
映画「裏か表か?」(英題:Heads or Tails?、2025、イタリア)をTOHOシネマズ・シャンテで見る。東京国際映画祭コンペティション部門出品作品。
西部開拓時代のガンマンで興行主の「ウィリアム・フレデリック・コーディ」の愛称である「バッファロー・ビル」をモチーフにしたイタリアの異色ウエスタンで、アメリカの西部劇とは違い、むしろアンチ西部劇のスタンスで描いている。
アメリカ西部の英雄譚がヨーロッパ人を魅了していた時代を背景に、自由を求める女性のラブロマンスがガン・アクションの中で描かれる西部劇へのオマージュにあふれた作品でもある。
アメリカの西部劇が男中心であるのに対して、この映画では、女性のローザを中心に描き、抑圧から解放され自由になる姿が描かれている。実在の興行師バッファロー・ビルをジョン・C・ライリーが演じている。

出演は「ロザリー」のナディア・テレスキウィッツ、「帰れない山」のアレッサンドロ・ボルギ、「シカゴ」「おとなのけんか」のジョン・C・ライリーほか。監督はアレッシオ・リゴ・デ・リーギとマッテオ・ゾッピス。
「セブン」のような描写があるものの、どこか救いがあり、牧歌的な雰囲気がある。どんどんというドラムを効かせた音楽も印象的だった。


・・・
舞台は20世紀初頭の北イタリアの農村地帯。アメリカから来たバッファロー・ビル(ジョン・C・ライリー)率いる「ワイルド・ウエスト・ショー」の一座がローマでショウを開催、多くの観客を集めている。
暴力的な地主の夫エルコレ・ルペ(ミルコ・アルトゥーソ)の抑圧に耐えていたローザ(ナディア・テレスキウィッツ)は、ショーの会場でロデオ(牧童・馬使い)のサンティーノ(アレッサンドロ・ボルギ)に出会い魅了される。
その後、酒場で起こったいざこざのなかでローザは我慢の限界を超え、ルペを撃ち殺してしまう。ルぺの父親(ジャン二・ガルコ)は、サンティーノが殺人を犯し、義理の娘ローザを連れ去って逃亡したとして、懸賞金をかけた。サンティーノとともに、ローザは山岳地帯の沼地に逃亡するが…。






・・・

上映後、登壇した監督のアレッシオ・リゴ・デ・リーギによると、バッファロー一座はイタリアを二度訪れたことがあり、アメリカの西部劇とは一味違う西部劇を描きたかったという。
また、ローザが逃亡する中で、川を渡る場面で、カエルなどが現れて素手でつかむシーンがあるが、イタリアの田舎らしさを描くために取り入れたという。自然の中で、木に絡んで蛇なども登場する。
賞金がかかったカウボーイだが、首だけ切り取られてローザが首を鳥かごの中に入れて逃げるが…。ネタバレになるが、妄想の中で、首だけのサンティーノが語りだしたりする。
最後にローザはサンティーノに別れを告げ、埋葬し十字架を立てる。
<主な登場人物>
■ローザ:ナディア・テレスキウィッツ…若い女性でエルコレ・ルペの婚約者。だが彼から酷い扱いを受けており彼を撃ってしまう。
■エルコレ・ルペ:ミルコ・アルトゥーソ…地元の地主/支配者的存在。ローザの婚約者。腕比べの賭けを行い、その後ローザに暴力を振るったり、ローザとサンティーノの関係に激しい怒りを示したりする。
■サンティーノ:アレッサンドロ・ボルギ…地元のロデオ(馬使い・牧童)で腕のある若者。ルぺにロデオで対抗する。
■バッファロー・ビル:ジョン・C・ライリー…アメリカの巡業興行者(Wild West Showの実在伝説的人物をモチーフ)。
■ルぺの父親:ジャンニ・ガルコ…富裕層で権力を持つ。息子の死/問題を巡ってローザたちを追うための手段として懸賞金を設けて、行動を起こす。
【追加】東京国際映画賞で「監督賞」を受賞(2025年11月5日発表)。
■「にほんブログ村」にポチッと!お願い申し上げます。