映画「テルマ&ルイーズ」（原題：Thelma & Louise、1991）は、女性2人の逃亡劇を描いたロードムービー。1970年代初めのアメリカンニューシネマよもう一度といった映画だった。監督は「エイリアン」「ブラック・レイン」のリドリー・スコット、脚本はカーリー・クーリ。
主演は「ロッキー・ホラー・ショー」「さよならゲーム」のスーザン・サランドンと「偶然の旅行者」のジーナ・デイヴィス。音楽は「レインマン」「ブラックレイン」のハンス・ジマー。
第64回アカデミー賞で6部門にノミネートされ、脚本賞を受賞。
逃亡に使われた1966年製のブルーメタリックのフォード・サンダーバードが多くのパトカーに追われる光景は「バニシング・ポイント」であり、ストーリー展開やラストは「明日に向かって撃て！」を彷彿とさせる。ブラッド・ピットの出世作ともなった。
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ドライブ旅行へ出かけた平凡な主婦のテルマとダイナーの中年ウェイトレス・ルイーズ。だが、途中のバーでレイプされそうになったテルマを救うため、ルイーズは男を射殺してしまう。
二人の旅は一変して悪夢のような展開に。若い男を道連れにしたり、逃亡資金を工面する日々を過ごすが、警察の追跡は次第に激しくなる。
映画は当時の女性の自己解放とアイデンティティの確立を描き、社会や男性からの抑圧に縛られていた2人が、旅を通して「自分で選択する自由」を得ていく姿を映し出す。
最後の崖のシーンは“絶望”というよりも“究極の自由”の象徴と言える。テルマとルイーズの絆は、社会の圧力や犯罪の枠を超えて描かれる。
男性中心社会への挑戦であり、セクハラ、暴力、警察や司法の偏見など、90年代初頭のアメリカ社会が抱える性差別構造を痛烈に批判した傑作映画だ。
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＜ストーリー＞
アーカンソー州でウエイトレスとして働く中年の独身女性ルイーズ（スーザン・サランドン）は、親友で専業主婦のテルマ（ジーナ・デイヴィス）と週末のドライブ旅行に出発する。
途中のバーでテルマは泥酔し、店の客に駐車場でレイプされかける。助けに入ったルイーズは、テルマが護身用に持って来た銃で男を撃ち殺す。ルイーズには、レイプされ傷ついた過去があった。
テルマとルイーズはその場から車で逃走する。メキシコへの逃亡を計画し、ルイーズは恋人のジミー（マイケル・マドセン）と連絡を取って逃走資金6,000ドルを借りる。
警察は目撃情報からルイーズたちの身元を割り出し、州を越えて逃げる二人を追うために、FBIに協力を依頼する。
逃走中にもかかわらず、テルマはハンサムなヒッチハイカーのJ.D.（ブラッド・ピット）に一目惚れし、車に乗せるが、このJ.Dがチンピラのペテン師だった…。
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テルマがレイプされかかり、ルイーズが銃で男を撃つが、そこから犯罪という負の連鎖が次々と起こっていく。正当防衛を警察に主張するどころか、逃亡し、犯罪が雪だるま式に大きく拡大されていき、後戻りできない状態に追い込まれていく。
途中現れるヒッチハイカーのブラッド・ピット演じるJ.D.は、強盗で仮釈放中だったが、テルマに近づき一夜をともにすると、逃走資金を盗んで姿を消してしまう。テルマは責任を感じ、J.D.の真似をして店に強盗に入り、金を作る。
指名手配されているテルマとルイーズだったが、テルマの強盗の一部始終は監視カメラに映っていて、刑事のハル（ハーヴェイ・カイテル）やテルマの夫ダリル（クリストファー・マクドナルド）も映像を見る。
逃走を続けるうちに、テルマとルイーズは人が変わったように大胆になっていった。
スピード違反でパトカーに停められれば逆に警官の銃を奪い、パトカーのトランクに押し込んでしまう。この警官の委縮して「妻子がいるんだ」と命乞いをする女々しさには笑わせられたが。
運転中の途中でタンクローリーのドライバーと何度も出くわす。ドライバーは卑猥な言葉に挑発されると、ガソリンが詰まったタンクを撃って爆発炎上させてしまう過激な行動にでるのだ。
テルマとルイーズはグランド・キャニオンまで逃げるが、ヘリコプターと、パトカーに包囲される。
覚悟を決めたふたりは手を握り合い、絶壁から車ごと死の大ジャンプを決行する。このラストも、映画史に残りそうな壮絶なラストだった。
＜主な登場人物＞
■テルマ・ディキンソン：ジーナ・デイヴィス…若くして結婚したが、支配的で横暴な夫ダリルのもとで自由のない生活を送っている。当初は内気で受け身だが、逃亡の旅を通して次第に自立心と行動力を身につけ、心身ともに解放されていく。
■ルイーズ・ソーヤー：スーザン・サランドン…ダイナーでウェイトレスをしている現実的で強い女性。テルマの親友。面倒見がよく、旅の主導権を握る。過去にテキサス州で性的暴行のトラウマを抱えており、それが物語の重要な伏線。
■ J.D.：ブラッド・ピット…若いヒッチハイカー。テルマが心を許す青年。無邪気で魅力的だが、実は詐欺師的な一面を持ちテルマから金を盗む。
■ ハル・スローカム刑事：ハーヴェイ・カイテル…テルマとルイーズの事件を担当する刑事。2人を「凶悪犯」ではなく「追い詰められた女性」として理解しようとする。最後まで彼女たちを助けようとするが、間に合わない。
■ダリル・ディキンソン：クリストファー・マクドナルド…テルマの夫。自分勝手で家父長的な人物。妻を軽んじ、命令口調で支配する典型的な男尊女卑タイプ。
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