「恋する惑星」(原題:重慶森林、1994、香港)を見る。ウォン・カーウァイ(王家衛)監督が本作のプロデューサーでもある盟友ジェフ・ラウと1992年に設立した製作会社ジェットトーン(澤東)の劇場公開第1作。
日本ではまだ有名ではなかったウォン・カーウァイや金城武、フェイ・ウォンの名を一躍有名にした作品。トニー・レオンは、中華圏を代表する映画賞である台湾映画賞「金馬奨」で主演男優賞を受賞した。
ボーイッシュ・ヘアスタイルのフェイがハンバーガー店のバイト仕事を音楽を聴き、踊りながら注文を受けたりというのがコミカルで面白い。
スタイリッシュな映像と挿入曲がいい。挿入曲では、繰り返し流れる「夢のカリフォルニア」(1965、ママス&パパス)は懐かしい曲。
ほかでは「Things in Life」(1972、デニス・ブラウン)映画「マディソン郡の橋」でも使われた「縁は異なもの」(1959、ダイナ・ワシントン)「夢中人」(1992、英バンド・クランベリーズ「ドリームス」のカバー曲、フェイ・ウォン自身が歌う)が印象的。
舞台となった九龍(ガウロン)にある雑居ビル、重慶大厦(チョンキンマンション)や中環(ツォンワン=セントラル)の名物エスカレーター(中環至半山自動扶梯=ミッドレベル・エスカレーター)周辺は日本人観光客の人気スポットになった。このエスカレーターは全長800メートルで片道20分もかかるという。
ちなみに日本の最長エスカレーターは、香川県丸亀市の遊園地にあるエスカレーター「マジックストロー」で96m。
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<ストーリー>
エイプリルフールに失恋した刑事223号(モウ、金城武)は、自身の誕生日までパイナップルの缶詰を買い続ける日々を送っていた。
デートの相手を探すため片っ端から電話をかけまくるモウ。小学校4年の時に席が隣だったというと相手から即、電話を切られる。ハンバーガー店長は、失恋男が来るたびに、店のフェイを誘いなと助言する。
ある日、その夜会った女に恋しようと決意したモウは、訪れたバーで金髪にサングラスの女(ブリジット・リン)と出会う。この金髪女は逃亡中のドラッグ・ディーラーの女だった。
一方、ハンバーガー・ショップ店で働くフェイ(フェイ・ウォン)は、店主から1通の手紙を託される。それは、店の常連である刑事633号(トニー・レオン)へ向けた、彼の元恋人のスチュワーデス(現CA、チャウ・カーリン)からのものだった。
ミッドレベルズ・エスカレーター脇のアパートに住む刑事633号に密かな恋心を抱いていたフェイは、手紙に同封された鍵を使って彼の部屋に忍び込む。
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ロマ・コメだが、べたべたがなくさらりと描かれているのがいい。ドラッグ・ディーラーの金髪女が、ドラッグを隠す場所が靴底に隠し縫い付けたり、ありとあらゆるところに隠すシーンがすごい。
また、店長(フェイの親戚)が、失恋した警察官に、何度もフェイをデートに誘えと「アドバイス」する可笑しさ。
刑事633号がやってきてフェイと二人きりにさせるために、店長以下、全員がどこかに消えてしまうというのも笑わせる。
もう一度見てみたくなるような映画だった。
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