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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「アリスのままで」(原題:STILL ALICE、2015)

 
今年のアカデミー賞主演女優賞を獲得したジュリアン・ムーアの「アリスのままで」(原題:Still Alice、2014)をMOVIXさいたまで見た。監督のリチャード・グラッツアーは、持病のALS(筋委縮性側索硬化症)を悪化させて、この3月に亡くなり、これが遺作となった。
 
ジュリアン・ムーアはほとんど化粧なしで、若年性アルツハイマーを患った50歳の言語学者アリスを熱演し、ほかの主演女優賞候補を退け、オスカー女優に輝いた。
 
ジュリアン・ムーアはこれで、他の女優が成し得なかった偉業を達成した。
界三大映画祭ヴェネツィア国際映画祭エデンより彼方に」、ベルリン国際映画祭(「めぐりあう時間たち」)、カンヌ国際映画祭(「マップ・トゥ・ザ・スターズ」)の女優賞と、「アリスのままで」によりゴールデングローブ賞アカデミー賞の主演女優賞の5つの賞の女優賞を獲得したことになり、女優では初めてとなった。
 
(以下、ネタバレも一部にあり、これから見る予定の人はスルーを)。
 
・・・
ニューヨーク、コロンビア大学で教鞭をとる言語学者アリス(ジュリアン・ムーア)は、50歳になったその日、最高の誕生日を迎えた。
 
夫のジョン(アレック・ボールドウィン)は「僕の人生を通じて、最も美しく、最も聡明な女性に」と愛のこもった乾杯の挨拶をしてくれた。
 
長女のアナ(ケイト・ボスワース)とアナの夫チャーリー(シェーン・マクレー)、医学院生の長男・トム(ハンター・パリッシュ)も母アリスを祝うために駆けつけた。
 
ロサンゼルスで女優を目指している次女のリディア(クリスティン・シュチュワート)だけは、「オーディションがあるから」と顔を見せなかった。
アリスは、次女リディアのことだけが気がかりだった。
 
 
そんなある日、アリスに突然の異変が襲いかかる。
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に招かれた講演中に、ある言葉が思い出せずに「言葉の集まり」といった表現を使った。あとから「あれは”語彙(ごい)”だった」と悔やむ。
 
異変はそれだけでは終わらなかった。
今度はランニング中に見知ったはずのキャンパス内で、自分が今どこにいるのか迷ってしまうのだった。

アリスは神経科を訪ね、脳の検査を受けた。
脳血管に異常はないが、簡単な記憶力テストなどを行ったところ、症状がアルツハイマー病と合致するため再検査を受けることになった。
 
 
不安で眠れないアリスは、真夜中に夫・ジョンを起こし、「人生を捧げてきたものが何もかも消える」と泣きながら打ち明けるのだった。「何があっても僕がついてる」とジョンはアリスを励ますが、アリスの中から恐怖が消えることはなかった。
 
ジョンと一緒に病院を訪れたアリスは、若年性アルツハイマーと宣告された。しかもそれは遺伝性のもので、子供たちにも遺伝すると言われ言葉を失うアリス。
 
 
翌日、アリスは家族に告白し、子供たちは唖然とする。
数日後の検査で、アナは陽性、トムは陰性であるということが分かった。
リディアは検査を拒否した。
 
アナは人工授精を控えているが「検査もできるし、赤ちゃんは大丈夫」と気丈に振る舞って入るが、その声は震えていた。現代の医学では治すことはおろか、進行を防ぐことも出来ない。
 
アリスが講義を行ったところ、学生からは授業への不満が殺到し、遂にアリスは大学を辞めざるを得なくなる。夫との約束もすぐに忘れてしまう。アリスは「癌だったら良かった。恥ずかしくないから」と嘆くのだった。
 
夏、長い休暇を過ごすために海の避暑地を訪れたアリス。こっちに来てから、アリスの体調は安定していた。「私が私でいられる最後の夏よ」とアリスはジョンにそう告げる。しかし、ジョンは未だに現実と向き合えずにいた。
 
今のアリスの目標は、双子の妊娠を叶えたアナの出産、トムの卒業、リディアの安定した将来を見届けることだった。
 
だが、アリスが全ての記憶をなくす日は一刻一刻と近づいてくる。何気なく操作していたパソコンにアリスはある映像を見つける。

「アリス、私はあなたよ。大事な話があるの。」 そう切りだされたメッセージ。かつての自分から今の自分へ。それはアリスが”アリスのままで”いるために残したものだった―。
 
・・・
アルツハイマーというのは、認知症の約50%を占める症状と言われ、アルツハイマー認知症は、もしかしたら認知症ではないかと気付かれる症状で、物忘れのこと。
 
誰でも忘れる事はあるが、普通は、忘れている事を指摘されると「そうだ、忘れていた」と思い出すもの。ところが、アルツハイマー型は、思い出す事が出来ないのだという。
 
例えば、会う約束をしていたとしても、約束自体を忘れてしまい、そんな約束をした覚えがないとなってしまうところが、一般的な物忘れと違うところのようだ。
 
アルツハイマーは一般的には高齢者に見られる症状だが、まれに若年(この映画の場合は50歳の若さ)で発症するケースがあるという。しかも、ほぼ遺伝するというから、深刻だ。
 
認知症の患者に向けて、アリスが自身の体験と家族の思い出などを講演で語るところが、この映画のハイライトだった。
 
原稿用紙に、黄色のマーカーでなぞって話を続けていくが、誤って原稿用紙をパラパラと落としてしまう。聴衆は、はっと驚くが、アリスは、「(原稿を)落としたことも忘れたい」とジョークで、会場を和ませる。
 
シリアスな映画で、娯楽的要素はないが、誰でも少なからず直面するテーマで、考えさせる映画ではあった。高齢になるほど、認知症やボケ、認知症予備軍とも言うべき人は多くなり、他人事ではない問題である。本人と周りの人たちが、どのように向き合っていくか考えるべきヒントをこの映画は与えていたようだ。
 
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