「グレイス -消えゆく幸せ-」(原題:A Fall from Grace、2020)を見る。監督はタイラー・ペリー、主演はクリスタル・フォックスが務めた。
駆け出しの弁護士が殺人容疑者の裁判を引き受けるが、独自調査で驚愕の真実が浮かび上がってくるというサスペンス裁判劇。タイトルがイマイチだが、中身は「ミザリー」級の”衝撃”では生ぬるいほどの面白さ。
最後の10分は息もつかせぬ怒涛の展開の圧倒的な面白さ!
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ジャスミン・ブライアント(ブレシャ・ウェッブ)はバージニア州の小さな町で新米弁護士で公選弁護人として活動していた。警察官の夫、ジョーダン(マシュー・ロー)は数日前に女性の飛び降り自殺を止められなかったことを気に病んでいた。
そんなある日、ジャスミンは上司のローリー(タイラー・ペリー)からグレイス・ウォーターズ(クリスタル・フォックス)という女性の弁護を担当するように命じられた。
グレイスは夫のシャノン(メカッド・ブルックス)を殺害した容疑で告発されていた。面会時、グレイスは「息子のマルコムにいつでも会える距離にある刑務所には入れるなら、司法取引に応じたい」とジャスミンに言ってきた。
容疑者らしからぬ態度を不審に思ったジャスミンが事件について調べると、シャノンの死体が見つかっていないなどの不可解な点が複数あったのだ。
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ジャスミンが「弁護士になったのに、弁護が殺人者や泥棒などの弁護をする」というのに抵抗感があること、上司が、裁判に持ち込むなどは時間の無駄だから、容疑者に司法取引に応じさせ、さっさとサインさせればいいという、事務的な手続きを要求してくるのにも不満があった。
容疑者にサインを迫りに同席してきたローリー。
ローリーとしては、法律事務所に裁判費用を工面するだけの資金がなかったことや「殺人犯を擁護するのか」といったメディアからのバッシングを恐れていたのである。はたから見るほど弁護士稼業もかっこいいものでもない(笑)。
写真家として名前の知られた男シャノン(写真上)が、個展を見に来ていたグレイスに近づいてきて、親切にしていたが、それには裏があり、一方、親友と思っていた女性のサラが実は・・・といった驚きが後半のほうで明らかになるが、裁判のシーンや、結末のシーンは、あっと驚かされる!
「まさか。そういうことだったのか」という衝撃と怒涛の展開にはうならさせる。
映画批評のロッテントマトなどの評価は低いが、脚本の面白さの点では「十二人の怒れる男」の有罪が無罪に変わるような、ラストの爽快感がある。
実話がベースということで、そのままなぞっているところはややマイナスだが、拾い物の映画だった。この映画の面白さは、人間の二面性の怖さ。表面上は愛想よく、いかにも人がよさそうにふるまっているが、裏の顔の本性が豹変して現われる怖さ、恐ろしさ(笑)。人間不信を煽るようなストーリーだ!(笑)。タイトルは容疑者の「グレイス」が主演のようだが、実際は、正義感に燃え真相を追及する若い弁護士ジャスミンのほう。
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主な出演者:
■ジャスミン・ブライアント(プレシャ・ウェッブ)
駆け出しの若手弁護士。司法取引のまとめ仕事ばかりで裁判経験はなかったが、グレイスの弁護を引き受けたことをきっかけに、自分の正義を信じて職務を遂行するようになる。
■グレイス・ウォーターズ(クリスタル・フォックス)
シャノン殺害の容疑者として逮捕された女性。夫と別れ傷心していたところに彼と出会い、惹かれていくも、資産や社会的信用など全てを奪われてしまう。
■サラ・ミラー(フィリシア・ラシャド)
シャノンの友人で、傷心の彼女に寄り添っていた女性。ジャスミンが事件のことで話を聞きにきた際は、心よくこれに応えたものの、事件の夜のことで秘密を抱えていた。
■シャノン・デロング(メカッド・ブルックス)
自称写真家としてグレイスに近づいた結婚詐欺師。結婚する前は紳士的で優しい人物であったにも関わらず、結婚後は態度が豹変する。
■ジョーダン・ブライアント(マシュー・ロー)
ジャスミンの夫で警察官。事件を調べる中で、挫折しそうになるジャスミンを何度も励まし、彼女の精神的な支えとなっていた人物。
■マルコム・ウォーターズ(ウォルター・フォントルロイ)
グレイスの息子。彼女が司法取引で終身刑になると知ると、担当弁護士のジャスミンの元に彼女の無罪を訴えに来た。
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