「カム・フロム・アウェイ」(原題:Come From Away、2021)は2017年にブロードウエイで開幕したミュージカルを撮影した映画版でApple TV+で配信中。
2001年9月11日、米国同時多発テロが発生し、カナダの小さな町に38機もの航空機がやむなく着陸。実際にあった、知られざる物語を舞台化。物語の舞台は、カナダ・ニューファンドランド島にある人口約1万人の小さな町、ガンダー。
9.11当日、アメリカ領空が閉鎖され、38機の旅客機がガンダーの町の国際空港に緊急着陸を余儀なくされたことから、約7,000人もの乗客と乗員が、言葉も文化も異なる見知らぬ土地で足止めされることになった。
その5日間にわたる住民と乗客たちの交流を、実在の人物へのインタビューを基に、ドキュメンタリータッチで描き出している。
最大の見どころは、わずか12人の俳優が、ガンダーの住民と飛行機の乗客という複数の役柄を瞬時に入れ替えながら演じ分ける、スピーディーでミニマルな舞台構成。
椅子とテーブルだけのシンプルなセットが、観客の想像力をかき立て、空港、避難所、バーなど、様々な場所へと変化する。
この演出は、多様な人々が一体となってコミュニティを形成していく過程を象徴的に表現している。
音楽は、カナダの夫婦デュオ、アイリーン・サンコフとデヴィッド・ヘインによって作詞・作曲された。ニューファンドランドの伝統的なケルト音楽やフォークソングをベースにした楽曲は、物語に温かみと力強さを与えている。
批評家から絶賛され、トニー賞7部門にノミネート。その後、ロンドン・ウエストエンドでも上演され、2019年のローレンス・オリヴィエ賞で4部門を受賞するなど、世界的な成功を収めた。
この作品がこれほどまでに多くの人々の心を打つのは、その物語が持つ普遍的なメッセージにある。人種、宗教、国籍を超えて、人々が互いに助け合う姿は、分断と対立が深刻化する現代社会において、一筋の光のように感じられる。
ブロードウェイの舞台を撮影した映画版がApple TV+で配信されているが、劇場に足を運べない人々にもこの感動が届けられるのがいい。
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<ブロードウエイの映画版>
日本では「松竹ブロードウエイシネマ2025秋」として、3作品が上映される。
<第1弾>
「エニシング・ゴーズ」(原題:Anything Goes)(10月31日(金)公開。
トニー賞合計6部門受賞!第42回トニー賞にて3部門(ベストリバイバル賞、ミュージカル助演男優賞、振付賞)を獲得、第65回トニー賞では再びトニー賞3部門(ミュージカル・リバイバル作品賞、ミュージカル主演女優賞、振付賞)を授与。大ヒット・痛快ラブコメディの決定版といわれる。
<第2弾>
「インディセント」(原題:Indecent)(11月14日(金)公開)。
第71回トニー賞にて3部門ノミネートされ、最優秀演劇演出賞 & 最優秀演劇照明デザイン賞を受賞した社会派ミュージカルの傑作。
<第3弾>
「タイタニック」(原題:Titanic the Musical)(11月28日(金)公開)。
第51回トニー賞にて、最優秀ミュージカル作品賞、最優秀ミュージカル脚本賞、最優秀作詞作曲賞、最優秀ミュージカル装置デザイン賞、最優秀編曲賞の5部門を受賞。
ブロードウェイ初演は映画「タイタニック」公開と同じ1997年、世界中の人々を魅了した。映画版「タイタニック」は、レオナルド・ディカプリオ他主演で、1998年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、主題歌賞、音楽賞他の11部門で受賞。
また、セリーヌ・ディオンが歌う主題歌「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」も大ヒット。本作は映画版ではないが、より史実に基づいて描かれている、貴重な2023年度の舞台(UK)を収録した大作ブロードウェイ・プロダクション版ミュージカル。
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