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【SKIP映画祭】国際コンペ⑧:「ライバル」(原題:Rival,ドイツ、ウクライナ、2020)を見る。

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ライバル」(原題:Rival,ドイツ、ウクライナ、2020)を見る。「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」国際コンペ作品の1本。監督はデビュー作「Close」(2004)以来16年ぶりとなる長編第2作となるマークス・レンツ

映画は、主演の9歳の少年の視点で描かれているが、監督は脚本を本人には見せずに、現場で教えていったという(日本では是枝監督と同じ手法だ)。

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キャスティングは、少年(エリツァー・ナザレンコ)はオーディションで繊細さを見せたが、芝居と現実を使い分けていたことが決め手になったという。共同脚本だが5年の歳月を費やしたというだけあって、最後まで、引き込まれた。

共演は「ピアニスト」(2001)や「ミケランジェロの暗号」(2011)などのドイツ俳優ウド・ザメル

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ある家のドアを叩く音がある。2階にいた少年が階段を降りてきて、家にある狩猟用のライフルを持つと、衝撃を避けるためのヘッドホンをつける。そして、入口に向けて銃を構える。

9ヶ月前に舞台が変わる。ウクライナで暮らす9歳の少年ロマン(エリツァー・ナザレンコ)は、祖母が亡くなり、葬式に参列している。

すると、ロマンは、カバン二つだけ持って、何者かに車に乗せられる。運転手たちからは、「坊主、ひとことも話すなよ」と言われ、バンの奥に身を潜める。現金の受け渡しがあり、残りの半分は後で支払う、などの会話が聞こえる。

ロマンが連れてこられた場所は、国境を越えたドイツで、看護師としてドイツで不法入国して働く母の元だった。

妻を5か月前に亡くし糖尿病を患うゲルト(ウド・ザメル)の看護師として母オクサナは働いていたのだ。ゲルトとロマンの母オクサナは親密な関係にあり、結婚を予定していた。

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ゲルトはロマンと仲良くなろうとするが、ロマンは自分の母と親しくなるゲルトのことを受け入れられなかった。ロマンは、母にゲルトと仲良くならないでと懇願し、約束を迫る。母は「努力する」という。

そんな中、母親が体調を崩し、ゲルトが病院に連れて行く。とは言っても、持ち物の中から「ID」を抜き取り、病院の入口においてきただけだった。病院では、身元不明の患者として治療されることになる。

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冒頭のシーンはラストシーンだった。映画は、母親、息子、母の家政婦としての雇用主の3人のトライアングルが描かれる。監督が心がけたのは、ドイツ人のゲルトを悪者に描かないということだったという。誰も悪人にしないというのが根底にあったようだ。敷いてあげれば、システムそのものが悪ということらしい。

ドイツでは、高齢者の介護は、外国からの労働者が引き受けるケースが多いという。不法に入国して、子連れというのが一般的なパターンのようだ。そんな現実を見てきた監督は、経済的にも雇い主に依存し、24時間、ともに時間を過ごすことから、ケア・ワーカーと雇い主の関係も親密になることが多いという。

少年の視線を応用に撮影したということで、演技も新鮮に映る。ラストシーンが衝撃で、「えっ、それで終わり?」といったラストだが、「さらば友よ」のラストシーンに近い(笑)。

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ロマン役で圧倒的な演技を披露したエリツァー・ナザレンコは、ウクライナ本国で多くのTVシリーズやCMの出演経験を持つという。

 ■ 監督:マークス・レンツ

■出演:エリツァー・ナザレンコ、マリア・ブルーニ、ウド・ザメル

■製作年/製作国:2020年 / ドイツ、ウクライナ / 96分

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