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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「バージニア・ウルフなんかこわくない」(1966)エリザベス・テイラーが2度目のアカデミー賞受賞。

 
「卒業」のマイク・ニコルズ監督デビュー作「バージニア・ウルフなんかこわくない」(原題:Who's Afraid of Virginia Woolf?、1966)を見た。2組の夫婦4人しか登場しない、凄まじい愛と憎悪の物語。
 
まさに舞台劇そのもの。激しい罵(ののし)り合い、あてこすりの言葉の応酬。
人間の奥底の邪悪な感情が洗いざらいさらけ出され、憎悪、嘲笑と皮肉が激突する。なんといってもエリザベス・テイラーの演技に引き込まれる。この映画で二度目のオスカー(アカデミー賞主演女優賞)をもたらしたが、テイラーが尊敬し意識したというヴィヴィアン・リー(「欲望という名の電車」:アカデミー賞主演女優賞)の悲劇のヒロインに負けたくないという願望もあったようだ。それに勝るとも劣らない迫力だった。
 
 
 
下品な言葉も機関銃のように登場するが、中でも、卑猥な4文字言葉「Fxxk」という言葉が初めて映画に登場したという”記念碑的”作品でもある。マイク・ニコルズ監督のその後の作品、たとえば「卒業」「愛の狩人」「クローサー」などを見ると、一見善良そうな知識人の化けの皮を剥がすような映画が多いと思った。
 
バージニア・ウルフなんか~」は、元々エドワード・アルビーの舞台劇で「ウエスト・サイド物語」のアーネスト・リーマンが脚色と製作を担当。音楽は「クレオパトラ」(1963)のアレックス・ノースが担当。
 
出演は「いそしぎ」のコンビ、エリザベス・テイラーリチャード・バートン、「愚か者の船」のジョージ・シーガル、ニューヨーク劇壇の新進サンディ・デニスの4人。
 
アカデミー賞では、主演女優賞(E・テイラー)助演女優賞(S・デニス)撮影賞(白黒)美術賞(白黒)衣裳デザイン賞(白黒)など5部門で受賞。ほかに作品賞、監督・主演男優・助演男優など計13部門でノミネートされていた。テイラーとバートンは「クレオパトラ」「いそしぎ」など11作品で共演。「バージニア~」当時は、実生活では夫婦だった(1964~74、75~76)。
 
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現代(1960年代はじめ)のアメリカ。ニューイングランドの小さな大学の構内に建てられた住宅。土曜日の深夜その大学の教授夫妻ジョージ(リチャード・バートン)とマーサ(エリザベス・テイラー)がパーティで飲みつかれて帰ってきた。
 
2人とも、もう中年の終わり。結婚生活23年目で、マーサの肌は、アルコール中毒と睡眠不足ですっかり荒れていたが夫を尻にしくことだけは、結婚当初と変わらなかった。
 
マーサの父はこの大学の総長であり、1人娘の結婚相手は、総長の後継者としての椅子が約束されていた。2人が結婚した当時は歴史学に情熱を燃やすジョージにマーサはひどく惹かれた。
 
しかし、それも2、3年のことで、それ以後は、2人とも相手の恥部をえぐり、皮肉や軽蔑で応酬し合うという、血みどろな果たし合いのような夫婦生活が続いていた。
 
 
 
2人がパーティから帰ってほどなく若い夫婦の訪問客があった。この大学の、生物学教師ニック(ジョージ・シーガル)と妻のハニー(サンディ・デニス)だった。
 
ニックは体格のいいハンサムな青年だが、ハニーの方は貧相で不器量。
2人が結婚したのは、ハニーの父親の財産にニックが目をつけたからだ。酔いにまかせてニックは告白した。
 
 
ジョージは最初から、この青年が気にくわなかった。体格的にジェラシーを抱いていたのだろう。一方マーサはニックに露骨な興味を示し、寝室に誘ったがジョージは見て見ぬふり、酔いにまかせて、ベッドでマーサのお相手をするニックの目的が、総長にとりいるためであることは言うまでもない。
 
