドラマを、スクリーンサイズや色調を新たにし劇場版として再編集。監督は黒沢清ベネツィア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)受賞。

主演は高橋一生蒼井優で「ロマンスドール」に続いて夫婦役で再共演。

・・・

1940年の神戸を舞台にしたサスペンス映画。貿易会社を営む夫が満州で日本軍の恐ろしい機密を知ってしまったために、はからずも“スパイの妻”となった女性の激しい葛藤を描き出す。

・・・

f:id:fpd:20220303194542j:plain

1940年の日本。

日独伊の三国同盟が締結され、日本にも戦争の足音が近づいていた時代。

福原優作(高橋一生)は、貿易商を営んでおり、神戸で裕福な暮らしをしていた。そこへ、憲兵部隊の隊長に任命され、神戸へ派遣されてきた津森泰治(東出昌大)が訪ねて来た。泰治は優作の妻、聡子(蒼井優)の幼馴染で、面識のある優作は泰治を迎えるが、泰治の表情は険しいままだった。

f:id:fpd:20220303194510p:plain

実は優作の友人で、生糸の商人であるドラモンドが、諜報部員の容疑をかけられ逮捕されていたのだ。

聡子は何不自由なく、幸せな毎日を送っていたが、優作から、2週間満州に渡ることを報告されるのだが…。

・・・

ストーリーを追っていくと、関東軍が細菌兵器の実験をしており、その人体実験で次々に人が死亡しているという事実が背景にある。優作は人体実験の詳細が書かれたノートを入手しており、文雄に英訳させていた。

優作は、この資料を使って関東軍の人体実験の真実を、国際政治の場で発表しようとしていた。

日本国家にとって不利益になる情報を発表することは、国家に反逆することと同じとして日本の軍部から「反逆罪」としてマークされる。

優作は告発のためにアメリカへ渡る方法は、亡命しか残っていなかった。

優作は亡命するにあたり、危険回避のため、二手に分かれてアメリカに亡命することを提案。

聡子は記録映像を持ってアメリカ行きの渡航戦(密入国)に乗り、優作は人体実験の資料を持ち、別ルートでドラモンがいる上海を訪ね、その後にアメリカで合流するという計画。

1945年、日本は度重なる空襲で、敗戦の空気が濃厚となる。

聡子は、発狂したこと(実は発狂のふり)から軍の精神病院に入院させられている。

そこへ、旧知の野崎医師が訪ねて来て、聡子が退院できるよう交渉しようとする。しかし、聡子は「ここにいることを自分で納得している」と野崎医師の提案を拒否。

さらに野崎医師から、優作が乗っていたとされるアメリカ行きの船が、日本軍の潜水艦に破壊されたことを聞かされる。

その夜、神戸大空襲が起き、病院内は混乱状態に陥る。

ドサクサの中、病院から抜け出した聡子は、日本の敗戦を確信し、心からの叫び声をあげるのだった。優作が亡くなったのか、その後、生きて再会できたかは不明。

満州の資料を買い取るための費用を捻出するのにお金(紙幣の価値が下がるからか)を貴金属などの購入に充てる露天商のシーンで、聡子が「こんなものを(=貴金属)を身につけるなんて”職業婦人”みたいね」と言うセリフが時代を感じさせる。

f:id:fpd:20220303195044j:plain

職業婦人は、1920年代の大正時代から昭和初期に広まった言葉で、今で言えば「OL」のこと。戦時中などは一時期ビジネスガール(BG=女性事務員)という言葉もあったようだ。外国での響き的に「商売女」のニュアンスがあるということで、その後オフィスレディ(OL)が一般的になった。

蒼井優が「フラガール」(2006)のころの少女といったイメージから大人の女性という印象で、当初は真実を告げずに「信じろ」という夫を疑っていたが、だんだん夫の言葉=日本のためというよりも人類(コスモポリタン)のためという正義=に共感し力強くなっていく様も見所。大女優と呼ばれる日も近い(笑)。

 

■「にほんブログ村」にポチッとお願いします。

https://movie.blogmura.com/ranking/in    https://movie.blogmura.com/moviereview/ranking/in