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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「鑑定士と顔のない依頼人」(2013)

 
ニュー・シネマ・パラダイス」の名匠ジュゼッペ・トルナトーレのイタリアのミステリー映画「鑑定士と顔の見えない依頼人」(原題:The Best Offer、2013)を見た。
 
人嫌いで女性と縁のない63歳の美術品鑑定士が、姿を見せない若い依頼人の27歳の女性に心惹(ひ)かれていくが、タイトルから想像すると、一見オークションや美術品を背景にした甘美で絢爛な物語のようだが、実際には、予測不可能な裏の顔を持った衝撃作品だった。
 
日本映画でも最近「万能鑑定士Q モナ・リザの瞳」という映画で、驚異的な鑑定眼と記憶力を持つ天才鑑定士の話があったように、”鑑定士”をテーマにした映画が公開されている。
 
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鑑定士であり、自らがオークショニア(競売人)を務める競売で、狙いを定めた美術品の真価を公表しないで価格を操作し、落札者を装った画家崩れの友人ビリー(ドナルド・サザーランド)とタッグを組んでは、それらを安値で落札して秘蔵コレクションを増やすヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)。その巧みな采配で値段を操るヴァージルと、あうんの呼吸で落札するビリーは名コンビに映る。

 
そんな中、半ば強引に電話で面会を求めてくる女性がいた。
その依頼人クレア・イベットソン(シルヴィア・ホークス)の屋敷に出向くと、本人は、なにかと理由をつけてか顔を出さない。顔を見せたくない理由でもあるのだろうか。
 
ヴァージルは、偶然屋敷の地下で変わった金属部品を見つけ、それを持ち帰って修理店主ロバート(ジム・スタージェス)に調査をさせることにした。
 
 
         ヴァージル(ジェフリー・ラッシュ)とロバート。
 
すると、それが希少な18世紀の機械人形のものであることが判明する。
屋敷で部品を集めるうちに、屋敷から出たふりをしてクレアを遠くから覗き見する。若くて美しいクレアだった。
 
ますますクレアへの恋心が沸きあがり、恋多きロバートの歯に衣着せぬ恋愛指南を受けながらの機械人形の修復と、重なるように、クレアへの関心度合いも高まっていく。しかし、クレアは姿を見せない割には、気性の激しさを表すような言動でヴァージルを振り回す。時にヒステリックな声を上げたかと思うと、次には、謝罪したりする。
 
 
映画の冒頭は、ヴァージル(J・ラッシュ)が、髪の毛を黒く染めて、ビシッとした着こなしでオークションを取り仕切るシーンで始まる。オークションでのヴァージルの価格の読み上げ方、進め方は唸るほどうまい。
 
その後、クレアが屋敷でヴァージルを見たときに「髪の毛を染めている人は嫌い」と一言漏らしたので、ヴァージルは染めた髪を洗い流し、白髪に戻すのである。そんなところにも初老でありながらも、若い女に気に入られようという意識が垣間見える。
 
クレアが「広場恐怖症」を患っていることを知り、何かと面倒を見るうちに、ヴァージルにとってクレアの存在がますます大きくなっていくのだが・・・。
 
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こう書くと、初老の男と若い女のラブストーリーの行方は・・・ということになるが、様々に散りばめられた伏線があって、それらが最後の土壇場で明らかにされていき予想もしなかった結末を迎える。
 
あの時、なんとなく、あそこにいた人物が、何か独り言のようにつぶやいていたのはそういうことだったのか、ラストシーンは、どこかおかしいぞと感じるのは、ああいうことだったかと、さまざまな謎が解けていく。
          
英国王のスピーチ」でアカデミー賞助演男優賞を獲得したジェフリー・ラッシュが、この映画でも重厚な演技を見せる。
 
原題は、英語では「The Best Offer」で、「最高値の入札(競売での落札値)」の意味。映画の中で、この言葉が登場するのは、主人公のヴァージルが、知り合いの既婚者に「結婚30年はどうか?」と聞くところ。返事は「オークションと似ています。ベスト・オファー(最高の入札)だったのかどうか」。
 
氷の微笑」のシャロン・スローンの有名なシーンを彷彿とさせるようなシーンもある。それはともかく、あまり期待していなかった映画だったが、グイグイと引き込まれて、最後にどんでん返しがあり、見て損のない映画だった。「どんでん返しがある」ということがネタバレになりそうだが・・・。
 
映画チラシのキャッチコピーを見ると、「衝撃のラストを知ると、構図が一転する」とあるので、まあいいか(笑)。
 
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