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映画「マイスモールランド」(2022)を見る。在日クルド人問題を描く。

マイスモールランド」(2022)を見る。昨年3月の高崎映画祭で、この映画の主演で嵐莉奈が最優秀新人賞を受賞していた。気になっていた映画だったが、Netflixの配信で見ることができた。

国を持たないクルド人の外国(日本)での難民申請の認可の厳しさ、生活の厳しさ、差別など在日クルド人問題を描いている(※1)。難民問題について、考えさせられる映画だった。

監督はこれが初監督作となる川和田恵真。嵐莉奈がモデルでもあり、美貌と演技力がすばらしい。

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<ストーリー>
サーリャ(嵐莉菜)は17歳の高校生。生まれた地を逃れて家族と共に来日し、幼い頃から日本で育ったクルド人である。母は数年前に亡くなり、今は父・マズルム(アラシ・カーフィザデー)、妹のアーリン(リリ・カーフィザデー)、弟のロビン(リオン・カーフィザデー)の四人暮らし。家庭ではクルド文化が強く、クルド人のコミュニティの中で生活していた。

そんなサーリャだったが、学校では普通の高校生として日本人の親友にも恵まれ、「日本人らしい」生活を送っていた。日本の小学校の先生になりたいという夢もある。

大学進学の資金を貯めるため、父に内緒でコンビニでバイトを始めるサーリャ。そこで同じ高校生の聡太(奥平大兼)と出会い,仲を深めていく二人。

しかしある日、サーリャの一家の「難民申請」が不認定となり、在留資格を失ってしまう。就労さえ禁じられたが、生きる為に働いた父は逮捕されて入管に収容された。アパートに子供だけで取り残されるサーリャたち。

不法就労でバイトをクビになり、聡太の親族から交際も止められるサーリャ。ビザが無いゆえに志望大学の推薦入学も断られ、家賃滞納でアパートからも退去通告を受けた。切羽詰まってデートのみの「パパ活」を試みるも、キスを迫られて逃げ出すサーリャだった…。

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入管管理局に拘束され、どこにも居場所を失って帰国を決意する父マズルム。父との面会の場で、サーリャは訴える。「私たちの居場所は?勝手に連れてきたくせに、今度は勝手に置いていくの?」という言葉が厳しく切ない。

山中があとから説明するが「(マズルムから)しゃべるなと言われていたが、親が日本を出れば、残るサーリャたち子供にはビザが下りる可能性がある」ということで、父親が帰国の決断を下したことをサーリャは知ることになる。

朝…絶望の中に光を見出そうとするサーリャの強い眼差しで物語は終わったが、これからどのような人生を歩んでいくのか…。

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何でもかんでも悪気はないにしても根掘り葉掘り聞く日本人は恥ずかしい。
コンビニのレジでバイト中にサーリャは、客の老女から「お人形さんみたいね。お国はどちら?いずれ帰るんでしょう」と軽い気持ちで聞かれるが「(クルド人ですと言っても理解してもらえないことは明らかなので)ドイツです」と応えることにしていた。

知り合いになった聡太からも、またその母からも「どこの国」と聞かれていた。
サーリャは聡汰に説明していたが、小学生の時に「ワールドカップがあって、応援しているのはドイツ」と応え、いつの間にかドイツ人と言われるようになり、なぜかそれが心地よいという。聡汰はさらに「本当はどこの国?」と聞いてきたので「クルド」と答えたが…。聡汰はクルドと聞いてもピンとこない。

映画では普段わからないようなクルド人の風習などを垣間見ることができた。結婚式には、親戚の人は皆、手のひらを赤く染めるという習わしがあり、サーリャの手も赤く染まっていた。トマトを食べ過ぎて赤くなったと笑っていたサーリャだが、「手を見ると自分がクルドだと思いだす」と語っていた。

聡汰は「オレも青とオレンジを見ると、おじさん(コンビニの嫌みな店長)を思い出すというと「それはちょっとやだね」「ちょっとじゃないよ。だいぶだよ」と川べりで笑いあっていたが…。

「在留許可」が下りず、ビザがないことで、大学への推薦もダメになるサーリャ。担任は「がんばろうな」と気休めのように安易にいうと「もうがんばってます」とサーリャ。「そうだな」と先生。

サーリャが教室を出ると「合格おめでとう」という先生の声と詩織の喜ぶ声。同級生のまなみは「詩織は、さっちゃん(サーリャの愛称)からノートを借りていたくせに」と励まし「遊ばなくちゃ」とサーリャをカラオケに誘う。

まなみはなんとおじさんと同伴する「パパ活」をやっていたのだ。まなみは「しーちゃん(詩織)には内緒で」と言い、サーリャにもパパ活を勧めるのだった。サーリャとおっさんのパパ活の場面もあるが省略。

申請に関しての役所の対応もロボットかと思うほど、人間味のない「お役所対応」の典型で、頼りにならない。

印象的なシーン:拘置所の面会所で父とサーリャが、楽しかった思い出として、ラーメンを食べた時があり、仕切りの窓を隔ててお互いにラーメンをすするシーン。父親はクルドのしきたりにのっとり「私たちの未来に光があるように」と祈っていた。

そして拘置所をあとにして、サーリャは、父親の言葉を反芻しながら歩くのだった。

<キャスト>
■チョーラク・サーリャ:嵐莉菜…17歳の高校生。まっすぐな性格で、しっかり者。小学校の先生を目指している。

■崎山聡太:奥平大兼…コンビニのバイトをしていて、サーリャの友だちになる。美術大を目指す。

■チョーラク・マズルム:アラシ・カーフィザデー…サーリャの父。クルドの自由のために声を上げたことで、祖国を追われ日本に逃れてきた難民。帰国すれば捕らえられることになる。クルドのしきたりに厳しい。

■チョーラク・アーリン:リリ・カーフィザデー…サーリャの妹。中学生。

■チョーラク・ロビン:リオン・カーフィザデー…サーリャの幼い弟。

■チョーラク・ファトマ…サーリャの母。すでに亡くなっており、故郷のオリーブの木のそばで眠っているとされる。
■小向悠子:韓英恵…ロビンの担任。
■太田武:藤井隆…コンビニの嫌みな店長。サーリャがバイトをしている。
■崎山のり子:池脇千鶴…聡太の母。岩手出身。聡太がクルド人と関わることを内心嫌っている。
■山中誠:平泉成…先生(弁護士)と呼ばれチョーラク一家のビザなど日本滞在をサポート。
■ロナヒ:サヘル・ローズクルド人で、サーリャの友人。
■原英夫:板橋駿谷…サーリャの担任。
■西森まなみ:新谷ゆづみ…サーリャの同級生。
■野原詩織:さくら…サーリャの同級生。
小倉一郎:サーリャ一家が住むアパートの大家。

監督・脚本:川和田恵真
製作:河野聡、小林栄太朗、澤田一、是枝裕和依田巽、松本智

(※1)東京に近く、元々外国人も多かった川口市や隣の蕨(わらび)市には、1990年ごろからトルコ国籍のクルド人が住むようになった。現在約3千人が暮らしているとされる。難民認定の申請を認められないまま、入管施設への収容を一時的に解かれた「仮放免」の人も少なくない。

川口市によると、以前からゴミ出しや夜間の騒音に関する住民からの相談はあった。クルド人が多く従事する解体業をめぐっては資材置き場の騒音や振動などの苦情もあり、2022年7月には、一定面積以上の資材置き場新設を許可制にする条例を施行した。

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