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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「あゝ、荒野」(前編、2017)。

 
 
あゝ、荒野」(前編、2017)を見た。
映画は昨年10月7日(前編)と10月21日(後編)に2回に分けて公開された。
 
寺山修司が遺した唯一の長編小説あゝ、荒野」{1966)を、菅田将暉「息もできない」の韓国俳優ヤン・イクチュンのダブル主演で実写映画化した2部作。メガホンをとったのは二重生活岸善幸監督。
 
「前・後編」合わせて4時間以上という映画なので、気後れしていたが、ようやく「前編」だけ見た。
 
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2021年の新宿(原作は1960年代の新宿)
かつて親に捨てられた新次は、兄貴分の劉輝を半身不随にした元仲間・裕二への復讐を誓っていた。新次はある日、街でティッシュ配りをしていた吃音で赤面対人恐怖症の「バリカン」こと健二と一緒に、「片目」こと堀口からボクシングジムへ誘われる。
 
新次は復讐を果たすため、バリカンは内気な自分を変えるため、それぞれの思いを胸にトレーニングに励む。徐々に名を挙げていく新次に対し、バリカンは特別な感情を抱くようになっていく。そんななか、新次はついに裕二との戦いに臨むことに・・・もがきながらもボクサーとしての道を進んでいく2人と、彼らを取り巻くわけありな人々の人間模様がまるでドキュメンタリーのように描かれていく
 
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原作者の寺山修司いえば、劇団「天井桟敷」の創設者として有名。
職業をきかれれば「寺山修司」と答えたというほどで、多才・マルチだけでは表現できない分野で活躍。詩人、俳人歌人、作詞家、劇作家、演出家、映画監督、スポーツ評論家、政治評論家、エッセイスト、雑誌編集者、写真家、ゲームプランナーなどだ。
 
既成概念や固定観念に勝負を挑み、社会規範や権力に抗いつづけた反骨精神のシンボルともいわれた。現代においてなおも注目を集める存在書を捨てよ、町へ出よう」は1971年に独立系ミニシアター、ATG(アートシアターギルド)で公開された。
 
50年前の1966年に著された長編小説を見事に映像化した「あゝ、荒野」は、これまでの青春映画の定義を変えるほどのインパクトがある。
 
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2021年新宿」。
ラーメン屋に入ってきた一人の若者・新次菅田将暉
ラーメンを注文すると、外で爆破事件が起きる。客などは外へ出て騒然とする中、新次は、他人が注文した大盛りのラーメンを食べる。新次がのらりくらりと通りを歩き出すと、顔見知りの男から「お勤めお疲れ様でした」と声をかけられる。
 
茶店の中で、新次は「じいさん・ばあさんの300人くらいの名簿ない?すぐかかるから」というと、向かいに座った男が、「もう新次くんには戻って欲しくない。逆戻りするよ」。男が新次に、札束の入った封筒を渡そうとするが、それを受け取らず、店を出ていく・・・。
 
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新次少年院から出てきたばかりの不良であることが明らかになっていく。
その行動は直情的で暴力的だが、一方で素直さや純真さも見せる。
 
新次が出会うことになる、もう1人の主人公を演じたヤン・イクチュン監督・製作・脚本・編集・主演と1人5役を務めた息もできないキネマ旬報ベスト・テン外国映画ベスト・テン第1位のほか数多くの賞を受賞した俳優。
 
ヤン・イクチュン演じる健二菅田将暉とまったくの正反対の役柄で、吃音に悩み、赤面対人恐怖症で、父に暴力で支配され続けているという内向的なキャラクター
 
 
父親が自殺し、母親に去られた過去を持つ新次と、韓国人の母と日本人の父との間に生まれた健二は、両親が離婚し、暴力を振るう父とともに、日本にやってきたのだった。床屋で働いていて”バリカン”健二と呼ばれる。性格が内向きでなおかつ吃音のため、コミュニケーションで苦労する。
 
 
 
 
粗野な美青年と、不器用なおじさんという関係性で、共にボクシングに目覚めていく。プロボクサーとなり、新次は初戦を勝利するが、健二はいいところろなく敗戦。この二人が、ボクシングで戦うことになるという暗示で前編が終わる。
 
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映画は過激な描写があり、映倫は「R-15」指定とした(かろうじて「R-18」は免れたという意見もある)。
 

この映画に登場する
芳子」を演じる木下あかりという女優は全く知らなかったが、新次との濡れ場シーンは大胆そのもの。
 
木下あかりと菅田将暉は、「はじめまして」と撮影のあいさつをした3分後には、濡れ場シーンを演じたというから、全く見ず知らずの、行きずりのような関係だったという。それが逆に映画にリアリティを与えたようだ。映画の撮影が進行するにつれて、情が高まっていく雰囲気がドキュメンタリー風とも言われる所以か。
 
木下あかりが、たとえば長澤まさみのように整った美人であると、芝居をしている感があるが、そうでないので(失礼)、むしろ安藤玉恵江口のりこのようなタイプだったのが”尻軽女”の生々しさを感じさせる。
 
「自殺抑止研究会」なるイベントで、自殺願望者する人々を呼び、一般大衆の前で首吊り実験をさせ、最後の言葉を引き出そうという試みは狂っている。この会の会長の名前が、1970年代前後にテレビで活躍した俳優で軽妙な司会者でもあった川崎敬三という名前だった。いろいろな意味で、問題を投げかける映画だった。「後編」も見なくては。
 
■主な登場人物:
沢村新次(新宿新次):菅田将暉・・・父は自殺。10歳で母親に捨てられる。
二木建二(バリカン健二):ヤン・イクチュン・・・韓国人母は家出。日本人父は暴力。
芳子:木下あかり・・・食堂に勤めるが、尻軽女。
片目(堀口):ユースケ・サンタマリア・・・ボクシングジムのトレーナー。
馬場:でんでん・・・ボクシングジムの新規トレーナー。
二木建夫:モロ師岡・・・建二の父で、元自衛官。自殺願望あり、ホームレス生活。
君塚京子:木村多江・・・新次を捨てた母親。
宮木太一 : 高橋和也・・・ボクシングジムなど経営者。
山本裕二 : 山田裕貴
劉輝 : 小林且弥
二代目(石井) : 川口覚
川崎敬三(自殺抑止研究会会長)  : 前原滉・・・自殺を食い止めると言いながら、
  イベントにする狂気の持ち主。
恵子 : 今野杏南
福島 : 山中崇
マコト : 萩原利久
為永猛 : 松浦慎一郎
まり(為永の妹) : 山田杏奈
オルフェ(バー楕円のマスター) : 鈴木卓爾
曽根セツ(芳子の母親):河井青葉
神山(新次の対戦相手):大内田悠平
檜垣(新次の昔の仲間):井之脇海
真熊:山本浩司
ほか。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
予告編(一部)
 
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