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<span itemprop="headline">映画「家族」(1970):山田洋次監督の初期の秀作。</span>


 
山田洋次監督の「家族」(1970)は、日本の高度成長期の時代にあって、長崎から北海道に移住した一家の物語を、ドキュメンタリー・タッチで描いている。
 
「家族」に登場する主人公の女性・民子(倍賞千恵子)を中心とした「民子」シリーズ三部作(第二作「故郷」第三作「遥かなる山の呼び声」)の第一作でもある。

「家族」は、1970年度のキネマ旬報ベストテン第1位に選出されている。
DVDレンタルチェーン(ツタヤ、ゲオなど)の「昭和キネマ横丁」の1本である。
 
全編ほぼ長崎弁であり、理解はできるが、日本語字幕付きでみた(笑)。
 
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1970年といえば、大阪万博日本万国博覧会が開催された年。
また11月25日には、三島由紀夫の割腹自殺という衝撃事件も起こった。
 
映画「家族」は、他人に使われない、独立した酪農業を夢見て、故郷「長崎」を離れ、「瀬戸内海」「広島県福山市」を経て「大阪」「東京」から「北海道」までを巡ってのロード・ムービーである。途中、さまざまな風景や人と出会いながら夫婦のきずなを深めていく。
 
大阪では、家族は、乗継列車の合間に大阪万博の入口まで生き、にぎわいぶりに触れる。新大阪駅から、東海道線で「東京」で乗り換え「上野駅」に到着すると、ハナ肇らがいて、当時はやった”(あっと驚く)タメゴロー”のギャグもある。
 
上野の宿では、主人がテレビで見ている番組は「男はつらいよ」だった。
ただ、旅の疲れか赤ん坊の早苗が熱を出して亡くなってしまうという悲劇に見舞われる。その遺骨を持って、民子らは「東北本線」「青森連絡船」を使って「北海道」にわたり、そこから「室蘭本線」「根室本線」と乗り継いで「標津線」で目的地の中標津駅に到着する。さまざまな日本の情景の多様さをも映し出していく。
 

 
 
風見精一(井川比佐志)の一家は、故郷である長崎県伊王島から、開拓のため北海道標津郡中標津町へ移住することとなった。酪農を夢見ていた精一の決断によるものであった。
 
妻の民子(倍賞千恵子)の反対により、当初は、精一が単身で移住することになっていたが、精一の固い意思のまえに民子が翻意し、結局子供2人を含む家族で移住することになったのである。
 
同居していた精一の父源蔵(笠智衆)については、高齢であることから、広島県福山市に住む次男(前田吟)夫婦の家に移ることになっていたのだが、福山に到着してみると、次男夫婦が必ずしも父親を歓迎していないことがわかり、結局、民子の発案により、父親も一緒に北海道へ移住することになったのだった。
 
こうして一家5人の列車を乗り継ぐ北海道への旅が始まった。
途中で娘を失い、悲嘆に暮れる間もなく、一家は北海道へ急ぐため、火葬を取り急ぎ済まし、気持ちの整理ができぬまま、雪深い夜の中標津にたどり着いた頃には、一家は疲れ果てていた。
 
一家は地元の人々から歓待をうけ、上機嫌の父源蔵は炭坑節を歌い、一家はようやく落ち着くかのようにみえたが、源蔵は歓迎会の晩、布団に入ったまま息を引き取ってしまう。家族2人を失い、後悔と悲嘆にくれる精一を、民子は「やがてここにも春が来て、一面の花が咲く」と慰め、励ます。
 
中標津の大地には二つの十字架がたった。6月、中標津にも春がき、一家にとって初めての牛が生まれた。そして民子の胎内にも新しい命が宿っていた・・・。
 
・・・
会社が倒産したとはいえ、九州から北海道に移住するというリスク、しかも経験のない酪農に挑むという主人公・精一は、かなり自分勝手な性格。北海道へ自分一人で行く予定だったが、妻らがついて来なければ娘を死なせることはなかった、と責任転嫁の口ぶりに「うちのせい」と妻。
 
結局は、最後に「おい(私)があほやったね」と妻に語る精一。
長崎では、餞別ももらい盛大に知人らから見送られていて、何があっても帰るわけにはいかないと悩むが、父源蔵が常々語っていたことは、迷ったら「民子の意見に従え」だった。
 
民子は、子牛が生まれて、一頭自分たちのものになったこと、自身にも新しい生命が宿っていること、長い冬も2か月後の6月になると、牛の乳も出るようになり、「今年こそよかこと(良いこと)がおこりそう、と楽しみにせんば」と明るく語り、希望を胸に新しい土地での新出発に生きることを決意するのだった。
 
・・・
音楽は、黒澤明監督の音楽などでも知られる佐藤勝が担当、ダイナミックな音楽が印象に残る。
 
映画は時代を映す鏡。
まだ市電や都電なども走っている。次男の収入も高級取りだから、父親の面倒も大丈夫だろうと思っていた長男の考えも甘かった。次男は、月給手取りが28,000円と低く、36万円の車を月賦で購入しており、生活も苦しかったのだ。
 
家族というのは、夫婦はもともと他人で、兄弟でもその伴侶はまたまた他人。
ここで描かれる兄弟も、それぞれ自分の家庭・家族を守るのに精一杯だ。
その中で、なんとかして、できる範囲のことをして、助け合っていくさまも垣間見える。
 
主な出演者:
風見精一(長男):井川比佐志
風見民子(長男の嫁):倍賞千恵子
風見剛(長男の子):木下剛志
風見早苗(長男の子):瀬尾千亜紀
風見源蔵(祖父):笠智衆
風見力(次男):前田吟
風見澄江(次男の嫁):富山真沙子
風見学(次男の子):竹田一博
風見隆:池田秀一
沢亮太:塚本信夫
みさお松田友絵
チンケ:花沢徳衛
東京の宿屋の主人:森川信
行きずりの旅人(青函連絡船函館駅):渥美清
行きずりの旅人:春川ますみ
長崎本線急行の乗客:太宰久雄
丹野先生:梅野泰靖
東京での通りがかりの人:三崎千恵子
 
 
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