フランス映画「女猫」(原題:La Chatte、1958)を見た。タイトルの読みは”めすねこ”か。日本の同名映画(「女猫」1983)は「めねこ」と読ませるようだが。
フランソワーズ・アルヌールの魅力全開の映画。1950年代~60年代にフランスで絶大な人気を誇ったというのが頷ける。
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独軍はレジスタンス(抗独組織)の秘密通信を傍受して、組織の無線現場を急襲した。無線技師ジャンは逃げそこなって死んだ。妻のコーラ(フランソワーズ・アルヌール)は送信機を持って、隊長(ベルナール・ブリエ)のもとに逃げた。コーラは組織の一員として、レジスタンス運動に加わり、独軍の金庫からロケット設計図を盗むことに成功した。
コーラ(フランソワ・アルヌール)と隊長(ベルナール・ブーリエ)
コーラは酒場でスイスの新聞記者ベルナール(ベルナール・ヴィッキ)と知りあった。彼の正体は実は独軍将校で、休暇中の身であった。ベルナールはロシア戦線に出発する前日、従弟ミュラー大尉(クルト・マイゼル)を訪ねた。
ミュラーはベルナールから女(コーラ)の話を聞いて、「駅で調べたあの女だ!」と叫び、「男を誘うような唇だったろう」と、ベルナールの出発を中止させ、コーラと交際して組織に潜入せよと命令した。「スパイはご免だ」と断るベルナールだったが、ミュラーは、組織のアジト、名前などがわかれば、女は自由にしてやるというのでしぶしぶ引き受けることにした。
二人は恋しあうようになり、ミュラーはなんとかしてコーラを組織から出させようと努力した。ロケットの設計図を英国飛行機が取りに来ることになった。ベルナールはミュラーに連絡したが、隊長の機転で仲間は独軍の包囲から逃れた。
裏切者は誰か。隊長はベルナールの正体をあばき、コーラに彼を殺せと命じた。
が、コーラには出来なかった。ミュラーはベルナールに、組織の人々の名前を知らせるならコーラを逃すといった。ベルナールはコーラにスイスにいって結婚しようといった。そこにミュラーが来て、コーラを逮捕した。彼女は白状しなかった。
隊長を除く組織の人々は捕り、コーラは釈放された。組織の人間はみな、コーラが裏切ったと思いコーラを見据えた。コーラは憔悴して司令部を出た。
すると、一台の自動車がコーラを待っていた。中には隊長が乗っていた。車は彼女のそばを通り、機関銃が火を吐いた。コーラは道路上に倒れ、やがて動かなくなった。コーラは裏切り者の汚名を着せられて息絶えたのだった。
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この映画の冒頭のテロップで「制作者より」として「第二次大戦下のフランスでナチスの支配に反対してレジスタンスが起こった。この作品の”女猫”(La Chatte)のように女性闘志も数多く存在した。歴史上の事件として映画化したが、実際の裁判記録とは異なる。登場人物と物語は創作であり、現実とは一切無関係である」という言葉がある。が、史実にヒントを得て作られたことは明らかで、見ごたえがあった。
駅の検問で、怪しい人物を検査していた男・ミュラー大尉は、女(コーラ)を呼び止め、ガータに隠した通信機までは見なかったが、いかにもいやらしさのあるしぐさで、後ろから上半身をさわり、開放。そのあとで「身体検査もできるぞ。裸にしてな」とひとりつぶやく。
その後、コーラは捕えられて、再びミュラーは、コーラに仲間の名前とアジトを言うように促され「ストッキングを脱げ。裸足で歩け」などと命令。このあたりのミュラーも執拗だ。「人前ではだしで歩くのは恥ずかしいだろう」ともてあそぶような口ぶりで、ねちっこい。
フランソワーズ・アルヌールといえばジャン・ギャバン主演の「ヘッドライト」(原題:Des gens sans importance、1955)を思い起こす。フランス語タイトルの”Des Gens Sans Importance”は”重要性のない人間たち(無名の人々)”。
日本では、中高年世代にとって映画のテーマ曲同様に最も感涙にむせぶアルヌールの映画と言われている。ジャン・ギャバンが演じるパリとボルドー間を走るしがない初老の長距離トラック運転手と、フランソワーズ・アルヌールが演じるパリに憧れる居酒屋(ドライブカフェ)の若いウエイトレスの超悲恋物語。貧しさが生む悲劇だった。身籠ったクロティルドを演じたフランソワーズ・アルヌールのビニールのレインコートなどが印象的だった。
■「ヘッドライト」の記事:http://blogs.yahoo.co.jp/fpdxw092/62657254.html
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