結果は悲惨だった。寝室から出てきたマーサは、自分が本当に愛しているのはジョージしかいないと知りながらも、口から出るのは、サディスティックな言葉ばかり。それを受けるジョージの口からも憎悪の言葉が・・・。やがてニックがハニーの手をとって現れた。ハニーは酔いでバス・ルームに倒れていたのだ。
 
そしてハニーは、ジョージとマーサの1人息子で、21歳になるジムのことを聞きたがった。息子のことは決して話さないという約束の夫婦だったが、マーサがしゃべりだした。まるで自分1人の子供のように。その時ジョージが言いだした、ジムは昨日交通事故で死んだと。マーサが泣きくずれたのをきっかけに、若い訪問客は帰っていった。だが息子は本当に死んだのだろうか・・・。いや最初からいなかったのだろう。
 
希望のない泥沼のような生活の中で、2人が作りあげた偶像だったのだろう。その偶像をジョージが今、自分の手でしめ殺したのだ。いつしか2人は寄りそい、やがて静かな声でジョージが歌い始めた。「バージニア・ウルフなんかこわくない、オオカミなんかこわくない」と。けれどマーサには、こわかった。恐ろしいような沈黙の中で、2人はいつまでも動かなかった(MovieWalker)。
 
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映画は導入部から、ジョージとマーサの夫婦の険悪ムードが漂っていた。
おそらく、喧嘩、口論は日常茶飯事なのだろうことはすぐにわかる。マーサが問いかけて来る言葉に、またかといったそっけない素振りを見せるジョージ。
 
マーサは、家に戻るなり、「ひどい家!」と話すのだが、「この”このひどい家!”というセリフは、ベティ・デイヴィスが言うセリフだけど、なんという映画か知らない?」というものだった。「知らない」とジョージが答えると、「共演がジョセフ・コットンで・・・」と食い下がる、といった他愛もないことだったが、マーサの次の何気ない一言で、状況が一変する。(fpd注:この映画は「ふるえて眠れ」(原題:Hush...Hush, Sweet Charlotte, 1964)だった)。
 
夜中の1時過ぎというのに、「これから客が来る」というのだった。
「こんな時間にまさか」と戸惑うジョージは「日曜にすればいいのに」というが、「もう、日曜(の夜明け)だ」というマーサは、散らかった衣類などをベッドの下に見えないように隠したり、表面だけ綺麗に取り繕うところもすごい。
 
客というのが、パーティ会場で会話を交わした同じ大学教師とその妻だというのだが、この若い教師と妻の関係も暴かれていくプロセスが面白かった。
 
 
 
妻マーサが、自分たちの隠していることをベラベラと客(ニック)に話していることに怒りがこみ上げてくるジョージは、ライフル銃を手に取り、マーサに狙いを付けるというシーンは、緊張感が高まるが・・・。あっと驚く事態が待っていた。
 
結婚生活の崩壊を描いた作品では、「ローズ家の戦争」も激しい殺意に満ちた攻防戦があったが「バージニア・ウルフ~」では、かなり争ったあとで、マーサは「本番はこれからよ!」(I'm just beginning!) というと、ジョージは「全面戦争か?」(Total?)。これにマーサは「Total!」と答えるのだった。そして、”客をいびる”ゲームが続いた。
 
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映画のタイトルのヴァージニア・ウルフというのは、イギリスの有名な女性作家だが、映画とは全く関係はない。ディズニーの「三匹の子ぶた」劇中歌「狼なんかこわくない」(Who's Afraid of the Big Bad Wolf?)のウルフ・狼に掛けて英国の小説家ヴァージニア・ウルフに置き換えたもので、劇中に駄洒落として登場し、節をつけて歌われるシーンがある。
 
この映画を見て、「結○なんてこわくない」と言えるだろうか。
否、こわすぎる(笑)。□□先に立たず。
 
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