シネマトゥデイ編集部が今年の「映画ベスト20」作品を決定した。ストーリー、キャスト、演技、映像、社会性、エンターテインメント性、観客動員数、話題性などあらゆるポイントを踏まえて議論し、今年を代表する20作品を選び出した。キネマ旬報などと違って、ファン目線なので好感が持てる(笑)。
対象は2023年1月1日からの1年間に劇場、そしてストリーミングサービスで日本初公開された全ての映画。
1位は「ゴジラ-1.0」。
山崎貴が監督・脚本・VFXを担当。戦後で焼け野原になった日本をさらに破壊するゴジラの非情さ、スペクタクルな破壊描写、感動的な人間ドラマ、そして計算し尽くされた音響・映像美は海外でも大絶賛。
日本映画のさらなる可能性を世界に知らしめた点でも、今年の映画界を象徴する作品として文句なしの1位選出となった。ちなみに第96回アカデミー賞視覚効果賞の“最終候補作リスト”の10作に残った。
2位は「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」。
アメリカで暮らす中国系移民の中年女性を主人公にしたSFアクションコメディ。エンタメ作でありながら、マルチバースという設定を巧みに使い、移民、そして家族のドラマが感動的につづられるという新しさを評価。
今年のアカデミー賞を席巻して映画界に新しい風を吹き込み、アジア系俳優の再評価につながったことも記憶に新しい。
3位は「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」。
巨匠マーティン・スコセッシ監督がレオナルド・ディカプリオと6度目となるタッグを組み、アメリカの黒歴史に切り込んだ超大作。
クズ野郎を演じたディカプリオのハマリぶりのほか、黒幕ロバート・デ・ニーロ、圧倒的な存在感のリリー・グラッドストーンといったキャスト勢の名演、さらにストーリーのテンポの良さで3時間26分という大長編ながら長さを感じさせない。スコセッシの名匠たるゆえん。
4位以下は以下の通り。
4位『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』
5位『PERFECT DAYS』
6位『フェイブルマンズ』
7位『マイ・エレメント』
8位『君たちはどう生きるか』
9位『バービー』
10位『月』
11位『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
12位『首』
13位『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
14位『ジョン・ウィック:コンセクエンス』
15位『怪物』
16位『別れる決心』
17位『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
18位『エゴイスト』
19位『枯れ葉』
20位『市子』
・・・
この中では「市子」が気になる。なにしろ「砂の器」と比べられるほどの重量級の感動と衝撃をもたらす…といわれては(笑)。
「砂の器」まで引き合いに出すなと言いたいが…。
<平成の「嫌われ松子の一生」(2006年/監督:中島哲也)>
<令和の「市子」(2023年/監督:戸田彬弘)>
といってもいいくらいのスタンダードの風格を備えた新しい名作の誕生ということだが…。上映館を探したら、都内ではテアトル新宿ほかで上映中のほか、下高井戸の映画館で1月上旬に公開されるが…。
「月」は超問題作という。原作/辺見庸 監督・脚本/石井裕也、出演/宮沢りえ、磯村勇斗、長井恵里、大塚ヒロタ。
気合の入りまくった大力作といわれ日本の若手監督の代表格である石井裕也監督(1983年生まれ)が、彼が最も敬愛するという辺見庸の同名小説を大胆に脚色して映画化。
企画を立てたのは「新聞記者」(2019/監督:藤井道人)など硬派な話題作の数々で知られる映画会社スターサンズ代表だった河村光庸(2022年6月に72歳で急逝)。
彼の遺志を受け継ぎ、石井監督は「茜色に焼かれる」(2021)などを超える自身最高のハイボルテージを発揮。難しい主題の物語を特異な作品設計で叩きつけた。
問題作と言われるゆえんは2016年に起こった相模原障害者施設殺傷事件をベースにした内容という点。
タブーに抵触する領域の事情について石井監督は出来得る限りの取材やリサーチを重ね、日本社会のリアルな闇を問題提起として映画に反映させた。
もともとはKADOKAWAと共同配給の予定だったが、当時の会長・角川歴彦汚職事件で逮捕。社長の夏野剛が製作中止を決めたことでKADOKAWAは配給を辞退。異例のインディペンデント映画としてスターサンズが単独配給することに。
結局、小規模公開ではじまった本作「月」は激しい賛否両論や議論を呼びながらスマッシュヒットを記録し、年末年始の映画賞レースの目玉作品のひとつとも言われている。
蛇足① 映画コメテーターの有村昆が選ぶ2023年映画ベストテンは以下の通り。
1位:「怪物」
2位:「正欲」
3位:「FALL/フォール」
4位:「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」
5位:「BLUE GIANT」
6位:「シック・オブ・マイセルフ」
7位:「グランツーリスモ」
8位:「福田村事件」
9位:「君たちはどう生きるか」10位:「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」
ここでは「福田村事件」が気になる。
蛇足② 「スクラップ帖」のfpdの選ぶ10作品は以下の通り。見逃し映画が多いので、観た範囲での限定的チョイス。
1位:「PERFECT DAYS」
2位:「ゴジラ‐1.0」
3位:「怪物」
4位:「パリタクシー」
5位:「イ二シェリン島の精霊」
6位:「BAD LANDS バッド・ランズ」
7位:「最後まで行く」
8位:「マエストロ:その音楽と愛と」
9位:「17歳のウィーン」
10位:「シャイロックの子供たち」
・・・
2位・3位・6位にはいずれも安藤サクラが出演。国内の女優賞を獲りそう。
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