「バルジ大作戦」(1965)をついに見た。
昨年末「フューリー」を見て以来、特に選んでいるわけではないが”戦車”(Tank) 映画を見る機会が多くなった。
先日見た「橋」もそうだったが、戦車がごっそり登場する映画といえば「バルジ大作戦」(1965)だろう。テレビで、1970年代に二度ほど放送されていたが、時間の長さ(169分)に抵抗があり、見逃していた。
韓国航空の「ナッツ」事件の記事を書いた時に、GH字幕さんが第二次大戦(「バルジ大作戦」)にも、”Nuts”(くそくらえ!)という言葉が出てくるよというコメントがあったことも、この映画を見るきっかけとなった。「大脱走」並みの面白さがあった。
映画は、横長のシネラマ方式。
約3時間の映画で、「序曲」(Overture)に始まり、1時間40分ほどで「インターミッション(休憩)」が入り、The Endのあとに「終曲」(Exit Music)が入っていて、「アラビアのロレンス」「ウエストサイド物語」並みの長尺だ。
しかし、一瞬たりとも目が離せない面白さに釘付けになったことは確かだ。
「バルジ大作戦」予告編
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その回答が・・・”Nuts”(字幕:ボケナス)だった。
ドイツ軍の司令官も何だこりゃあ、と一瞬目をシロクロさせ理解できないようだった。
戦争映画の決定版とも言うべき「史上最大の作戦」(1962)のイギリス・パートを監督したケン・アナキンが、ふたたびメガホンをとった「バルジ大作戦」も、迫力、豪華キャストで、「史上最大の作戦」に勝るとも劣らない傑作かも知れない。
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舞台は、第2次大戦のヨーロッパ戦線。連合軍の勝利が目前と見られていた1944年12月。街中には、「メリー・クリスマス」の垂れ幕が風に舞っていた。
破竹の進撃を続ける連合軍の間では、ナチの崩壊も時間の問題だという楽観ムードが漂っていた。
しかし、陸軍中佐カイリー(ヘンリー・フォンダ)だけは、独軍が必ずもう1度、反撃に出てくるだろうという危惧を抱いていた。上官のプリチャード大佐(ダナ・アンドリュース)は一笑に付し、グレー将軍(ロバート・ライアン)らも疑問をもって迎えられただけだった。
「子供たちか」と懸念するヘスラー大佐。
同じ頃、米軍MPに変装した独兵のパラシュート降下は濃霧をついて敢行されていた。彼らの任務は戦車が渡り終えるまで、河にかかった橋の、米側による爆破を何とか阻止することだった。
到着した米軍爆破隊を彼らは容赦なく射殺し、道標(みちしるべ)の切り換え作業までやった。MP偽装の効果である。事態のただならぬことを逸早く気づいたのはカイリー中佐だったが、猛進撃の前に撤退を余儀なくされた。
カイリー中佐(H.フォンダ)とウォレンスキー少佐(C.ブロンソン)
カイリーは、その後決死の低空飛行で偵察を行ったが、敵砲の攻撃をうけ重傷を負った。ガソリンこそ敵の弱点であり、それを制することが鍵であると考えたグレー将軍は、その消耗を目的に戦車同士の鬼ゴッコ作戦をとりそれに成功した。
敵は燃料補給のため引き返した。
戦列からはぐれた兵士たちを拾い集めてウェーバー中尉(ジェームズ・マッカーサー)が本隊へ帰って来た。
戦車隊のガフィー軍曹(テリー・サヴァラス)と合流、補給所へ急いだ。
そこは、独軍変装のMPに守られていたが、ただ1人、瀕死のカイリーがそれを見破った。
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ドイツ軍のコーラー将軍(ヴェルナー・パータース)がヘスラーに、戦車の模型を見せるシーンが面白い。ヘスラーは、模型を見て「よくできています。オモチャではドイツは世界一です」というと、将軍は「我々のオモチャは子供用ではないぞ」というのだ。70トンのキングタイガー戦車は、アメリカのタンク(戦車)と比べて、火力は2.5倍、装甲は2倍という。
アメリカ(テキサス)に12年住んだことがあるというドイツ人などが、アメリカ兵になりすますという訓練をしていた。大きな地図では、戦車の配置図、敵の位置などを示していた。時計は、針が一周すると50時間になる時計があった。敵を壊滅するまでの猶予は50時間というわけだ。
”準備完了”(It can be done)。
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ドイツのヘスラー大佐は、とにかく好戦家で、「戦争は、勝利でも敗北でもなく、ずっと続く」と確信する人物。軍服をずっと着られることに執着している様子。将軍から、高級娼婦をあてがわれても「そんな目で見ていたのか」と怒り、女を追い出す徹底ぶり。
また、ヘスラーは自身の知らないところで、アメリカ兵の捕虜が虐殺されたことを捕虜の一人、ウォレンスキー少佐(チャールズ・ブロンソン)から知らされると、あとで将軍に電話で詰め寄るシーンもあるほど、ルールには厳しい。
ドイツ軍のヘスラーが参謀であるとすれば、アメリカ軍の参謀役に相当するのが、ヘンリー・フォンダが演じるカイリー中佐。このカイリー中佐の意見を聞き入れなかった上官も、最後には、カイリーが正しかったことを認めている。
グレー将軍(ロバート・ライアン)が「敵もどこかでヘマをしたはずだ」というと、カイリー大佐は「私を怒らせたことだ」という。
ガフィー軍曹(テリー・サヴァラス)(左)
軍曹役のテリー・サヴァラスもいい味わいを出していた。
戦争アクション映画として、一級品だが、大砲を積んだ列車が猛スピードで走り、トンネルを抜けようとすると、線路に戦車が待ち受けているシーンなど、ゾクゾクとさせるスリリングなシーンもあり、この映画こそ、劇場のスクリーンでぜひ再見したいものだ。
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「本部へ連絡しろ。敵は戦車を捨てて、歩いてドイツへ帰る」と。
テロップが流れる。「この映画を大作戦で亡くなった100万人の兵士に捧ぐ」
出演: | ヘンリー・フォンダ: | カイリー中佐 |
ロバート・ショウ: | ヘスラー大佐 | |
ロバート・ライアン: | グレイ将軍 | |
チャールズ・ブロンソン: | ウォレンスキー少佐 | |
テリー・サヴァラス: | ガフィー軍曹 | |
ダナ・アンドリュース: | プリチャード大佐 | |
ピア・アンジェリ: | ルイーズ | |
ジョージ・モンゴメリー: | デュクスン軍曹 | |
タイ・ハーディン: | シューマッハ少佐 | |
ウェルナー・ピータース: | コーラー将軍 | |
ジェームズ・マッカーサー: | ウェーバー中尉 | |
ロバート・ウッズ: | ジョー | |
ハンス・クリスチャン・ブレヒ: | コンラート伍長 | |
バーバラ・ワール: | エレナ | |
カール・オットー・アルベルティ: | ディーペル少佐 | |
スティーヴ・ローランド: | エディ |
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