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映画「TAR/ター」(原題: Tár、2022)は真骨頂の女優ケイト・ブランシェットを見る映画。

 

TAR/ター」(原題: Tár、2022)を見る。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団における女性初の首席指揮者、リディア・ターをケイト・ブランシェットが演じる怪作(快作でなく)。

ケイト・ブランシェットゴールデングローブ(GG)賞主演女優賞を受賞アカデミー賞主演女優賞など6部門でノミネート)ということで大いに期待してみたが、ケイト・ブランシェットの一人舞台を見ているような印象を受けた。


確かにケイトの演技はラストの狂気まで“迫真”を超えるほどリアルでリディアに乗りうつっているが、ストーリー全体としては、やや凡庸で、盛り上がりに欠けたのが残念。

とはいえ、ブランシェットという女優は、出る映画ごとに別の顔を見せる、メリル・ストリープと並ぶ当代随一の大女優の風格がある。


女性指揮者リディアの言葉の字幕が「…なんだ」など男言葉で、最初のうちは違和感があったが、自身がコンサート中に「バッハは嫌いだ。私はレズビアンだが…」と普通の会話の中で語っていた。娘からは「パパ」と言われていた。(劇中、バッハには20人の子供がいたという会話があった。注:半分の10人は夭逝(ようせい):若くして亡くなる。)

監督と脚本は、これまで手掛けた長編映画イン・ザ・ベッドルーム」と「リトル・チルドレン」が、2作ともにアカデミー賞脚色賞にノミネートされたトッド・フィールド。

フィールド監督にとっては16年ぶりとなる全世界熱望の最新作で、その鋭敏な表現力で「天才指揮者リディア・ターの物語は、ケイトが断っていたら、この映画は日の目を見ることはなかった。あらゆる意味で、ケイトの映画だ」とまで言わしめた作品という。

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リディア・ター(ケイト・ブランシェット)はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団における女性初の首席指揮者であり、作曲家としても指揮者としても当代随一だと評価されていた。

しかし、リディアはその地位によって得た権力を使い、若い女性音楽家に肉体関係を迫るなどのハラスメントを行っていた。

リディアの妻、シャロンニーナ・ホス)をはじめ周囲の人物は見て見ぬふりをしていたが、被害者の1人が自殺したことをきっかけに、リディアの蛮行を告発しようという動きが出てきた。

キャリアの危機を前にして、リディアは徐々に精神の平衡を失い始める。

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世界屈指のオーケストラ初の女性首席指揮者という肩書を持ち、世界中を飛び回るリディア・ター。冒頭はリディアがインタビューを受けるシーンから始まる。インタビュアーはリディアの輝かしい経歴や栄光の数々を称賛、ターはプロとしてそれに応えていく。

そこでリディアについて語られるのは、まさに“カリスマ”であり、世界がその才能を認めるアーティストという印象を我々観客に植え付けていくものだった。

しかし、物語が進んでいくうちに、その皮は徐々に剥がされていく。行動と言動の節々で「ター」がどのような人物であるかを暴いていくのだ。

仕立てる衣装は男性物のシルエットであり、“エストロ”という男性名詞で呼ばれることに対しても抵抗がない。養女のペトラをいじめた子供に話しかけ、自分はペトラの“父親”であり「ペトラを虐めればただではおかない」と脅す。

また、講義中に1人の学生と意見が食い違い、クラス全員の前で見事に論破するシーンでは、周りの学生が引いてしまうほどの自論を捲し立てる。

この段階から、ある人の目には“カリスマ”に映り、ある人によっては“エゴイスト”の烙印を捺されていく。

男性社会のクラシック界でトップにのし上がってきた努力や強靭な精神、音楽への愛と造詣の深さばかりに注目されていたターだったが、自分というものに絶対的な自信を持つターはどこか名誉男性的な振る舞いをし、エゴイスティックで冷徹な顔を徐々に表していく。

 

ケイト・ブランシェットを見る映画としては、大いに価値があった。

【キャスト】
リディア・ター:ケイト・ブランシェット
フランチェスカ・レンティーニ:ノエミ・メルラン
シャロン・グッドナウ:ニーナ・ホス
オルガ・メトキーナ:ゾフィー・カウアー
アンドリス・デイヴィス:ジュリアン・グローヴァー
セバスティアン・ブリックス:アラン・コーデュナー
エリオット・カプラン:マーク・ストロング
クリスタ・テイラー:シルヴィア・フローテ
本人:アダム・ゴプニク
ペトラ:ミラ・ボゴイェヴィッチ
マックス:ツェトファン・スミス=グナイスト

 

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