映画「愛に乱暴」（吉田修一原作、2024）を見る（MOVIX さいたま）。「さんかく窓の外側は夜」の森ガキ侑大監督、江口のりこ主演。
今や名わき役の江口のりこが、徐々に平穏を失っていく“妻”を怪演、年末の賞レースに登場しそう。タイトルの意味は映画を見ていくとだんだんじわじわとその意味が汲み取れる。小泉孝太郎は、前髪を垂らしているので、言われなければわからないほど激変、別人のようだった。
誰も気にしていない、気にかけてくれない…という孤独と絶望感の中で、一人でも自分に対して「ありがとう」という感謝の言葉をかけてくれる人がいると救われる…というメッセージか。
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夫の実家の敷地内に建つ“はなれ”で暮らす瀬初桃子（江口のりこ）は夫・真守（小泉孝太郎）結婚して８年になる。
桃子は義母・照子（風吹ジュン）から受ける微量のストレスや夫の無関心を振り払うかのように、石鹸教室の講師やセンスある装い、手の込んだ献立といった“丁寧な暮らし”に勤しんで日々を充実させていた。
そんな中、近隣のゴミ捨て場で不審火が相次いだり、愛猫（りーちゃん）が行方不明になったり、匿名の人物による不気味な不倫アカウントが表示されるようになったりと、桃子の日常が少しずつ乱れはじめるのだった。
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桃子の夫である真守（まもる）は、不倫相手・奈央（馬場ふみか）が身ごもっており、「すべて悪いのは自分」として桃子に離婚を申し出るが、桃子は、ハイそうですかと応じるわけはなく、離婚届が届いても破り捨て、不倫相手の家に乗り込むと、当然、修羅場となるのだった。
奈央は「（結婚できなくても）一人で子供を育てていく」というと、桃子は「選択肢がたくさんあっていいですね」と捨て台詞で帰っていく。
桃子の石鹸教室も閉鎖されることになり、その教室を運営していた、桃子が8年前まで勤務していた会社の元上司・鰐淵（斉藤陽一郎）の「会社に戻ったらいい」と言っていたので、そのわずかな希望を桃子が伝えても、会社都合でご破算。
夫・真守が二度と家には戻らないといっていたが、衣類などを取りに来た時に、桃子は、真守に自分のどこが悪いのかと問いただすと「（不倫相手の）奈央や子供ができたからどうこうではなく（桃子と一緒にいても）面白くない。つまらない」というのが本音だった。
勝手に浮気をして子供も生まれようという裏切りをさておいて…という発言だが、ネクラで直情的で笑顔もない奥さんだったら、真守に同情する余地もありそう。
ただ、この真守という人物は、過去にも不倫事件を起こしていた事実が明かされる。その時に身ごもった（のちに流産）のが現在の妻・桃子だった。
真守と母親の照子との会話をたまたま桃子が床下に隠れているときに聞いてしまったのだ。息子が息子なら母親も母親で、桃子に対しては「まだやり直せる」と離婚を迫り、母屋は売りに出し、桃子の暮らす”はなれ”は、売るなり住むなり自由にしていいというのだ。
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桃子がホームセンターでチェーンソーを買ってきて、家の柱を切るシーンや、庭で栽培したスイカを丸ごと持って、夫の不倫相手に持ち込んで、テーブルにドンと置いたり、畳の下の床板を切ったりと過激な行動をする桃子の狂気とも思える行動は常軌を逸している。
こうした裏の顔？を見ると、夫である真守も逃げ出したくはなるだろう。
冒頭、ゴミ捨て場が燃えるシーンが現れ、タイトル文字。近くで何件かの不審火事件が起こるが、冒頭の不審火のシーンがラストにあり、その現場に居合わせた桃子が、巡査の職務質問を受けるが、その場を逃げ出してしまい、買い物でよく行くホームセンターに走って駆け込む。
その場に居合わせたレジ係の若者リー（水間ロン）が、桃子に「ありがとう。いつもゴミ掃除をしてくれて」と話かけ、素足とみた桃子に大きな履物を渡す。
桃子は「ありがとうと言ってくれてありがとう」と四方八方ふさがりだった状態から救われた気持ちになるのだった。
最後は、第二の人生もあるというエンディングだったが、りーちゃん（愛猫）も見つからず、不審火の犯人も見つからず…とあいまいな終わり方ではあった。
2024年製作／105分／G／日本
主な出演者：
■初瀬桃子：江口のりこ…週2回、石鹸教室の講師。「りーちゃん」という名前のいなくなったらしい猫の名前を呼び探している。義母（夫の母）の”はなれ”で夫と暮らしている。
■初瀬真守（まもる）：小泉孝太郎…桃子の夫。桃子に無関心で不倫中。やがてある行動を起こすため、不倫相手とともに桃子と3人で会う。
■初瀬照子:風吹ジュン…真守の母。一人息子を常に気に掛けるが、食材などで息子は魚が好きだが肉ばかりと桃子にやや不満げ。
■奈央：馬場ふみか…27歳の教師で、真守の不倫相手。
■リー：水間ロン…ホームセンターのレジ係（若い外国人アルバイト）…片言の日本を話し、桃子の近隣に住んでいる。ゴミ捨て場近くに駐輪している。
■鰐淵：斉藤陽一郎…桃子が8年前まで勤めていた会社の元上司。石鹸教室を紹介した本人だが、桃子の面会には会うが、まともに対応しない。
■浅尾：青木 柚…石鹸教室の担当。
■所轄の警察官：西本竜樹
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