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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「影の軍隊」(1969)

 
 
フィルム・ノワールの名匠ジャンピエール・メルヴィル監督の「影の軍隊」(原題:
L' ARMEE DES OMBRES、英題:Army in the Shadows, 1969、日本公開1971)は重々しい印象から見逃していたが、ようやく見ることができた。
 
メルヴィル自身の第二次大戦のレジスタンス活動を反映した作品で、重厚な作品となっている。レジスタンス映画では5本の指に入るかもしれない。
 
影の軍隊」のタイトル通り、暗く重々しい雰囲気が続く。レジスタンス映画で、そこに描かれているのは「脱走」「逃亡」「密告」「拷問」や「処刑」といった生々しい場面が続く。決しておもしろいといえる映画ではないが、戦時中、こうした歴史があったということを知るだけでも価値がありそうだ。
 
そういえば、映画「Z」(1970)が一押しのfpdだが、「Z」は娯楽映画としても最高傑作だが、コスタ・ガヴラス監督の「Z」と3部作を成す「告白」「戒厳令」に至っては、目隠しをされ処刑されるシーンなど暗く重い映画で、これらを見た当時は、息苦しさを感じた。いまでは、様々な角度から第二次大戦のさなかのレジスタンスなどを描いた映画を見てきたので、こんなこともあったのかという好奇心が勝る。
 
独軍占領下のフランスで、第二次大戦中、悲劇的な抵抗運動に命をかけたレジスタンス闘士たちのエピソードをつづっている。ジョゼフ・ケッセルの原作を「ギャング」のジャン・ピエール・メルヴィルが脚色し自ら監督した。音楽はエリック・ド・マルサンが担当。
 
出演は「ベラクルスの男」のリノ・ヴァンチュラ、「ギャング」のポール・ムーリッス、悪魔のような女」のシモーヌ・シニョレジャン・ピエール・カッセル、クリスチャン・バルビエ、ポール・クローシェ、クロード・マン、アラン・リボールなど。
 
・・・
 
凱旋門の前を音楽隊を先頭に軍隊が行進する。
時は第二次大戦中のドイツ占領下のフランス。1942年10月、フィリップ・ジェルビエ(リノ・バンチュラ)は、独軍に逮捕され、収容所に入れられてしまった。ジェルビエは、ドゴール派の分子として要注意人物と目されていた。収容所には、様々な人種、ロシア人、ポーランド人、ユダヤ人、ジプシー、チェコ人、反ファシストたちがいた。
 
 
数ヵ月後、ジェルビエは、突然、ゲシュタポ本部へ連行されることになった。
だが、一瞬のすきをみて、そこを脱出した彼は、その後、抵抗運動に身を投じることとなった。
 
そうしたある日、彼はマルセイユに行き、フェリックス(ポール・クローシェ)、ル・ビゾン(クリスチャン・バルビエ)、ルマスク(クロード・マン)等と一緒に裏切り者の同志ドゥナ(アラン・リボール)の処刑に立ちあった。
 
 
その後に、彼は、ジャン・フランソワ(ジャン・ピエール・カッセル)に会った。
ジャンの仕事は、名高いパリの女闘士マチルダシモーニ・シニョレ)に、通信機をとどけることだった。彼はそのついでに、学者である兄のリュック・ジャルディ(ポール・ムーリッス)を訪ねたが、芸術家肌の兄を心よくは思わなかった。一方、新任務のためリヨンに潜入したジェルビエのところへやって来たのは、意外にもジャンの兄のジャルディだった。
 
やがて無事、その任務を果したジェルビエのところへフェリックス逮捕さる、の報が伝えられた。さっそく、救出作戦を展開したが、ジャンの犠牲も空しく、失敗に終ってしまった。
 
 
ジェルビエが再び逮捕されたのは、それから間もなくであった。
独軍の残虐な処刑に、もはや最後と思っていた彼を救ったのは、知略にすぐれたマチルダった。
 
それからしばらくたった頃、隠れ家で休養をとっていたジェルビエを、ジャルディが訪ねて来た。彼の来訪の目的はマチルドの逮捕されたことを告げるためと、口を割りそうなマチルダを、射殺するということだった。
 
現在、仮出所中のマチルダも、それを望んでいる、と彼は伝えた。
ある日、エトワール広場を一人歩く彼女に、弾丸をあびせたのは、マチルダを尊敬するジャルディ、ジェルビエ、ル・ビゾン、ルマスク等仲間たちだった。しかし、遅かれ早かれ、彼等の上にも、同じような運命が待ち受けているのだった。
 
 
そしてエンディング・・・
車に乗っていたレジスタンス活動家たちがその後どうなったか字幕で告げられる。

マスクは、1943年11月8日、青酸カリで自殺…。
ビスクは、1943年12月16日、ドイツ兵に打ち首にされる…。
ジャルディは、拷問の末、1944年1月22日に死亡…。

そして1944年2月13日、フィリップは走ることを放棄した…
 
・・・
リノ・ヴァンチュラは「冒険者たち」「シシリアン」などでも、どちらかと言えば主役を引き立てる脇役が多いが、「影の軍隊」では完全な主役で、もっとも印象に残る作品かもしれない。レジスタンス活動の厳しさを浮き彫りにしている。
 
たとえば、レジスタンスのアジトなどを(ドイツ軍に)密告したものは、容赦なく首を絞めて殺す、また青酸カリを持ち歩き、捕まったら飲むと徹底されていた。
 
チルダを演じるシモーニュ・シニョレの存在感が大きかった。変装も得意で、ドイツ語も流暢に操り、敵陣に看護師として堂々と乗り込んでいた。ただ、レジスタンスのアジトを言わなければ、娘をポーランドの売春宿におくると脅され、娘のために、レジスタンスの情報を流し、仲間に対しては自ら射殺を願っていたという非業の最後だった。マチルダによって銃殺から救われたレジスタンスの主要メンバーだったジェルビエも、マチルダの望み通りにマチルダを射殺した。
 
映画の中で、1942年当時のフランスで、レジスタンスらが映画「風と共に去りぬ」(1939)を見るシーンがある。「戦争がなければ、こんな映画も見られるのにな」という言葉が印象に残る。ちなみに、日本で「風と共に去りぬ」が初公開されたのは、製作から13年後で、戦後7年がたった1952年9月のことである。
 
 2時間25分の映画で、この映画を見るには、”多少の”覚悟と忍耐が必要かもしれない。
 
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