ジャン=リュック・ゴダール監督の長編デビュー作「勝手にしやがれ」(原題:仏:À bout de souffle、英題:Breathless、1959)をラストシーンなど部分的には見ていたが、完全には初めて見た。
映画は、ジャン=ポール・ベルモンドが演じる無軌道な若者の刹那的な生きざまと話題性のあるテーマだけでなく、即興演出、手持ちカメラによる街頭撮影、同時録音、自然光を生かすためのロケーション中心の撮影など、連続性を無視した大胆な編集術(ジャンプカット)などにより、その独自性が高く評価された。
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ハンフリー・ボガートを崇めるミシェル・ポワカール(ジャン=ポール・ベルモンド)は、マルセイユで自動車を盗み、追ってきた警察官を射殺してしまう。パリに着いたものの文無しで警察からも追われているミシェルは、アメリカ人のガールフレンド、パトリシア(ジーン・セバーグ)と行動を共にする。だが、ミシェルが警察に追われる身であることを知ってしまうパトリシア。やがて二人の逃避行が始まるが、心変わりしたパトリシアが警察に通報してしまう。
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舞台は1959年の夏のパリ。
映画のオープニングで、主人公のいかにもチャラ男のミシェルが車を盗んで、♪ラララララ~パパパパ~♪と鼻歌を歌いながら並木道を車でぶっ飛ばす。カメラに向かってつぶやく。「海が嫌いで、山も嫌い?”勝手にしやがれ”」と。そこからタイトルが拾われているようだ。
ヒッチハイカーが前方に見えるが、「二人ともブスだ」とつぶやき、乗り過ごす。
ハンドルを握りながら、銃を手に持ってまわりを撃つそぶりを見せる。前方のトラックを猛スピードで追い越すと、すぐに警察のオートバイ2台に追いかけられる。車をわき道にそらせ、修理のふりをしていると、一人の警察官のバイクが近づいてくる。ミシェルは、あっけなく警官を銃で射殺してしまう無軌道ぶり。
「ニューヨーク・ヘラルド・トリビューンはいかが」と新聞売りをしているアメリカ人女性記者パトリシアと数日前に知り合ったばかりだが、女癖も悪そうなミシェルは、しつこく「ローマへ行こう」とアタックする。
ミシェルは、パトリシアと行動を共にするようになるが、パトリシアは、ミシェルが警察に追われていることを知る。パトリシアは、ミシェルに対して好きになれないと、警察に密告する。密告したこともミシェルに伝える。伝えたことで、一人で(勝手に)逃げてほしいと願ったのだろうか。ミシェルは、ぎりぎりまで逃げない。「サツがなんだ。疲れた」と自暴自棄になっていたのだ。
パトリシアは、フランス語の俗語などはよく理解できないようで、ミシェルが「フランス人は”ヘタレだ”」というと、「ヘタレって?」と聞き返していた。
ラストシーンで、警察に銃で撃たれて”息切れ”(=Breathless:原題)している時に、ミシェルが警察官に向かって「もう、うんざりだ」とつぶやく。パトリシアが、警官に「うんざりって何?」と聞いたところで「FIN」。
ジーン・セバーグは、この映画に出演した時には21歳で、ショートカットで、愛くるしくはつらつとしていた。その2年前に出演した「悲しみよこんにちは」(1957)のベリーショートは「セシルカット」としてすでに流行していた。セバーグは、30本以上の作品に出演したが、作品的にはその後恵まれなかったようだ。40歳の若さで亡くなった。
映画としての技術としては、サングラスに移りこむ映像や、つなぎのシーンで、画面が黒い丸となって消えていき次のシーンに移るなどが印象的だった。
ルールを無視した絵作りと言われているが、3時間以上のフイルムになったのを、カットを求められたゴダール監督は、一定のシーンをすべてカットするのではなく、それぞれのシーンを部分的にカットすることを望んだことから、シーンがジャンプすることになったようだ。ゴダールに関する解説書などは膨大にあるようだが、それらは、評論家におまかせ。
ジャン=ポール・ベルモンドが、同じころデビューしたアラン・ドロンと人気を二分していたというのが、この「勝手にしやがれ」を見ると理解できる。いい加減でその場限りのロクでもない男。トイレで、隣り合わせになった見知らぬ男を殴りつけ、金を巻き上げたり、知り合ったばかりの女に関係を迫ったり、チンピラ役。
ユーモアのあるシーンもある。”顔芸”のシーンだ。
ミシェル(ベルモンド)は、ガールフレンドのパトリシア(セバーグ)に、キミは笑顔がなく、いつもこんな顔をしているよと皮肉って、顔をよじらせ、いくつか”ヘン顔”を作るシーンだ。この顔をひん曲げるしぐさが最後にいきてくる。
ベルモンドは「勝手にしやがれ」により、フランスを代表する主要な3-4人の俳優の一人に躍り出たのだった。
テレビの「嵐にしやがれ」の「~にしやがれ」の元はこの映画からだろう。
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