
映画「レッド・エージェント 愛の亡命」(原題:Despite the Falling Snow、2016)を見る。日本では劇場未公開で、WOWOWにより「愛の亡命」として放送された。現在、アマゾンで配信中。監督は「ストレートじゃいられない」のシャミム・サリフ。
主演がお気に入り女優の1人、レベッカ・ファーガソン(「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」「グレイテスト・ショーマン」)だったので、見逃せない(笑)。
30年前の過去と現在を行き来しながら、愛と裏切り、亡命、後悔と再会のドラマが交錯していく。30年前の女スパイ・カティヤと30年後に登場するカティヤの姪にあたるローレンの2役をレベッカ・ファーガソンが演じている。
ローレンはショートヘアでキュート、同一人物が演じているとは思えない雰囲気(上のポスター写真ご覧あれ)。レベッカ・ファーガソンを見る映画と割り切れば、うーん、クール。
登場人物の名前が、ミーシャ、サーシャ、カティヤ…と覚えにくい(笑)。


実はスパイだったカティヤ。
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<簡単なあらすじ>
米ソ冷戦を背景に、亡命により離れ離れになった夫婦の運命を描いたラブサスペンス。1961年、ソ連人のサーシャはアメリカに亡命するが、一緒に亡命するはずの妻カティヤは祖国に取り残されてしまう。
1992年、アメリカで暮らす年老いたサーシャは、アーティストの姪ローレンがモスクワへ行くことを知り、カティヤに思いをはせる。
1959年、サーシャはカティヤと恋に落ち結婚するが、彼女はサーシャの同僚ミーシャとともにアメリカに国家機密を流していた。
カティヤは、表向きは政府高官の妻として生活しているが、裏では「アメリカに情報を渡すスパイ活動に加担」していたのだった。

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時は1992年、ソビエト連邦が崩壊した後。老いたサーシャ(チャールズ・ダンス)はアメリカで暮らしていて、亡命後の生活を過ごしている。
サーシャにはローレン(レベッカ・ファーガソン、2役)という姪がおり、彼女は芸術家としてモスクワで展覧会を行うために渡航を計画する。
ローレンがモスクワを訪れることをきっかけに、サーシャはかつての妻カティヤへの思いを再燃させ、彼女がどうなったかを探り始める。
ローレンはモスクワでジャーナリストのマリーナ(アンチュ・トラウェ)と出会い協力してカティヤの行方、過去のスパイ事件の真相を調べていく。
一方、ミーシャ(アンソニー・ヘッド)は当時の活動によって人生が変わっており、飲酒に溺れている。
ローレンとマリーナの調査を通じて、1960年代の出来事の裏側、カティヤとサーシャ、ミーシャたちの過去の因縁が明らかになっていく。
事実は、サーシャはカティヤを伴ってアメリカへ亡命しようとするが、計画当日、カティヤはソ連当局に捕らえられてしまっていた。
サーシャはそんなことはつゆ知らず、カティヤが後から合流すると信じ、単身で亡命した。しかしその後、カティヤは処刑されたという知らせを受け取る。
そのため、サーシャは「自分だけが生き延び、彼女を見殺しにした」という罪悪感を抱え続けていた。
そこで驚くべき事実が明かされる。カティヤは処刑されていなかった。
カティヤは当局に捕まった後、亡命計画の裏切り者に仕立てられ、秘密裏に処分されたとされてきたが、実際には「当局によって隠される形で命を落とした」のだった。
サーシャが長年信じてきた「自分が彼女を捨てた」という罪は、必ずしも真実ではなかった。
むしろ、彼女は最後までサーシャを愛し、彼を守ろうとしていた。サーシャは亡命の代償として、最も愛する人を失った。彼の人生は成功ではなく「喪失の記憶」に支配されることになった。
国家と個人、イデオロギーと愛情の板挟みの中で、どちらを選ぶか。サーシャとカティヤの関係は「スパイの策略から始まったが、本物の愛で終わった」という皮肉。
サーシャは半世紀にわたり「自分のせいで彼女を死なせた」と思い込んでいた。しかし真実はもっと複雑で、歴史の闇の中に隠されていた。
レベッカ・ファーガソンがカティヤとローレンを演じ分けることで「過去と現在」「失われた愛と次世代の希望」が二重写しのように描かれている。

30年前の1961年の世界と1990年代の背景・冷戦期モスクワ(冬の寒色世界)のコントラストもいい。
1960年代初めでは、室内の厚いカーテン、くすんだ照明、影が濃い美術で「閉ざされた世界」を強調。
一方、1992年、ソ連崩壊後のモスクワ/アメリカでは、柔らかな色合いや光、温かみのある色で表現されている。
タイトルの Despite the Falling Snow の通り「雪」は全編を通じた重要なモチーフとなっている。
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<主な登場人物>
■カティヤ・グリンコヴァ:レベッカ・ファーガソン…1960年代。ソ連人女性。当初、スパイとしてサーシャに接近したが、やがて本当に彼を愛するようになり結婚。
■ローレン・グリンコヴァ:レベッカ・ファーガソン(2役)…1992年時代。カティヤの姪。米国在住。モスクワで展覧会を開く芸術家として渡航。
■アレクサンダー“サーシャ”・イヴァノフ:サム・リード(1960年代)/チャールズ・ダンス(1990年代)…モスクワの政府上層部出身でエリート。若きソ連人で、アメリカへの亡命を決意し、その準備を進める。カティヤの夫。
■ミーシャ・アルドノフ:オリヴァー・ジャクソン=コーエン(1960年代)/アンソニー・ヘッド(1990年代)…スパイ活動に関わっていた人物。カティヤと密接な関係を持つ。カティヤと共謀。
■マリーナ・リンカヤ:アンチュ・トラウェ…1992年時代。モスクワ在住のジャーナリスト。ローレンと会い、調査に協力する。ただ、ローレンとの関係性が微妙に。
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