「嵐が丘」(1939)などのウイリアム・ワイラー監督。ワイラー監督は、のちに「ベン・ハー」「我等の生涯の最良の年」「ローマの休日」などの名作がある。音楽はアルフレッド・ニューマンとディミトリー・ティオムキンが担当。
いまさらだが西部劇は、Westernの訳語で19世紀後半のアメリカの西部開拓時代に当時フロンティアと呼ばれた未開拓地であった主にアメリカ西部を舞台にした小説や映画。「西部の男」では最初に「南北戦争後、人々は西部を目指した。そこでは判事ロイ・ビーンが絶大な権力を握っていたが、テキサスの地では争いが必至…」といった文字が流れる。
もともと地元にいる牛飼いたちのところに、政府の許可を得て、農民の入植者たちがやってくるが、土地の所有などを巡って争いが起こっていた時代である。
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舞台は1880年代のテキサス。
牧畜業者の天国だったこの土地へ、新天地を求める農民が移住して来るようになってから両者の間には常に闘争が絶えなかった。土地の実権を握るロイ・ビーン判事(ウォルター・ブレナン)は、酒場の経営者で、牧畜業者の後盾として農民に迫害を加えていた。
馬泥棒の嫌疑で捕えられたコール・ハードン(ゲーリー・クーパー)は、判事が女優リリー・ラングトリーに憧れを抱いているのを知ると、自分はリリーの髪の毛を持っていると偽って、その髪を欲しがる判事に判決を保留させることに成功した。
「リリーの髪はどこにある?」「それは、エル・パソに・・・」
牧童の横暴に憤激した農民が、判事に私刑を加えようとした時、コールは両者を調停し、リリーの髪の毛を与えることを条件に、牛群を農民の土地以外へ移させることを、判事に約束させた。
コールは、マシューズ老人の娘ジェーン=エレン(ドリス・ダヴェンポート)から髪の毛を貰い、リリーのものと称して判事に渡した。牛の害もなくなり、その年は豊作であった。
「思い出に髪を切らせてほしい。」
感謝祭の当日、農民たちはダンスに興じたが、その虚に乗じて、判事は牧童を率いて農場や作物に焼き打ちをかけた。騒ぎにまきこまれ、マシューズ老人は非業の死をとげた。
焼け跡で、断じてこの土地は棄てないと言いきるジェーン=エレンを見て、コールは判事の酒場に馬を走らせた。リリーが近くに興行に来るというので前景気をあおっていた判事の酒席に乗込み、コールは、判事に焼き打ちの責任を自白させ、更にその足で保安官を訪ねて、判事の逮捕状を発行させると共に、自ら副保安官となり判事の捕縛に向かった。
判事はリリーの公演の切符を買占め、ただ1人劇場にはいって行った。
幕が開くと、舞台に立っていたのはリリーではなく、コールだった。烈しい拳銃戦が展開され、ついに判事は、コールの弾丸によって、憧れのリリーの足許に倒れて息絶えたのだった(MovieWalker)。
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この映画にロイ・ビーン判事が登場する。「ロイ・ビーン」(1974年公開)でポール・ニューマンが演じていた、飲んだくれの判事で、ちょっとした罪でもすぐに縛り首にしてしまう判事だった。悪名高きロイ・ビーンといえるかもしれない。
「西部の男」に登場するロイ・ビーンは、自身が法律であると豪語し、ろくな裁判もせず「バーが法廷」であり、取り巻き数人を陪審員に見立てて形式的に審議させるが、たいていはロイ・ビーンの意向を受けているので「有罪」であり縛り首にしてしまうのは同じだった。
子牛を殺したということでちょうど縛り首が行われたところに、”牛泥棒”として捕まりやってきたのがコール・ハードン(ゲーリー・クーパー)だった。牛を盗んだ男から知らずに60ドルで牛を買っただけだったのだが・・・。
酒場にはリリー・ラングドリーという美人女優のポスターが貼ってあった。ロイ・ビーンはリリーにぞっこんだった。コール・ハードンは、機転で「実はリリーの本物と何回も会ったことがある。記念にリリーの髪を持っている」とビーンに耳打ちしていた。エル・パソに置いてあリ、持ち帰るまでに3週間かかると伝えていたのだ。
その髪を見せてほしい、ぜひ欲しいと、刑の執行を猶予したというわけだ。その後、ハードンに牛を売りつけた人物が現われ、その人間はハードンとの撃ちあいで死んでしまう。無実は証明されたものの、死人でさえ形の上で縛り首にされた。
地元の土地を守ってきたマシューズ老人を殺された娘のジェーン=エレンは、トウモロコシの栽培などで未来に希望を抱いていたが、そこには流れ者だったハードンがいた。
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ゲーリー・クーパーといえばかっこいい保安官といったイメージが強いが、この映画では、どちらかというと、不器用で嘘八百を並べるが憎めない人物だった。ウォルター・ブレナン扮するビーン判事と飲み比べをして、翌日には、どちらも二日酔い。ビーンは寝違えると首が回らなくなり、ハードン(クーパー)がひねってやると、首が直り「ありがとう」だった。
「リリー、こちらビーン判事。あなたの長年のファンです。」
リリーが近くの街に公演に来るというと、ビーンは全チケットを買い占めて、一人で舞台を眺めるために前列真ん中に居座る。しかし舞台に現われたのはハードンだった。ビーンはハードンとの壮絶が銃撃戦の果てに行き絶え絶えに。それでも、ハードンに促されて、息を引き取る前に舞台裏で、わずかな時間、本物のリリーと対面する。
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