第30回東京国際映画祭の出品作品のうち2本を鑑賞したが、そのうちの1本は「サッドヒルを掘り起こせ」(原題:Sad Hill Unearthed、2017)。映画ポスターにクリント・イーストウッドのマカロニ・ウエスタン(外国ではスパゲッティ・ウエスタン)の姿があるのが興味を引く。よく見るとシルエットが墓地になっている。
タイトルにある「サッドヒル」というのは、映画「続・夕陽のガンマン」(1966)で、クライマックスの決闘シーンの撮影に使われたスペイン・アルゴスにあるサッドヒル墓地のこと。墓地といっても当時映画用に作られたセットであり、墓地の下に亡くなった人は眠っていない。
友人からこのことを聞きつけたギレルモ・デ・オリベイラ監督は、これに興味を持ち、「メタリカ」(アメリカのヘビメタ・バンド)「エンニオ・モリコーネ」「クリント・イーストウッド」の3人を捕まえて(笑)、ドキュメンタリーにしようとして、作り上げたのが、「サッドヒルを掘り返せ」だった。当初は、YouTubeにでもアップしようと考えていたというのだが・・・。
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映画は、アメリカのヘビィメタルバンド「メタリカ」のコンサートシーンから始まるという意表を突いたオープニングだった。実はこのシーンはハイライト部分であり、その謎が、最後で明らかになる時に、感動が湧き上がる。
監督によると、最初にクライマックスシーンを持ってきて、途中の話が全て伏線になるような構成に仕上げたという。そして、観客は最後に、そうだったのか、と納得する。
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1966年に製作された「続・夕陽のガンマン」〈原題:The Good, the Bad and the Ugly、「善玉、悪玉、卑劣漢」)の50周年記念の一環として「サッドヒル」墓地の再現する過程を描き、関係者へのインタビューを中心にドキュメンタリーで描き、最後にその式典でスクリーンに「彼」が登場した時の歓喜は感動ものだった。「彼」とは、もちろん・・・・である。
ドキュメンタリー映画は「続・夕陽のガンマン」に対するリスペクト(敬意)に満ち溢れている。
予告編
ギレルモ・デ・オリベイラ監督は、映画の後のQ&Aで「セルジオ・レオーネ監督は黒澤明の影響を受けており、その日本で大きなスクリーンで上映され夢がかなった」と喜んだ。当初はYouTubeにアップすることを考えていた程度だったという。
オリベイラ監督とルイーズ・プロデューサー
9カ月の交渉の末、イーストウッド本人にもインタビューを敢行。
「続・夕陽のガンマン」では約5,000の十字があったが、再現ではまだ2,000が終わったところで、まだ完成には至っていないという。自分の名前を刻んでほしいという人がいれば関連のホームページに問合わせて欲しい、という話もあった。
この映画の意義は大きいようだ。
プロデューサーは、イーストウッドの関係者に根気強く電話をかけ続け、コメントを得ることに成功したこと。当初はイーストウッドは、ドキュメンタリー映画化の話は知らなかったが、途中で、サッドヒルに関してのプロジェクトを知り、承諾したという。
ボランティアを中心とした一般市民団体が、アメリカの西部劇に対して、マカロニ・ウエスタンの評価は低かったものの、「続・夕陽のガンマン」は、音楽、プロットなどでも紛れもない名作であり、その撮影場所を”掘り起こして”映画ロケ地の撮影現場を再現してしまうという熱意の凄さ。”映画オタク(フリーク)”の夢が実現した映画でもあった。
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