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映画「宮松と山下」(2022)を見る。香川照之の14年ぶりとなる単独主演映画。

宮松と山下」(2022)を見る。香川照之の14年ぶりとなる単独主演映画。記憶をなくした端役専門のエキストラ俳優・宮松をめぐる物語。

佐藤雅彦、関友太郎、平瀬謙太朗の3人からなる監督集団「5月(ごがつ)」の初の長編映画。    

映画のエキストラの舞台裏などが見られて面白い。同じ役者が、衣装を変えて一日に何度も殺される役で出演している。主人公の現実の日常なのか、映画のワンカットシーンなのか不明なシーンがあり、逆に面白い。

                                   撮影のセット風景

・・・<ネタバレ>(見る予定の人はスルーしてください)・・・

時代劇やヤクザ映画にエキストラとして出演している宮松は、何らかの理由によって一時的に記憶を失っていた。

             ロープウエイの同僚と

エキストラだけでは食べていけない宮松は、ロープウェイの従業員と掛け持ちしながら、日々を送っている。宮松のアパートの棚の中には、ラベルが張られた書類ファイルがぎっしり並んでいた。

          エキストラの出番を確認する宮松

それらは数百にも及ぶ映画の毎日数ページだけ渡される脇役のセリフが入っているファイルだった。食事をしながら、セリフの練習をする宮松。

ある日、彼の元に谷(尾美としのり)という中年の男性が訪れる。谷は元同僚だといい、たまたま映画の中で姿を消した宮松をみて探してきたのだという。

谷は「歳の離れた妹さんがいるが、連絡していいか?」と聞くが、「えっ」と宮松は驚きを隠せぬまま、谷の手筈で妹夫婦に会うことになった。

妹の家は宮松の実家でもあり、机の引き出しは整頓され、その中に、タクシー運転手の社員証と宮松の写真があった。名前は「山下」だった。

夫(義弟)によると「お兄(義弟)さんは、日本酒が好きでしたね」と日本酒を差し出されると「うまい」と繰り返す宮松。

    かつて野球をやっていたので記憶はなくても体が覚えていた

野球好きで、バッティング・センターに行くと、宮松はジャストミートして球を打ち返す。それを見た義弟は「もしかして思いだしているのでは?」と宮松に問いかけるが、思いだせないという宮松。

妹が出かけるというので、兄に買い物を勧める。タバコはショートホープをよく吸っていたから、ライターを置いてくという。

宮松は、買い物帰りにたばこ屋でショートホープを買い、家に戻って縁側でタバコを吸う。灰皿は吸い殻で一杯になる。

そんなとき、妹が戻り、吸い殻を見る。その後、宮松は、家を出ていきアパートを探していた。

義弟は「やはり出て行ったのは、思いだせなくて気まずいんだろうな。」というと、妹・藍は「そうではないと思う」というのだった。

藍と宮松は実の兄妹でなく、腹違いの兄妹と思われる。宮松が餃子を手際よく丸めていたのを見て「”兄ちゃんの”お母さんも、餃子を作るのがうまかったからね」と語っているのだ。宮松は、一瞬”兄ちゃんの”に「えっ」と戸惑った表情を見せる。

12年前にさかのぼる。そこでは、住み込みのタクシー会社の一人で、二段式の共同ベッドで寝泊まりしていた。

記憶をなくした原因は、同僚とのけんかで殴り合って、倒れたときに壁に当たったことによるものだ。この時の会話は、男(あとから健一郎であることがわかる)が「藍ちゃんを女としてみている」「いや、父親のつもりだ」といった声が聞かれた。健一郎は藍と交際中だったと推測できる。

藍から見れば、兄の複雑な感情を推し量って、思いだせないのではなく、あえて去っていったとみていたようだ。

すべてを言葉で説明せずに、見るものに想像させる余白を残している映画と言えそうだ。
・・・

  現場では演出で靄(もや)が吹きこまれる。撮影合間の昼食はラーメン。

   衣装を着てロケバスで移動。      エキストラ同士で会話のふりを練習。

        宮松が12年前のタクシー会社勤務のころ

         このシーンも撮影の一部だった!

アパートに戻ると、女性がいた。あれ、結婚していたのか?あるいは同棲?と思ったが、あとで、「カット!」という言葉が入り、映画のワンシーンと分かる。しかも、宮松にとってはこれが唯一セリフをもらったシーンだという。

義弟役の津田寛治と職場で取っ組み合いになって倒れて記憶を失った宮松だが、津田寛治が、何かしらたくらんだ裏の顔があるかと思ったらまともだったのが物足りない(笑)。

<キャスト>
香川照之(宮松:記憶を失くしたエキストラ俳優)
津田寛治(健一郎:宮松の妹の夫、ホテルマン)
尾美としのり(谷:宮松を知る元タクシー運転手)
中越典子(藍:健一郎の妻、宮松の妹)
野波真帆(里帆:宮松の共演者、女優)
大鶴義丹(潮田:宮松の出演作品のディレクター)
諏訪太郎(初老の男、宮松の共演者)
尾上寛之(國本:ロープウェイの従業員)
黒田大輔(宮松の主治医)

 

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