「誰でもない女」(原題:(独)ZWEI LEBEN/(英)TWO LIVES、2012)という映画を見た。風変わりなタイトルで、サスペンスの分類だったので見たが、ドイツとノルウエイの関係、戦後の東西ドイツの分裂が残した負の遺産として、そんなこともあったのかという史実を初めて知った。見てみようかなと迷う人がいたとしたら、次の一言で、見る見ると傾くかも知れない。
”終盤で驚愕の事実が明らかに!”
評価を見ると、満点という評価もあるが、全体的に重苦しい雰囲気があり悲劇を扱っているので、好みは分かれるかも知れない。主人公の母親役に、イングマル・ベルイマンの作品で有名なリブ・ウルマンも出演している。
映画の原題はTWO LIVES=「ふたつの人生」。
邦題は、ワースト(最悪)ランキングの上位に来るかも知れない。
「二つの人生」でいいのでは。
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映画は、現在の時制と過去の時制が入り交じった構成になっていて、過去の場面が何度も挿入され、やや混乱するが、やがてそのシーンが何を意味するかだんだんわかってくる。映画ではよくあるパターンだ。
第二次大戦中、ドイツ兵とノルウェー人女性の間に生まれたカトリーネは、出生後、旧東ドイツの施設で育った。母に会いたく舟でデンマーク経由で亡命し、ノルウェーにいる母に会おうとしたが、そこには母と一緒に暮らす、カトリーネがいた!
カトリーネとして暮らしていたこの映画の主人公は旧東ドイツのスパイであり、ノルウェーで、カトリーネになりすまし、カトリーネの母と、夫、娘と暮らしていたのだった。偽カトリーネ(本名はヴェラ)だけは、本物のカトリーネが訪ねてくることを事前に知っていたので、母親は、旅行に行かせて本物に会わせないようにしていた。
ノルウェイ人の夫は、やがて妻の素性と過去を知る・・・。
東ドイツの秘密警察は、当然本物のカトリーネが現れたら困るので、本物のカトリーネを抹殺してしまう。(しかし、驚愕の事実というのは、残されていた!書けないが。)
それから何年か経った後、ベルリンの壁が崩壊。
カトリーネと母の元に弁護士が訪れ、ドイツ兵の子を出産した件について二人の証言がほしいというのだ。国を相手に賠償責任を取ってもらおうというものだった。
女スパイの主人公は、実際のカトリーネに関する情報を徹底的に覚え、体に染み込ませていたのだが、ついには証言台に立つことになる。証言シーンなどは、ハラハラさせられる。傍聴席には、返答に窮しているカトリーネを複雑な表情で見守るカトリーネの母の姿もあった。
しかし、女スパイは、キューバには行かず、夫や娘とカトリーネの母親に自分の素性を全てを話してしまったのだ。スパイの仕事任務よりも、家族の愛を取ったのだった。女スパイ自身が、子供の頃から家族というものを知らなかったからだった。
以上は一部ネタバレありの簡単なストーリーだが、ラストがどうなったかは、見てのお楽しみということに。
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第二次大戦中に存在したというナチスドイツの人口増加計画「生命の泉」というのがあったのだという。これは、ドイツの兵士とノルウェイ人女性の間に子供を産ませて、子供だけドイツが引き取るというもの。母親を知らずにドイツの施設で育てられる子供たち。状況は違うが日本の戦前の兵隊を増やすための”産めよ増やせよ”という国民的スローガンがあったことも想起させる。
主演のドイツ人女優・ユリアーネ・ケーラーという人は初めて見たが、ドイツ映画「ヒトラー〜最期の12日間〜」では、アドルフ・ヒトラーの愛人(後に妻)であるエファ・ブラウンを演じて話題になったという。ドイツのテレビドラマでは知られているようだ。
それでは、予告編を。ここでは「ふたつの人生」となっているが・・・。
映画は、歴史に埋もれた事実、史実を伝えるという意味でも、面白い。
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