原作発表、初の映画化から50年以上が経ち、医療現場も環境も大きく変わったが、携帯電話(院内ではPHSが使われていた)が当たり前の現代に置き換えられ、岡田准一演じる財前五郎の役も含めて、出演者の人物像も掘り下げられて見応えがあった。
田宮二郎の一世一代の当たり役だったが、岡田”財前”も過去の名優たちと比較されるプレッシャーをはねのけて、予想を上回る深みがあり”怪演”といってもいいほどだった。数回、ドラマ化されたが、ドラマでは最高ではないかと思った。
現地プロデューサーも岡田の存在感を絶賛したという。岡田准一は「日本の作品のクオリティも世界基準を目指していくのが理想的だと思っています。そういう意味でも国内外問わず仕事をしていきたい」とグローバルな活躍に思いをはせていたという。
ところで、女優陣も、映画版、これまでのドラマ版に劣らず、それ以上に素晴らしい。映画版の小川真由美は、財前のことを「五郎助ちゃん」と呼んでいたが、「教授になったら、助(すけ)だけは取ったるわ」と関西弁でやや蓮っ葉な性格をにじませていた。今回の沢尻エリカは、クラブのママで美貌の上に品格がある(笑)。
意表を突いた配役も見られる。
市川実日子の教授役だ。映画版で加藤武が演じた、どちら側に もいい顔をする野坂教授役だが、あえて女性に変更させ、教授陣では紅一点。「シン・ゴジラ」などでかわれた演技力が評価されたものか。財前教授の妻役の夏帆は、「箱入り息子の恋」で盲目女性を演じたが、財前妻では、一転して、沢尻エリカ扮する愛人に対決姿勢を見せた。
東都大学・船尾教授役は、映画版の名優・滝沢修は圧倒的な存在感を見せたが、今回は椎名桔平。悪くはなかったが、映画版で滝沢修が裁判で大学の権威を守る発言をして迫力があった。その発言は、大河内教授を演じた岸部一徳のセリフに変更されていた。第4話は医療裁判となり、イケメン弁護士役で斎藤工と山崎育三郎(写真下)が登場した。
約2時間の制約でコンパクトに描く映画版と、10時間(実質7時間程度)のドラマ版を比較すると、映画版では描けなかった人物描写の深みなどを描くことができた。
柳葉敏郎、松重豊、小林薫、寺尾聰、岸本加世子、市毛良枝、高島礼子、岸部一徳など脇役陣がドラマに深みを与えた。財前のライバル・里見医師を演じた松山ケンイチは、飄々として軽すぎ感があり、やや役不足に思えた。
財前(岡田准一)が部下の柳沢医師(満島真之介)に、医療カルテの改ざんを暗に要求する、笑い顔が不気味で、今ドラマのサイコーのシーンではなかったか。今後、テレビ局●●記念で「白い巨塔」が万一放送されることがあれば、岡田・財前が基準となりそうだ。岡田超えはかなりハードルが高い!?