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映画「老後の資金がありません!」(2021) コメディでも笑えない切実さを浮き彫りに。

映画「老後の資金がありません!」(2021)は、老後の資金を貯めてきた普通の主婦が直面する悩みをつづった垣谷美雨の小説をコメディタッチに描く。

数年前にテレビの経済分野のコメンテーターなどが「老後の資金は2,000万円必要」と発言し話題になったが、街の大型スクリーンから主人公の主婦・後藤篤子(天海祐希)に呼びかけるように「2,000万円でも足りない。4,000万円必要」などと追い打ちをかける。

主演はドラマシリーズ「緊急取調室」などの天海祐希。監督は「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」などの前田哲、脚本は「ナミヤ雑貨店の奇蹟」などの斉藤ひろしが手掛けた。

出演者では、草笛光子が撮影時87歳(2021年)とは思えないしゃきっとした動きを見せているほか、松竹歌劇団(SKD)出身の歌声を聞かせる。宝塚出身の天海祐希と一緒に唄うシーンもある。

天海祐希の倹約家妻と異なり、家計などに無頓着の夫役の松重豊の”のんきな父さん”ぶりも堂に行っている。

高齢者の生存確認に訪れる市役所職員に三谷幸喜が扮している。ほかに毒蝮三太夫、金髪でイケイケの竜雷太藤田弓子の老夫婦、章に借りを返す哀川翔、葬儀屋の営業担当の友近、兄嫁に対抗意識を持つ義妹の若村麻由美などが出演。
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映画は、老後の年金不足だけでなく、老後の生き方、年老いた親を誰が面倒を見るかなど、笑いの中にも切実な問題を浮き彫りにしている。

義妹(夫の妹)の桜井志津子(若村麻由美)が、実母と篤子が楽しそうに暮らしているのを見て、嫉妬心がわいてきたのか、母を引き取りたいと申し出てきた。
これには章夫婦は、喜んで同意。

戸建ての家を3200万で売り払って、そこからローンの残2000万を完済し、1,200万が残り、夫婦は若い人や年配者などがともに住むシェアハウスを選択するというものだった。

浪費家だった義母だが、篤子と暮らすことになって、浪費を止める。実娘のところ引っ越しする際に「自分のために使って」と義母が篤子に10万円を渡す。

映画の冒頭で、篤子がショーウインドー越しに見ていた赤いバッグは、値段が93,000円で、ため息とともにあきらめていたが、ラストでは、義母からもらったお金で、バッグを購入、小さな幸せにステップを踊りながら喜ぶ。

老後の資金がある程度あっても、決して安泰というわけではないこと。予期せぬ出来事(出費)はあるもので、降りかかってきた金銭的問題(主人公の篤子から見て)には以下のようなものがあった。

〇高齢の義母が、手の込んだオレオレ詐欺に引っかかり300万円奪われる。

〇夫・章の会社が倒産し、当てにしていた退職金(2,000万円?)が0円に。

ハローワークで、年齢の壁にぶち当たり、56歳で同じ仕事しかしてこなかった人に仕事はないと窓口で嫌みを言われる。

〇篤子のパートも満了で契約打ち切りとなる。契約満了を事務的に伝えるのがあの「カメ止め」のどんぐり(笑)。

〇義父が死亡し、かつて評判だった伝統のある和菓子屋としての義母の見栄もあり「立派な葬儀にしてよ」と義母から釘を刺される夫。夫の妹は、義母を引き取っていたので、せめて葬儀は仕切ってと夫に押し付けた格好だった。

〇葬儀担当者から、棺や、なんやかやと見積は330万円という数字に仰天する篤子だったが、香典が集まるから大丈夫ということで、言われるままに葬儀を執り行う。

          山の様な香典は絵に描いた餅となる。

しかし、ふたを開けたら参列者はまばら。義父の友人・知人たちは入院やら病気やらで出席せず、香典はわずかに40万円ほどで、約389万円の赤字。

700万円ほどあった貯蓄も一気に減る。

〇娘が、彼氏を連れてきたが「私たち結婚します」と宣言。ヘビメタのバンドマンの相手の両親は事業で成功しているようで、盛大に結婚式を挙げたいという。
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傑作シーンは、章が失業して、ハローワークの窓口でのやり取り。窓口の若い女性から「雇う側から考えて(しょぼくれた、とまではいわないが)56歳で、ずっと同じ仕事をしてきた人と、36歳のバリバリの人とどちらを採用したいと思いますかね」という嫌味を言われるのだ。それを聞いても、にやついてポカンとしている章の表情は危機感が全く感じられない(笑)。

結局、工事現場の警備員になるが、慣れないので転んだりする。前職が、大企業の部長であろうが何であろうが、全く関係なしの世界。

ラストは、家を売り払い身軽になった夫婦は、シェアハウスというコミュニティを選択。

コメンテーター、アドバイザーと称する人たちは、データを示して老後にいくら必要と煽るが、すべて机上の空論という気がする。

状況は人それぞれで、持ち家か家賃か、ローンの有無や年金の額は一定でもそれ以外の収入源のあるなしなど様々。平均値ほどあてにならないものはない(笑)。

気楽に見られる映画で、笑いあり涙ありのコメディで面白かった。

 

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