「野鳥観察員」(原題:De Vogelwachter/The Warden、2020)を見る。「SKIP国際Dシネマ映画祭」国際コンペ作品の1本。登場人物はほぼ老人が一人。”老人と海”ならぬ、”老人と野鳥”といった映画。野鳥の数と種類を「鳥類調査センター」の本部に週1の頻度で無線で報告する日常を淡々と描く。無人島の一人暮らしは、とても真似はできない。
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一人の若者が、海岸沿いの砂浜にバラックの小さな掘っ立て小屋で、野鳥観察の準備を始める。青い靴下を脱いで、洗って乾かす。
半世紀もたった後、しわくちゃになった老人の観察員が一人幸せに暮らしていた。その日もひとり野鳥を数える。老人が履いている青い靴下は、足指が出るほどの穴があいている。
鳥類調査センターに報告するときに、センターの担当者から、サッカーの勝敗を毎回聞いて、メモする。海から流れ着いたサッカーボールで、気分転換にボールを蹴る。
ある日、鳥類調査センターの担当者が女性に変わった。前任者はどうしたかと聞くと、昇進して異動となったという。新担当者にサッカーについて詳しいかと聞くと、全く知らないという。前任者から、サッカーの結果を教えてもらっていたことを告げると、その女性も、次の連絡の時から、知らせてくるようになった。
センターの担当者が女性になったということで、老人は、女性の金髪のカツラのようなものがあったので、無線機にそれを被せて、女性と会話をしているような雰囲気を作り出した。
しかしある日、彼の野鳥観察の仕事が廃止になると本部から知らされた。経費の削減なのか、それだったら、補給品を少なくしてもいいし、場合によっては年金をくずしてもいいと、彼は何とかこの事態を食い止めようとするのだが...。
そして、予想もしなかった大型のハリケーンがやってきて、建物は倒壊の危機に。通信機も使えなくなり・・・。最後の物資(食料)がヘリコプターから投下された。
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野鳥観察員という調査センターからの派遣で、孤島で一人暮らす老人の野鳥と会話する楽しみと悲哀と人生の黄昏を描いていて、単調な中にも染み入るものがある。
夢のなかで、金髪の女性と踊るシーンが出てきたり、ハリケーンで、木の建物が壊滅的に壊されたり、嵐の中、ヨットで漂流者が現れたりという小さな出来事が起こる。
ハリケーンの影響で、すべてが崩れ落ち・・・。
建物や残り物の撤収作業のために、船が向かってくることになっているが、嵐で2週間ほどくれるという。その最後の最後まで、野鳥の観察に取り組む老人の姿があった。
■「野鳥観察員」(原題:De Vogelwachter/The Warden)
■ 監督:テレース・アナ
■出演:フリーク・デ・ヨング、ソフィー・ヴァン・ウィンデン、クィア・シルー、ニック・ゴルターマン、ヴァウター・ヤンセン
■製作年/製作国:2020年 / オランダ / 89分