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映画「疑惑」(1982)原作松本清張、監督野村芳太郎。”女の対決”。再見。

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松本清張原作の「疑惑」(1982)を再見した。監督は野村芳太郎、撮影は川又昂、音楽は芥川也寸志など、「砂の器」などの野村組が集結している。所見の時の印象は、桃井かおりが法廷で大暴れするシーンや、岩下志麻の弁護士が凛としてクールだったといった程度だったが、見直してみると、桃井かおりの、体に染みついた人を馬鹿にした態度と根っからの”ワル”ぶりが圧巻というほかはなかった。

桃井かおりは、1971年に映画「愛ふたたび」(市川崑監督)で浅丘ルリ子の妹役でデビュー。同年、ATG映画「あらかじめ失われた恋人たちよ」(田原総一朗監督)でヒロインを演じ、本格的に映画デビュー。1975年、倉本聰脚本によるる日本テレビ系列「前略おふくろ様」の海役で、人気に火が付いた。

1977年の「幸福の黄色いハンカチ」で第1回日本アカデミー賞で除年女優賞を受賞し、1979年公開の「もう頬づえはつかない」で映画初主演。「疑惑」での悪女のイメージの主人公・須磨子の役を演じることに対して事務所は全員が反対したが「等身大の桃井ネタは尽きたと思っていたので、いっそすごく嫌な人とかダメな人を少し作って演じてみたい、とにかく演じたいという気持ちが強かった。球磨子のような人だと思われてこそ大成功くらいの気持ちで思いっきりやってみようと思った」と語っている。この役への気合は凄まじかったことが伺える。とにかく自己中。「あの人(=夫)60近いのよ。あたしだって将来のことを考えるわよ」。その考えが”3億円の保険金詐欺”か(笑)。

 

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富山県新港湾埠頭で車が海中に転落、乗っていた地元の財閥、白河福太郎(仲谷昇)は死亡したが、後妻の球磨子(桃井かおり)はかすり傷ひとつ負わなかった。しかも、球磨子は過去に情夫と共謀して数数の犯罪を起こしていたことが判明。彼女は夫に三億円の保険金をかけており、この事故も、泳げない福太郎を殺すための擬装ではないかと誰もが疑った。

北陸日日新聞の秋谷(柄本明)が積極的に報道を始めた。物的証拠がないまま球磨子は逮捕された。強気の球磨子は弁護士の原山(松村達雄)を通じて、東京の花形弁護士、岡村(丹波哲郎)に弁護を依頼するが、彼女の不利な立場に拒否され、原山も健康を理由に辞退。

そして、女弁護士の佐原律子岩下志麻)が国選弁護人として選ばれた。球磨子は同性でありながら自分とは違いすぎる立場にいる律子に反感を待った。律子も同じ気持だったが、ふとした偶然の事故から福太郎が自殺(無理心中)を企みようとしたことをつきとめた。球磨子は無罪となるが保険金は手に入らなかった。律子は真実をつきとめたが、球磨子を許すことは出来なかった。

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車が海に突っ込むシーンの実地検分では、乗用車3台を使って3回も実験が行われるのには驚かされる。何しろ保険金3億円がかかっているとあって、車の内部にはカメラが据え付けられ、車の前面ガラスの損傷具合や、助手席にあったペンチなどの状況証拠が積み上げられていく。

球磨子が夫に「1億や2億じゃダメだからね。保険には全部入って!」と責め立てるシーンがフラッシュバックされるが、裁判での判決は「無罪」。なぜか?

弁護士を引き受けた国選弁護人の佐原律子岩下志麻)に対しても「あんた、国選弁護人だと思って手を抜かないでよ」とハッパをかける。

佐原弁護人も、球磨子に負けていない。拘置所で球磨子に「あんたに同情はしないわよ。仕事をするだけ」とクール。

亡くなった福太郎の息子(中学生)が事故の前日に父福太郎と会っていて、しかも手紙を受け取っていたことが裁判で証言されたことで、事態は大逆転となった。

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裁判の後、球磨子が勤めるクラブに佐原を呼ぶが、無罪になっても保険金が降りないことから、罵倒合戦が始まる。球磨子がワインを佐原の洋服にかけると、しばらくして、佐原が自分のワインを球磨子の顔にぶちかけ、黙って去っていくのだ。

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球磨子が列車に乗ると、ホームにいた乗客などは、すでに新聞などで騒がれている球磨子を興味本位で眺める。球磨子は、そんな野次馬に「あかんべー」をして、前を向き、思いを巡らす。そんな中、一瞬ニヤつく球磨子。

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コロコロと証言を変える小心者の豊崎鹿賀丈史)がなんともおかしい。球磨子の元彼だが、自分の証言で球磨子が死刑になるかもしれないと国選弁護人から言われると、それまでと真逆のことを言うのだ。”大御所”の丹波哲郎などワンカットしか出ていないのがもったいない(笑)。自動車の事故の目撃者として、今西警部(「砂の器」)でコンビを組んだ森田健作も出演。

第6回日本アカデミー賞優秀作品賞、優秀監督賞野村芳太郎)、優秀脚本賞古田求野村芳太郎)、優秀主演女優賞桃井かおり(『青春の門 自立篇』と併せての受賞))、優秀助演男優賞柄本明(『セーラー服と機関銃』等と併せての受賞)、鹿賀丈史)、優秀音楽賞芥川也寸志(『幻の湖』と併せての受賞))、撮影賞(川又昂(『道頓堀川』と併せての受賞))、照明賞(小力松太郎(『道頓堀川』と併せての受賞))、録音賞(原田真一(『道頓堀川』と併せての受賞))などこの年の賞を総なめ。

松本清張の小説は「テレビ局XX周年記念」などでなんどもテレビ放送されるが「疑惑」も例外ではない。これまで桃井かおりが演じた前科4犯の悪女・ 球磨子を演じたのは、いしだあゆみ(1992年)・余貴美子(2003年)・沢口靖子(2009年)・尾野真千子(2012年)・黒木華(2019)など。沢口靖子黒木華(はる)などの悪女役のイメージがわかない(笑)。

■「尾野真千子」版:

ドラマ「疑惑」(松本清張没後20年特別企画) - fpdの映画スクラップ貼