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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「サッドヒルを掘り返せ」(2017):「続・夕陽のガンマン」の舞台。 

 
第30回東京国際映画祭の出品作品のうち2本を鑑賞したが、そのうちの1本は「サッドヒルを掘り起こせ」(原題:Sad Hill Unearthed、2017)。映画ポスターにクリント・イーストウッドのマカロニ・ウエスタン(外国ではスパゲッティ・ウエスタン)の姿があるのが興味を引く。よく見るとシルエットが墓地になっている。
 
タイトルにある「サッドヒル」というのは、映画「続・夕陽のガンマン」(1966)で、クライマックスの決闘シーンの撮影に使われスペイン・アルゴスにあるサッドヒル墓地のこと。墓地といっても当時映画用に作られたセットであり、墓地の下に亡くなった人は眠っていない。
 
「続・夕陽のガンマン」の撮影に使われたサッドヒルは、そのまま放置されていた2014年に発見されたというニュースがSNSなどで広がり、サッドヒルに当時のロケセットを再現しようとする有志たちがいた。
 
友人からこのことを聞きつけたギレルモ・デ・オリベイラ監督は、これに興味を持ち、「メタリカ」(アメリカのヘビメタ・バンド)「エンニオ・モリコーネ」「クリント・イーストウッド」の3人捕まえて(笑)、ドキュメンタリーにしようとして、作り上げたのが、「サッドヒルを掘り返せ」だった。当初は、YouTubeにでもアップしようと考えていたというのだが・・・。
 
     「続・夕陽のガンマン」のサッドヒル墓地の風景(3人のガンマンがほとんどセリフなし)
 
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映画は、アメリカのヘビィメタルバンド「メタリカ」のコンサートシーンから始まるという意表を突いたオープニングだった。実はこのシーンはハイライト部分であり、その謎が、最後で明らかになる時に、感動が湧き上がる。
 
監督によると、最初にクライマックスシーンを持ってきて、途中の話が全て伏線になるような構成に仕上げたという。そして、観客は最後に、そうだったのか、と納得する。
 
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1966年に製作された「続・夕陽のガンマン」〈原題:The Good, the Bad and the Ugly、善玉、悪玉、卑劣漢」)の50周年記念の一環として「サッドヒル」墓地の再現する過程を描き、関係者へのインタビューを中心にドキュメンタリーで描き、最後にその式典でスクリーンに「彼」が登場した時の歓喜は感動ものだった。「彼」とは、もちろん・・・・である。
 
ドキュメンタリー映画は「続・夕陽のガンマン」に対するリスペクト(敬意)に満ち溢れている。
 

 
予告編
 
ギレルモ・デ・オリベイラ監督は、映画の後のQ&Aでセルジオ・レオーネ監督は黒澤明の影響を受けており、その日本で大きなスクリーンで上映され夢がかなった」と喜んだ。当初はYouTubeにアップすることを考えていた程度だったという。
  
           オリベイラ監督とルイーズ・プロデューサー
 
プロデューサーのルイーズ女史は、レオーネ作品の音楽を手掛けエンリオ・モリコーネや当時の製作に関わった人々の証言も撮影。
 
9カ月の交渉の末、イーストウッド本人にもインタビューを敢行
イーストウッドのコメントは、同作の50周年を記念しサッドヒルで上映会を行った有志たちへのサプライズで効果的に使用されていた。
 
「続・夕陽のガンマン」では、墓地の十字架に、映画に関わった関係者の名前が刻まれるが、イーライ・ウォラクの名前も刻まれていた。
 
「続・夕陽のガンマン」では約5,000の十字があったが、再現ではまだ2,000が終わったところで、まだ完成には至っていないという。自分の名前を刻んでほしいという人がいれば関連のホームページに問合わせて欲しい、という話もあった。
 
サッドヒル・プロジェクトの関係者によると、映画の”聖地巡礼”のようなスポットになればいいという。ただ、デズニーランドのような観光地化になってほしくはなく、文化遺産になるような手続きを進行中という。
 
Q&Aで、「生きている間に、一度はツアーでも組んでサッドヒルを訪問したい」という声が会場からあがると、オリベイラ監督は「その時はわたしが案内役を努めたい」と答えて笑いを誘っていた。
 
この映画の意義は大きいようだ。
イーストウッドモリコーネという生きた”レジェンド”を映画に出演させたこと。
プロデューサーは、イーストウッドの関係者に根気強く電話をかけ続け、コメントを得ることに成功したこと。当初はイーストウッドは、ドキュメンタリー映画化の話は知らなかったが、途中で、サッドヒルに関してのプロジェクトを知り、承諾したという。
 
ボランティアを中心とした一般市民団体が、アメリカの西部劇に対して、マカロニ・ウエスタンの評価は低かったものの、「続・夕陽のガンマン」は、音楽、プロットなどでも紛れもない名作であり、その撮影場所を”掘り起こして”映画ロケ地の撮影現場を再現してしまうという熱意の凄さ。”映画オタク(フリーク)”の夢が実現した映画でもあった。
 
「続・夕陽のガンマン」は、イーライ・ウォラクが墓地を走り回るシーンや、ラストの3人による決闘シーンが有名。何よりもあの音楽の素晴らしさ!「続・夕陽のガンマンをもう一度見たくなる映画である。
 
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