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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「茜色に焼かれる」(2021)を見る。尾野真千子の圧倒的な存在感。

茜色に焼かれる」(2021)を見る。監督は石井裕也、主演は4年ぶりの実写映画単独主演作となる尾野真千子尾野真千子の気丈さ、強さがにじみ出た映画。その年の様々な賞(主演女優賞)を獲得したのもうなずける。

息子の純平役の和田庵も、映画では13歳の多感な少年を見事に演じている。


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田中良子尾野真千子)は小さなカフェを一人で切り盛りしながら、中学生になる13歳の一人息子の純平(和田庵)を女手ひとつで育ててきた。

しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響は容赦なく良子に襲いかかり、良子はカフェを畳まざるを得なくなった。現在では良子はホームセンター内の花屋のバイトと風俗嬢の仕事を掛け持ちしていた。

良子の夫・陽一(オダギリジョー)は、7年前に、元政府高官の高齢者・有島が運転する車に撥ねられて死亡していた。ブレーキとアクセルの踏み間違えによるものだった。

しかし、有島はアルツハイマーを患っていたことを理由に罪に問われず、有島側は一応賠償金を用意したが、良子は彼らから謝罪の言葉が一言もないことを理由に受け取りを拒否し続けてきた。

良子は純平との二人分の生活費の他にも、養父の老人ホーム入居費、そして陽一が浮気相手に産ませた子供の養育費までも払っており、ただでさえ苦しい家計はさらに圧迫され続けていた。それでも良子は、口癖のように「まぁ、がんばりましょ」と自分自身に言い聞かせていた。

ある日、良子は陽一を轢き殺した有島が死んだことを知った。有島は陽一とは違い、天寿を全うしての大往生だった。

良子は有島の葬式に出ようとしたが、有島の葬式は陽一の葬式の時とは比べものにならないほど盛大なもだった。

良子は有島の息子・耕(鶴見辰吾)や顧問弁護士の成原(嶋田久作)によって冷たく追い払われた。純平はなぜ葬式に行ったのかと問うと、良子は自分でもわからないと言いつつあの日の事故の意味をずっと考えていると応えた。


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良子に降り注ぐ様々な困難に対して、前向きにとらえ、息子の不安の声に対しても「まぁ、がんばりましょ」というのが印象に残る。良子の友人のケイはさらに不幸の連続で、男運が悪いというのかDVのダメ男に苦しめられるがじっと耐える女を演じている。

良子の中学同級生という男の腐りきったクズぶりとにやけた態度にはイラつく。良子の職場の店長が、そのクズ男に鉄槌を下すシーンは、良子ならずとも、すっきりさせられるものがあった。

息子の担当教師に呼び出されたのが、息子に対する暴力についての学校側の説明かと思ったら「息子さんの成績のことです」だった。

成績が悪いのかとおもったら逆で、全国の模試でもトップクラスだという。
「特別な塾にでも通っているのか、どうやって勉強しているのか」と聞かれたのだった。「本を読むのだけは好きですね」と応える良子。

教師が、息子さんは「トップのトップを目指す」と言っていましたよ、という言葉に、あとでにやにやする良子のシーンがいい。

トップのトップを目指す」というのは交通事故死した夫の口癖であり、その言葉を息子が継承していたからだ。シングルマザー、母と子、経済、お金の問題など、なかなか興味深かった。

息子は頭がよく、いうことも鋭い。

かあちゃんはお芝居しているの」「たまにはね」「暗い顔をしていることもあるけど、あれもお芝居なの?

夫の愛人の子供への養育費○○円、義父の施設入居費○○円、食事代●●円、飲み代●●円、公営アパート家賃〇〇円…などの文字が出ていた。

 

【キャスト】
田中良子尾野真千子…夫・陽一を車に事故で亡くし、花屋のバイトと夜は風俗と掛け持ちで仕事。中学生の一人息子・純平と暮らしている。
田中純平:和田庵…良子の息子。読書家で、成績が優秀。学校でいじめにあっている。
■ケイ:片山友希…風俗店で働く良子の友だちで相談相手。同棲相手からDVを受けている。病気を患っている。
■田中陽一:オダギリジョー…良子の夫。高齢者の運転する車に轢かれて亡くなる。ロック・バンドのメンバーだった。
■中村:永瀬正敏…良子が働く風俗店の店長。良子の生活について心配している。
■熊木直樹:大塚ヒロタ…良子の中学の同級生。遊びのつもりで良子に迫るにやけたクズ男。
■教師:泉澤祐希…純平の中学の担当教師。
■ケイの彼氏:前田勝…同棲中のケイに暴力をふるう。
■店長:コージ・トクダ…規則を盾に、良子に冷たく対応する。
■有島耕:鶴見辰吾…アクセルとブレーキを踏み間違え陽一を死なせた高齢者の息子。
■成原:嶋田久作…有島の弁護士。

タイトルの「茜色(あかねいろ)」とは…茜の根からとった色素で染めた赤色で、やや暗い赤色のこと。 ·秋の代表的な色で、夕暮れや紅葉を表すときに使用されることが多い(Wiki)。良子と息子が自転車で二人乗りしているときの空の色が茜色だった。

 

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