「ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-」(原題:The Laundromat、2019)を見た。監督はステーヴン・ソダバーグ。主演はメリル・ストリープ。共演が豪華で、ゲイリー・オールドマン、アントニオ・バンデラス、ジェフリー・ライト、シャロン・ストーン、ロバート・パトリック、など。ジャーナリスト、ジェイク・バーンスタインの著書を基に映画化した作品。Netflix作品。
「パナマ文書」というのは昔からどこかで聞いたことがあるという程度だったが、この映画は、パナマ文書の大量データ流出によって、世界的な企業が税金逃れをしていたという事実を浮き彫りにしている。映画の最後に「2018年、アメリカの大企業60社が、790億ドル(約8兆円)の税引き前利益について税金を払わなかった」というテロップが流れる。
映画の中身は複雑怪奇だが、タックスヘイブン(一定の課税が著しく軽減、ないしは完全に免除される国や地域)を利用して、ペーパーカンパニーをその地域につくり、モサック・フォンセカ法律事務所を通して、巨額の税金逃れをしていたことが明るみに出たといったストーリー。漏洩したのはモサック・フォンセカ法律事務所が1970年代から2016年初までに作成した、合計2.6TBの1150万件の機密文書のこと。
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夫を亡くしたエレン・マーティン(メリル・ストリープ)は、モサック・フォンセカ法律事務所の弁護士のユルゲン・モサックとラモン・フォンカセの詐欺取引に巻き込まれてしまう。マーティンは自分が被害に遭った詐欺を調べ始めたが、自分の小さな苦境が世界中で起こっている巨大違法取引のほんの一端に過ぎないことを知る。
映画で見ていて混乱するのは、パナマ文書の黒幕である二人の会計士(ゲイリー・オールドマンとアントニオ・バンデラス)が語り部を務めていること。しかもカメラ目線で・・・。現実の話の中に、二人が割り込んで、言い訳をしているような構図だ。
この二人に立ち向かう役割を果たすのがメリル・ストリープ扮する主婦。夫の死により莫大な遺産があったはずだが、弁護士に相談すると、ほとんど残高がなかった。お金はどこに・・・。ほかにも登場人物は多く、点のような話が並行して、それぞれのエピソードが描かれていく。それでまとまったかというとそうでもなく、登場人物の誰にも感情移入はできない。
メリル・ストリープやゲイリー・オールドマンといった超大物俳優が、ふつうの俳優のようにパズルの一つのように描かれているが・・・。
現在の複雑な金融ネットワークシステムを暴いているが、それでもわかりにくい。2015年の「パナマ文書」発覚漏洩事件は、ときのオバマ大統領の実際のスピーチも挿入されている。一般庶民が、税金を払っているのに、富裕層ほど抜け道を考えて税金を払ってないといったシステムを皮肉たっぷりに描いているところは見所だが・・・。
主な出演者:
エレン・マーティン(メリル・ストリープ)
ユルゲン・モサック(ゲイリー・オールドマン)
ラモン・フォンセカ(アントニオ・バンデラス)
ボンキャンパー(ジェフリー・ライト)
リッチ(ロバート・パトリック)
ハナ(シャロン・ストーン)
マシュー・カーク(デヴィッド・シュワイマー)