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【SKIP映画祭】国際コンペ作品⑨:「この雨は止まない」(原題:This Rain Will Never Stop、2020)を見る。

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この雨は止まない」(原題:This Rain Will Never Stop、2020)を見る。「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」国際コンペ出品映画の1本。監督はウクライナのドキュメンタリーの女性作家アリーナ・ゴルロヴァ。

シリアとウクライナにおけるドラマチックな家族のドキュメンタリー。撮影期間は4年に及ぶ。戦争シーンのない反戦映画。ダンスを踊る平和のシーンと、軍服の兵隊の行進の二つのシーンが同時に描かれ、ラストシーンは、すべてが絡み合うカオス(混沌)のような目まぐるしいシーンで終わる。

シリアからウクライナに逃れても、雨(=戦争)は止まっていなかった。

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シリア内戦から逃れたスレイマン一家は、ヨーロッパ各国に散り散りとなってしまう。そのうちのひとり、アンドリーは、赤十字の仕事で、そして離れ離れになった親族に会いにクルディスタン地域の難民キャンプを訪れる。

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道中は不穏な雨が降り続き、川は水嵩(かさ)を増し、ついには橋が決壊して、その旅は終わりを迎える。

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この雨というのは戦争のことで、止まない戦争という悲劇の象徴。エンディングで旅を続けるアンドリーの姿には、人の生きる逞しさと、人生の希望が見て取れる。

「ゼロ」「1」「2」・・・と11章のスケッチから構成されている。ラストで、世界から紛争がなくなることを願わずにはいられないというメッセージとなっている。

映画の前半では、戦車を製造組立するシーンがあった。車体部分に機関銃、大砲部分をすっぽりと収めるシーンなどが見られた。

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ゴルロヴァ監督は、前作の「No Obvious Signs」(2018)が世界中で高く評価され、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭でファーストアピアランス部門の作品賞を受賞している。

■監督 : アリーナ・ゴルロヴァ

■製作年/製作国:2020年、ウクライナラトビア、ドイツ、カタール、102分,モノクロ。

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監督のメッセージ:

「私は本作で、戦争によって世界各国に散らばったアンドリー・スレイマンの大家族を追った。彼らの中には、戦禍を逃れた者もいたが、逆に紛争に加わる者もいた。これらの対比は私たちに、戦争と平和が共存し、愛も戦争もパレードを開いて歓びを表すなど、互いが無くては存在できないほど、この世界が緊迫した状態であることを示している。その境界で、アンドリー・スレイマンは彼なりのバランスと方法を模索している。」

www.youtube.com

■シリアについて:

シリアの正式名は「シリア・アラブ共和国」。1946年にフランスから独立する形で建国された。北にトルコ、東にイラク、南にヨルダン、西にレバノン、南西にイスラエルがあり、国境を接している。国民の90%はアラブ人が占め、クルド人が8%、その他はアルメニア人やギリシア人、アッシリア人北コーカサス系民族、南トルコ系民族などで構成される多民族国家

■シリア内戦について:

2011年3月15日、シリア各地の都市で一斉にデモがおこなわれ、抗議者と治安部隊が衝突。この日が「シリア内戦」の始まった日だとされている。

反政府側の要求は、すべての政治犯の釈放と抗議者を殺害した者への裁判の実施、令状なしで容疑者を拘束できる「非常事態法」の撤廃、汚職の根絶、さらなる自由。

一方、政府側は、政治犯の釈放や非常事態法の撤廃、内閣の辞職など要求の一部を受け入れて譲歩を示したが、市民の行動は収まらず、政府側が軍を投入して鎮圧を図ると、市民も武装して対抗するようになった。

争いの構図は「政府」対「市民」から「政府軍」対「反政府軍」に形を変えていったシリア内戦。現在は、そこに大国の思惑が絡みあう複雑な代理戦争にまで発展している。