「夜が明けるまで」(原題:Our Souls at Night,2017)を見た。監督は、リテーシュ・バトラ、主演は、ロバート・レッドフォードとジェーン・フォンダ。原作は、ケント・ハルフが2015年に発表した小説「Our Souls at Night」。通俗的には”老いらくの恋”だが、レッドフォードとフォンダという大スターの共演で、共感できる作品になっている。ありえないが、こんな老後は理想?(笑)。
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妻を亡くしてからというもの、ルイス・ウォーターズ(ロバート・レッドフォード)は、一人で食事の支度をして、テレビを付けっぱなしにして、新聞のクロスワードパズルをするなど、孤独な生活を送っていた。
ある日の晩、隣の家に住むエディー・ムーア(ジェーン・フォンダ)が彼を訪ねてきた。エディーもまた未亡人であり、孤独に耐えながらも懸命に生きていた。昔から顔見知りではあったが、それほど親しくはない間柄だった。
エディーが神妙な顔で提案があるというのだ。ルイスが、なんだろうと思い聞いてみると、エディーは「夜が怖い。家に来て、話をして一緒に寝てくれないか」という唐突な申し出だった。ルイスが一瞬怪訝な表情をすると、「セックスはしない。とうに関心もないし」というのだった。ルイスは、少し考えさせて欲しい。あとで電話する」と言って別れた。
翌日、ルイスがエディーに電話をする。「あのことだが、いつがいい?明日の夜は」ということで話がまとまる。
翌日、ルイスは寝巻きなど一式を持って、エディーの家の裏口から入っていく。あまり話し上手ではないルイスガ黙っていると「なんでもいいから話して」というエディー。何から話していいか分からず「天候の話」からはじめると「天候から?」と呆れられる。添い寝して、翌朝、ルイスは向かいの自分の家に帰っていく。
翌日もエディーの家の裏口からドアをノックするルイス。エディーは「パジャマを持ち帰ったので、もう来ないのかと思った。寝巻きは置いていってもいいのに」という。「いつも裏口からだが、次回は正面の入口から来て欲しい。それとも次回はない?」というエディー。
3回目も裏口から入ろうとすると、なかにいたエディーがカーテンを閉めてしまい、仕方なく表玄関にまわり入っていくルイス。
その関係はプラトニックなものではあったが、ルイスが、高齢者仲間の集まるコーヒーショップに行くと、早速、噂が広まっていた。仲間の一人が、ルイスに「最近元気のようだが、腰は痛くならないか」と冷やかす。ルイスは、自分が噂話の肴にされてからかわれているので、失礼すると言って、その場を後にする。
ルイスは、エディーに、既に”噂の二人”になっているということを告げると、「馬鹿な考えだった?」というとルイスは「好転するかも」だった。エディーの女友達も、2人の関係を詮索してきた。「そんな関係じゃない」と否定するエディー。女友達は「 何をグズグズしているのよ( What are you waiting for?)」とけしかけてくるのだ。
2人のとった次の行動は、誤解を打ち消す方法を話し合うために、ルイスの提案で、街中のレストランでランチしようというものだった。ふたりの知り合いたちの何人にも、二人が食事して、腕を組んで歩いているところを見られた。ルイスとエディーは”噂の二人”ではなくなった、と気が楽になった。
そんな中、エディーの息子ジーンが、妻と折り合いが悪く、別居して家に戻らない状況のようで、ジーンの息子のジェイミーをしばらく預かって欲しいと言ってきた。
エディーは、ジェイミーの育児に悪戦苦闘し、半ばノイローゼ状態に陥った。その様子を見かねたルイスは子守を引き受け、ジェイミーと一緒に鉄道の模型などで遊んであげるとジェイミーは喜んで、ルイスにも親近感を覚えていった。
しかし、こうしたルイスとエディーの関係を知ったジーンはすぐさまジェイミーを引き取りに来た。傷心のルイスは、エディーに、一緒に数日感旅行をしようと提案し、「いい考えだ」と旅に出た。2人は旅先のホテルで、一緒にダンスを踊り、楽しい時を過ごした。そして、エディーは、部屋に戻ると、迷いはなかった。ルイスも「その時が来た」と”一線”を越えることとなった。
そんな愛を育む2人だったが、別れの刻は突然やって来た。エディーの息子ジーンが、エディーを呼び寄せ一緒に暮らそうと言ってきたのだった。ジェイミーは、エディーやルイスと離れたくないと最初は言っていたが、何日か前に家にやってきた愛犬とエディーとともに去っていくことになった。
その後、電話で様子を話し合うことになる二人だが、エディーが「何の話をする?」というと「天候の話から」という洒落たエンディングだった。
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細部にわたってセリフや脚本がいい。
例えばルイスとエディーが旅行でホテルに到着。フロントでルイス・ウォーターズと名乗ると「お待ちしておりました。ウォーターズ様。奥様も」というと、エディーが(夫婦のように振るまおうと)ルイスと腕を組む。すると、フロントの男は、一瞬ニコッとする(ワケありカップルだな、と思ってか。笑)。
ジェイミーが、模型の列車で楽しんでいたので、ルイスは「模型列車」をジェイミーに送ったのだ。これにはエディーもルイスの気配りに喜んだ。
ロバート・レッドフォードは、ジェーン・フォンダと「裸足で散歩」(1967)で新婚夫婦役で共演している。撮影当時(1966年)レッドフォード30歳、フォンダ29歳。
レッドフォード(30歳)、フォンダ(29歳)
「夜が明けるまで」(2017)撮影当時は、ともに80歳ということになる。あの美男美女も、50年の歳月の長さを感じさせる。ジェーン・フォンダは「バーバレラ」(1968)「ひとりぼっちの青春」(1969)「コールガール」(1971、アカデミー賞主演女優賞)と外見の変化は仕方がないが、映画の中でルイス(レッドフォード)が「我々のようなヨボヨボが・・・」とうと「ヨボヨボ?」と反発するように言うエディ(ジェーン・フォンダ)は、相変わらず姿勢も良くスタイルがいい。一時期「ジェーン・フォンダのワークアウト」というエアロビクスでも有名だったように身体を鍛えている。
どちらも80歳(撮影時)
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