ベストセラーとなった「人間の証明」など、社会派ミステリーで知られる作家の森村誠一が24日、肺炎のため東京都内の病院で死去した。90歳だった。
1933年（昭和8年）埼玉県熊谷市生まれ。青山学院大を卒業後、ホテル勤務を経て作家活動に入った。1967年「大都会」で作家デビュー。
1969年に「高層の死角」で江戸川乱歩賞。1973年に「腐蝕の構造」で日本推理作家協会賞を受賞した。
ホテルや新幹線などを舞台に、現代社会の疎外感や虚無感を掘り下げ、社会派的なテーマとトリックを融合した作品でサラリーマン層の支持を集めた。
1976年に刊行した代表作「人間の証明」は、西條八十の詩をモチーフに、証明三部作の第１作「人間の証明」を発表。高度成長期に社会が忘れかけていた戦争の真実を突きつけるミステリーだった。
翌1977年には角川書店が行った映画版とのメディアミックスで、森村誠一ブームを巻き起こした。原作本は770万部を超える大ベストセラーになった。1978年には「青春の証明」「野性の証明」と「証明3部作」の刊行が続いた。
「人間の証明」では、元ホテルマンとして、劇中でワンカット出演している。
「人間の証明」で登場した刑事を主人公とした「棟居刑事シリーズ」はテレビドラマとしても人気が高く、放送を重ねた。
旧日本軍の中国での人体実験を告発した1981年のノンフィクション「悪魔の飽食」は、社会的に大きな反響を呼んだ。多くの作品がテレビドラマ化され、大きな社会的反響を呼んだ。
2004年には日本ミステリー文学大賞を受賞、2011年には時代小説「悪道」で吉川英治文学賞を受賞した。
晩年は新書「老いる意味」で、老人性うつ病に苦しんだことを明かし、話題を呼んだ。
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【蛇足】森村誠一の出身地が埼玉県・熊谷市（fpdの出身地・深谷市の隣町）で学生時代から親近感を持っていた。1970年代半ばごろには、森村誠一と松本清張の小説はほとんど読んだ。
fpdの「黒革の手帖」の1977年度のメモによると、森村誠一の作品は年間で26冊読んでいる。読後感で「A」「B」「C」の3ランク分けをして、日付も書いてある。
「A」ランク…「人間の証明」「虚構の空路」「高層の死角」「鍵のかかる棺」（上・下）「暗黒流砂」「殺意の重奏」「幻の墓」「大都会」「密閉山脈」「霧の神話」「虹への旅券（パスポート）」「星のふるさと」「腐食の構造」など。
「B」ランク…「魔少年」「超高層ホテル殺人事件」「歪んだ空白」「異型の白昼」「むごく静かに殺せ」「挫折のエリート」「夢の虐殺」「黒の事件簿」など。
Aランクの牛肉をが食べたい。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
