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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「箱入り息子の恋」(2013)</span>

 

 
箱入り息子の恋」のヒロインがポスター写真のルックスからし吉高由里子かなと勘違いして見た作品だった(笑)。
 
市役所に務める見るからにさえない風貌の健太郎星野源)は、これまでの35年の人生で一度も女性と付き合った経験がなかった。実家暮らしで、昼になると、家に帰り昼食。
 
趣味といえば貯金とTVゲーム、友達づきあいもないという健太郎のために、父(平泉成)と母(森山良子)は親同士が子どもに代わって相手と合う「代理見合い」に出席する。両親が、子供の身上書を持って、テーブルで待ち、相手探しをするというのも驚きだ。
 
一方健太郎は、雨宿りをしていた盲目の女性・菜穂子(夏帆)に出会うのだが・・・

・・・
35歳のイケていない男が、はじめて恋をした盲目の女性のために奮闘するといストーリー。近所のおばさんが、嫁さん候補に持ってくるのは「バツ5だけど、4人の子供を立派に育てた」といったもの(笑)。
 
父親(平泉成)が「結婚はしない」という息子に「お前は、あれなのか。ホモなのか」と聞くシーンがある。「ホモじゃない」と答えると、母親(森山良子)が「隠さなくていいんだよ」というのが笑わせる。

星野源が演じる、不器用で挙動不審な主人公は、ダサい(ダさいたまは古い!)。
夏帆演じる盲目の女性は台詞が少ないが、表情や仕草で雄弁にその心情を語りかけている。
 
役所勤めの主人公は、筆記用具をきちんとそろえ、鉛筆は、いつも鉛筆削りで削っておく超が付くほどの几帳面さ。食事の前には、石鹸で何度も執拗なほどに手を洗う潔癖性。

仕事は記録係という、決まりきった仕事しかせず、出世には無関心。
休日は家でゲーム三昧。予定外のことには、対応ができない主人公が恋をして、全力投球することになるのだが・・・。


 
菜穂子の父・今井(大杉漣)は、お見合いの席で健太郎に「13年も昇進できないのか?」などとなじる。身障者の世話をしたことがあるのか。周りにいなかったのか、などと矢継ぎ早に非難めいた口調で。
 
これにはさすがに、健太郎の母もカチンときて「何も知らないでなんなんですか!」と怒り、帰ろうとするが、健太郎はここで自分の意志を伝えるのだった。
 
「菜穂子さん、あなたはどう思っているんですか」・・・と。
これに菜穂子は「私は気の合う方であれば・・・障害とどうつきあうかは、その後かな」と。

「今井さん(菜穂子の父)は、菜穂子さんの気持ちを否定しているのではないでしょうか。同情をしてほしいということでしょうか。僕は障害を持っていませんが、欠点なら山ほどあります。人の目を見て話すことができません。今井さんは人に面と向かって笑われたことがありますか。こちらのことを知らないくせに、変な人だと言われたことはありますか。見た目や就職先などで、人は値踏みをされてしまいます。そういうランク付けをするのは目が見えている人だけです。ただ、お嬢さん(菜穂子)はそんなことしません。今井さんと菜穂子さんは、見ているものが違うのではないでしょうか」ときっぱり。

この台詞には健太郎の価値観、長年連れ添った父よりも菜穂子のことが「見えて」いること、そして健太郎がどういう想いで人生を送ってきたか―それが全てがわかる。

会社の同僚女子が、菜穂子に会えなくなった健太郎に「バカだなあおまえは、彼女に本当の気持ちを聞いてもいないんだろ?もっとブザマでいいじゃん。私はあきらめないからね」。

最後に妻とゲームをしている健太郎の父が、たびたび家に出没する近所のおばさんに「やったこともないのに決めつけてはいけませんよ」と言うのも、テーマを如実に表したものだ。

健太郎は、菜穂子と別れても、職場で手が付かず、キレて大声でわめくと全員が驚き健太郎を見る。健太郎は、上司に向かって「僕はこれまで一度も休んだこともなく、まじめに働いてきました。でもどうしてもはずせない用事ができたので、早退させてください!」というのだ。上司も、その気迫に「おぅ、全然いいよ、いい」と認めるしかない。
 

・・・
菜穂子は、かつて健太郎と初めて食べにきた吉野家牛丼を一人で食べに来るシーンは泣かせる。たまたま、後ろからついてきた健太郎は、気づかれないように、真向かいに座るのだが、菜穂子は、牛丼を食べながら涙ぐむシーンだ。
 
牛丼を食べるシーンで泣かされたのは初めてだ!(笑)。
 
菜穂子は、以前、健太郎に教えられたように紅ショウガを牛丼に入れ、泣きながら牛丼を食べているのを見て、健太郎はついに「菜穂子さん!」と大声で叫ぶのだった。周りの客は驚くだろう。
 
健太郎の趣味の一つがカエルの飼育。部屋の水槽の中にいるカエルは、健太郎の分身とも言える存在だ。お互いに、その姿を見つめていた。

最後に健太郎は得意のカエルの鳴き声の真似をして、菜穂子の家の窓によじ登ろうとする。そのカエルの声に菜穂子が気づき近寄って手をのばし、健太郎の手を握るシーンもいい。
 
最後に、菜穂子は再び満身創痍となった健太郎からもらった手紙を読む。
それは点字で書かれているもので、観客にとっては何が書かれているかはわからない。
 
ただ、彼女は点字をなぞりながら、楽しそうに笑っていた。
菜穂子の顔からは笑顔が消え、すこしこわばったような表情になっり、映画は幕を閉じる。

中盤に健太郎が「好きです」と告白したときも、菜穂子はこわばったような表情をしてから笑ったことがあった。
 
菜穂子はこのとき「ことばにしてくれてうれしい、私は表情やしぐさを目で見ることができないから」と言っていた。

おそらく、最後の手紙には健太郎が「気持ちをことばにした」文章が書かれていたものだろう。
「好きです」と同じくらい、顔がこわばってしまうが、菜穂子にとってうれしくて仕方のないことば、たぶん「結婚しよう」だったのかもしれない。
 
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笑って泣ける映画をしばらくぶりに見た!
 
息子を少しでも理解しようと思って、両親が格闘テレビ・ゲームに熱中するシーンも笑わせる。森山良子も、なかなかうまい。
 
映画は吉野家が全面的に協力をしているようだ。
”つゆだく”&紅ショウガたっぷりの牛丼が食べたくなる。
 
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