
映画「Spirit World/スピリット・ワールド」(2025)をTOHOシネマズ・シャンテで見る。以前、高崎映画祭に参加したときに、高崎市長(高崎映画祭実行委員長)が「カトリーヌ・ドヌーブが(一般には公表されずに撮影で)高崎に来ていました」という話を聞いていたが、この映画のために、1週間程度滞在したらしい。
主演がフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーブ、共演が竹野内豊、堺正章、風吹ジュン、でんでんなど。映画は、「生きている者と死者の隔たり」「過去とのつながり」といった迷える大人たちの希望と再生を描いたファンタジー・ドラマ。
監督はエリック・クーというシンガポールの監督で、日本・フランス・シンガポールの合作。撮影は群馬県高崎市や千葉県いすみ市で行われた。


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父・ユウゾウ(堺正章)の死をきっかけに群馬県高崎市を訪れたハヤト(竹野内豊)は、離婚した母(風吹ジュン)に思い出のサーフボードを届けてほしいという父からの遺言と、フランス人歌手・クレア・エメリー(カトリーヌ・ドヌーブ)のコンサートチケットを見つける。
しかし翌日、来日していたクレアが突然亡くなったことを知る。父の遺言を果たすため、ハヤトは家を出た母を捜す旅に出る。

一方、コンサートで訪れた日本で命を落とし、さまよえる魂となったクレアは、死後の世界でユウゾウと出会い、見えない存在としてハヤトの旅を見守ることとなる。
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父・ユウゾウ(堺正章)は元ミュージシャンだったが、亡くなっていて、遺言として「思い出のサーフボードを母に届けてほしい」という願いを残していた。
同じ頃、フランス人歌手クレア(カトリーヌ・ドヌーヴ)は来日公演の帰りに突然亡くなり、見えない存在、魂として日本の地に残ることになる。そして、同様に亡くなったユウゾウと出会い、ユウゾウの提案で旅に出る。


「死後の世界(スピリットワールド)」をモチーフに、亡くなった人の“存在感”が消えるわけではなく、生きている人(家族・子ども・残された者)に何らかの影響を与えているという考えが根底にある。
描かれるのは、異文化の接点、たとえばフランス人歌手が日本で亡くなり、その魂が日本で“漂う”という設定。日本固有の風習(お盆的な発想、先祖・魂への敬意)をモチーフにしながら、国際的な物語にしている。
希望と再生が描かれ、 登場人物たちは喪失を抱えながらも、それぞれのやり方で答えを探す。たとえばハヤトは父の遺言を果たす旅、クレアの魂はさまよいながらも“見守る”役割を帯びていく。
クー監督が日本文化、とりわけお盆といった慣習から発想を得て、それに敬意を払いながら、スピリチュアルなテーマを描きたかった、という趣旨が監督インタビュー等で語られているようだ。
存在感・国際性・重みのある俳優を起用することで“死後の世界”“魂の見守り”というスピリチュアルな語りに厚みを持たせたいということから、フランスの名優ドヌーヴの起用となった。
最初少し違和感があったのは、ドヌーブと堺正章のセリフが、それぞれの母語であるフランス語、日本語で展開されるという点だったが、“死後の世界のキャラクターには言葉のバリアはない”という発想がある、と脚本担当者が説明しているというので納得。
脚本上は「言葉そのもの(言語)の壁」に縛られず、母語で話してよい設定にしている。ただし、観客側には字幕などでフォローする必要がある。
クレアが一人で居酒屋でお酒を飲むシーン。日本酒でとっくりとおちょこが出てきたが、ジェスチャーで「びんでほしい」というのがクスッとさせる。
しかも、日本酒をコップ酒で一気に飲むのだ。そしてバタンとカウンターに顔をぶつけて倒れてしまう。

カトリーヌ・ドヌーブは1964年に「シェルブールの雨傘」で注目され、堺正章は1966年にスパイダースのメンバーとして「夕陽が泣いている」でヒットするなど、現在80歳前後の二人は世代的に近く、60年の時を経て、映画で互いに死者としてだが会話を交わし、隣に並んでいるという構図は感慨深い。竹野内豊も、この映画のオファーを受けたときに、カトリーヌ・ドヌーブが出演することには驚いたという。
死後の世界というのは、いずれの国の監督でも興味があるものらしい。

<主な登場人物>
■クレア・エメリー:カトリーヌ・ドヌーブ…フランスの著名な歌手。来日するが、亡くなり魂が残る。
■ハヤト:竹野内豊…ユウゾウの息子。生まれてすぐ両親が離婚。
■ユウゾウ:堺正章…元・ミュージシャン。クレアの大ファン。亡くなり、亡くなった者同士でクレアと会話をし、ハヤトを見守る。
■メイコ:風吹ジュン…ユウゾウの元妻。コウジと再婚してバーを営む。
■コウジ:でんでん…メイコの夫。


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