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Netflixミニシリーズ「リプリー」(原題:Ripley、全8話、モノクロ)一気見終了。

Netflixで配信の「リプリー」(原題:Ripley、全8話、モノクロ)を2日間でイッキに見た。原作が「太陽がいっぱい」と同じというので、つい比較してしまうが、全く別の映画だった。それなりに深みがあり面白い。

その違いは、カラーとモノクロ、音楽の有無、俳優の年齢差、全体のプロット構成などからきているようだ。

太陽がいっぱい」で主役のトム・リプリー(当時はイタリアでは「リプレイ」と発音されていたようだが…ラストシーンではテレビ洋画劇場などでは「リプレイさん、電話ですよ」だった記憶がある)は、アラン・ドロンの天下の二枚目ぶりが水も滴(したた)り、ニーノ・ロータの音楽が最高だった。

リプリー」のトムを演じたアンドリュー・スコットはどうか。ドロンがトムを演じたときは24歳。スコットは46歳と親子ほど違うので、無理はないが、額が広くヘアスタイルなどは、成田三樹夫に近い(笑)。

 

太陽がいっぱい」では、フィリップ(モーリス・ロネ)に嫉妬したトムが、なんとかマルジュ(マリー・ラフォレ)の気を引こうとするが「リプリー」では、マージ(ダコタ・ファニング)は、初めてトムにあった時から、トムに対して信用ならない人物として、徹底して距離を置き嫌うのだ。

太陽がいっぱい」は「猿の惑星」のような映画史に残るようなどんでん返しだったがリプリー」のラストには触れないでおく(笑)。

全く別物としてみると、1960年当時のイタリアの建築物の造形美、様式美、絵画、特に様々なキリスト教に関わると思われる彫刻が登場し見どころはある。

その彫刻が、登場人物たちを見ているように描かれているが、もともとの彫刻の意味、背景がわからないので、単なる背景として素通りしてしまうのだが…。

新聞スタンドで、トムが「事件」がニュースになっていないか、たびたび新聞をまとめ買いする。その時に、スタンドに並んでいる雑誌の表紙にソフィア・ローレンが掲載されている。60年以上も女優を続けている、まさに生きたレジェンドの一人だ。

  

 

また、アパートのレコードでかけられるのはMINA(ミーナ)の音楽だった。のちにヒットした「太陽はひとりぼっち」のボーカルだ。

 

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時は1960年代。職業も住所も経歴もわからない謎の男、トム・リプリーアンドリュー・スコット)。「職業は?」と聞かれた時に、経理関係、元・会計に関わっていたなどとお茶を濁している。

そんなトムの実態は、ニューヨークの片隅で、身分証明書や公証人刻印、信用状の偽造等で日銭を稼いでいる小悪党だ。

そんなトムの前に探偵が現れて「トムだね。探していた」という。ある依頼人から「大きな報酬の仕事」があるから来てほしいというものだった。

その依頼主というのが、造船会社を経営する富豪のハーバート・グリーンリーフという初老の男だった。息子ディッキー(本名はリチャード・グリーンリーフ(R.G.)、ジョニー・フリン)が画家を目指すとイタリアのリゾート地「アトラーニ」に行ったこきり戻らず、音信も途絶えがちだという。造船の後継者にしたいという目的があり、イタリアに行って、連れ戻してほしいというのだ。

トムに目が向けられたのは、ディッキーの友人たちに打診したところすべて断れてしまったといういきさつが何気なくわかり、ディッキーと顔見知り程度のトムに役目が回ってきたようだ。

旅費などの経費のほか報酬は弾むという。小銭(日銭)稼ぎで汲々としているトムは、二つ返事で引き受けることにした。

初めて乗るオリエント急行、贅沢な食事、アマルフィの海辺のリゾート地に心躍らせるが、ディッキーに、あるパーティで会ったことがあると伝えてもディッキーはほとんどトムを覚えていなかった。

トムから見ると、ディッキーは、画才もないくせに画家を自称し、作家を目指す美女マージ(ダコタ・ファニング)を恋人にし「慈善行為」とうそぶいて詐欺師の女に大金を巻き上げられてしまうような放蕩息子の典型だった。

彼の邸宅に居候するようになったリプリーは、特権階級の豪奢な生活を何の努力もせずに享受しているディッキーに対して次第に侮蔑と憎悪の感情を募らせていく。

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監督のティーブン・ザイリアンの脚色は、細部まで計算した物語を描き、特に、小道具など、繰り返し見せて、観客にハラハラさせるシーンを演出している。

小道具としては、トムがディッキーに成りすまして、ホテルに宿泊するが、ベッドの下に隠したスーツケースの「R.G.」(リチャード・グリーンリーフの頭文字)を何度も映像で見せる。いつ発見されてしまうのかと見る側はハラハラする。

パスポートも「トム・リプリー」と「リチャード・グリーンリーフ」と複数を持っていてホテルなどでは使い分けているのだが、いつ発覚するか…など。

第1話の最初の1分間のシーンの後、「半年前」のシーンとなり、第5話で初めてつながっていく構成になっていく。ディッキーの友人フレディ・マイルズ(エリオット・サムナー)は、洞察力が鋭く、トムが履いている高級なフェラガモの革靴ロレックスの腕時計などがディッキーのものと見抜き「ディッキーをどうやって殺した」と直球で攻めてくるのだ。

トムが帰ってくれというと、フレディは「いったん引き上げるが、警察官を連れて帰ってくる」と帰ろうとするのだが…。

 

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イタリアの光景も、醸し出す雰囲気に合わせて単調な色調となっている。映像美と複雑な筋立てで魅了する。黒と白の美学は、物語のために視覚的に印象的な背景を作り出している。

小道具がうまく使われてる。

 

 

 

イタリアでしか売られていない高給な靴、事件を見ているルーチョという名のアパートの猫、エレベーター、灰皿、時計、マフラー、カメラ、高級万年筆、ピカソの絵、ネズミ捕り機械、マージの新刊本、ナイフ、そして古い手動式タイプライター(使い古して「e」の小文字がずれる)など。

期待が大きすぎると肩透かしとなりそうだが、主人公トムの心理描写、何を考えているかわからないような負のスパイラルに陥って追い詰められていく心理的圧迫感、警察の本部長の厳しい捜査、追及する姿は、日本の捜査一課並みに鋭くうまく描かれている。

 

     

 「アイ・アム・サム」(2001)の子役も今や30歳のダコタ・ファニング

偽造パスポートなどの調達屋としてジョン・マルコヴィッチも出演している。

 

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