fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「シェーン」(1953) 再見。</span>




西部劇の名作「シェーン」(
1953)を再見した。
一度見ているからいいや、というのは大きな間違い(笑)。10代後半か、20歳前後で見たときには理解できなかったことが、一定の年齢で分かるようになるということがある。大昔に見ただけという人には再見をおすすめ。
 
「シェーン」も、単にガンさばきの早い流れ者のガンマンの話ではなかった(笑)。

時代背景と、ジョージ・スティーブンス監督がなぜ「シェーン」を作ったかを知ると興味が倍増する。
 
アメリカ人なら誰でも知っている西部開拓時代最大の悲劇「ジョンソン郡戦争」が下敷きになっている。

「ジョンソン郡戦争」とは・・・。
西部開拓時代も終りに近づいた頃、すでにニューヨークでは鋼鉄製ケーブルのエレベーターが普及し高層ビルが建ち始めている時代ヨーロッパからの移民農民には開拓農地が自分の物になる制度がまだ有効だった。農民は、未開拓のある土地に5年間住むと、その土地は自分のものになった。
 
物語の舞台、北西部のワイオミング州ジョンソン郡では新規に移民して来た農民が開拓地を広げていく一方で、古くからこの土地につき大きく地盤を広げていた大牧場主たちとの間で確執が起こっていた

大牧場主たちは、新開拓民を殺してしまえば丸儲けになるばかりに実行にうつしてしまうというものだった。

同じく、それを描いているのが天国の門」(未見)で、大牧場主の雇った流れ者の傭兵部隊に対して果敢に銃を取って戦いを挑んだ開拓民のフロンティア魂が無残に踏みにじられる話だ。
 
ジョージ・スティーブンス監督は、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線で、連合軍の映画班として、戦争の現場を撮影し続けた。ナチスにより殺されたユダヤ人の死体の山などもカメラに収め、その映像は「ニュールンベルグ裁判」で証拠として提出されるなど、裁判に大きな影響を与えている。
 
そうした、戦争の生々しい体験をしてきたスティーブンス監督は、それまでの西部劇にはない映像を見せたかった。例えば、銃の撃ち合いで、弾を受けた状態を、実際に見てきた体験からリアルに描いた。45口径の銃弾を受けた場合には、人間は後方に吹き飛ばされるというもの。弾を受けた胸を押さえて「ううぅ」とうなるレベルではないようだ(笑)。
 
・・・
後から知ったが「シェーン」が原点として影響を与えた人物、映画は数しれない。

クリント・イーストウッドの西部劇(「奴らを高く吊るせ」「荒野のストレンジャー」ほか)、「タクシー・ドライバー」(ロバート・デ・ニーロが鏡の前で「俺に言っているのか?」は「シェーン」で、アラン・ラッドがバーのカウンターで、クリスに絡まれるシーンでのセリフだ)、サム・ペキンパーのバイオレンス西部劇「ワイルド・バンチ」などがある。

■「シェーン」(カウンターに座っているシェーンにクリスが近づいてきて話しかける)
 Shane: You speaking to me? (俺に言っているのか?)
  Chris Calloway: I dont see nobody else standing there (ほかに誰が
 いる)。
 
■「タクシー・ドライバー」(鏡に向かって自分に話しかける主人公トラヴィス
 Travis: "You talkin' to me? 俺に話してるのか?
以下続き:You talkin' to me? You talkin' to me? Then who the hell else are you talkin' to? You talkin' to me? Well I'm the only one here. Who the fuck do you think 
you're talking to?"

 

近年では、ライアン・コズリング主演の「ドライヴ」の母子との切ない恋もまさに「シェーン」そのものだ。少年の目から見たヒーローという点では「マッドマックス2」もそうだ。
 
・・・
(あらすじ)
ワイオミング州の西部に広がる高原、グランドティートン山が前にそびえ立っているジョンソン郡の開拓地牧畜業者と農民との間でいがみ合いが続いていた。

南北戦争後に政府は西部開拓を積極的に進めるために、入植した農民が5年間耕作すると無償で一定の土地が得られる法律が作られて、農民が新しい土地に開墾に入るとそこに牧場主がいて、各地で争いが生じていた。
 
この土地では従来からの権利を主張する牧畜業者のライカー(エミール・メイヤー)一家と開拓者たちが対立していた。開拓者が来る前に、先住民族と戦い、この土地を今日の様にしたのは自分達だとライカーは主張していたのだ。


 
ある日、この土地にやってきた流れ者のシェーン(アラン・ラッド)は、ある開拓者の住まいに辿り着き、飲み水をわけてもらう。開拓者の主のジョー・スターレット(ヴァン・ヘフリン)から「ライカーの仲間か」と聞かれるが、そこへライカー一家がやってきて従来の主張を繰り返す。
 
シェーンはジョーに加勢しライカー一家を追い返す。
ジョーはシェーンを夕食へ招待し、夕食をおごられたシェーンは、作業を手伝いこの家に留まる決心をする。


 
やがて息子のジョーイ(ブランドン・デ・ワイルド)と仲良くなり、そしてジョーやその息子ジョーイと友情を結ぶシェーンだった。ジョーの妻マリアン(ジーン・アーサー)は彼に惹かれ、またシェーンも彼女に惹かれてゆく。そして農民たちとも親しくなっていった。
 
シェーンはジョーの遣いで針金を街に受取に行き、自身の作業服も買おうとするが、酒場でライカーの手下に侮辱を受ける。実力を出せばと思うも、この土地に定着する決心をしたシェーンは甘んじて侮辱を受け流す。

しかし、シェーンが腰抜けと言う噂が流れたため、シェーンは次に開拓者達と街に行った際に、逆にライカー一家に喧嘩を売り、ジョーもシェーンに力を貸して、ライカー一家を叩きのめしてしまう。
 
ここで、シェーンとジョーとの殴り合いに敗れたライカー一家はシャイアンに遣いを送り、殺し屋のウィルスン(ジャック・パランス)を雇う。力ずくで農民たちを追い出す魂胆であった。


 
殺し屋ウィルスンは開拓農民の一人トーレーを挑発し、トーレーが銃に手をかけたとたんに早撃ちの1発で殺害する。

その暴虐に農民達は恐れて立ち去ろうとする者がいる一方で、スターレットは立ち向かうことを主張した。

そして、この抗争に終止符を打つため、ライカーがジョーに話し合おうと呼びかけたことで、ジョーは単独でライカーに会いに行こうとするのだったが、シェーンは罠だと諌めて力ずくで止め、一人でライカー一家に立ち向かう。
 
シェーンは酒場でライカーやウィルスンを、「0.5秒」(映画公開時のうたい文句で、その後のフィルム分析では0.3秒と判明)の早撃ちで倒した。


 
そして、2階からシェーンを狙い撃とうとしたライカーの弟は、ジョーイのとっさの掛け声で、シェーンに返り討ちにされる。しかし、シェーンもまた脇腹を撃たれていた。
 
彼が家に来てから彼を慕い、憧れていたジョーイは犬とともに酒場まで追いかけてきたのだった。傷ついた身体を心配して一緒に家に帰ろうと呼びかけるジョーイに、シェーンは「人を殺してしまえば、もう元には戻れない」と言って、馬に跨りワイオミングの山へと去っていった。
 
必死に呼びかけるジョーイの声はやがて「シェーン!! カムバック!!」と山にこだまするのであった。
 
・・・
ジョーイがライフルで遊んでいたが、カチッと音を出した時に、シェーンが、銃を抜く構えを見せた。常に、見えざる敵に対して用心している姿勢がうかがえる。

シェーンが何者かはほとんど語られていないが、南軍くずれの傭兵とみられる。
それは、はじめてジョー・スターレットの土地にたどり着いた言葉が「通っていいかな。個人の土地とは知らずに。北へいく。」というのだ。

また、殺し屋ウィルソンについて耳にしていたシェーンは、ウィルソンに向かって「噂を聞いている」というと、ウィルソンが「どんな噂だ」と聞き返す。「ヤンキーの嘘つきだ」と答えるのだ。当時、ヤンキーというのは、アメリカ北部の人間に対する侮蔑の言葉であるからだ。
 
「シェーン」は西部劇として、様々な要素を含んだ傑作とされるが、西部劇であると同時に、秘めたラブ・ストーリーも描いている。

少年ジョーイが、母親のマリアンに「お父さんと同じくらいシェーンが好きだ」というと、あまり好きになるなという。ジョーイがまるでマリアンの心を代弁しているように感じたマリアン。別かれるのが辛くなるから、とジョーイに諭すのだ。
 
ジョーイがシェーンに「何故行ってしまうの」というとシェーンは「それが生き方だからだ。人を殺した烙印を押された者は、もう戻れないんだ」と語って去っていく。

もうひとつ忘れられないのは、ヴィクター・ヤングによる牧歌的かつ雄大な楽曲だ。
 
スタッフ
監督・製作:ジョージ・スティーヴンス
脚本:A・B・ガスリー・Jr.
原作:ジャック・ジェーファー
撮影:ロイヤル・グリヴス
編集:ウィリアム・ホームベック、トム・マクアドゥー
キャスト
・シェーン:アラン・ラッド
・ジョーイ・スターレット:ブランドン・デ・ワイルド
・ジャック・ウィルソン:ジャック・パランス
・フランク・トーリ:イライシャ・クック・ジュニア
・クリス・キャロウェイ:ベン・ジョンソン
・ルーフ・ライカー:エミール・メイヤー
 
改めて見直すと、様々なセリフや情感や、決闘シーンの緻密さなどがわかって面白かった。西部劇映画のベスト10のひとつにこれまではなんとなく上げていたが、ベスト3に入れてもおかしくない映画だ。


☆☆☆☆

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
「にほん映画村」に参加しています:ついでにクリック・ポン♪。